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メディアグランプリ

主婦がこっそり「エンタメ」の欲望を満たす場所


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西元英恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あんた、もう来とったとぉ~」
酒焼けしているかのような低くかすれた声でおばちゃんがパートの同僚に声を掛ける。
ここは平日朝9時のスーパーマーケット。
客がすぐそこにいるにも関わらず、そんなことはお構いなしにパートのおばちゃんたちの話に花が咲く。2、3人で野菜や果物の品出しを行っているようだ。
 
例え半分部屋着のようなラフな格好でも行ける気安さと、24時間営業であるがゆえのいつでもふらっと立ち寄らせてくれる敷居の低さがこのスーパーにはある。
しかし、それらをもってしても私はあの本命のスーパーが恋しくなるのだった。
 
本命は朝10時オープン。
子供たちを朝、幼稚園に送った足でそのままスーパーに行こうと思うと本命がまだ開いていない為24時間営業の気安いスーパーに行ったのだ。
 
私が勝手に「本命」としているスーパーはある場所に似ている。
多くの人が魅了されるあのアミューズメントパーク「ディズニーランド」だ。
 
まず、ディズニーランドよろしく見た目の楽しさを入店1歩目から味わわせてくれる。
商品の入れ物やポップがいちいち綺麗で可愛らしく、つい目を奪われる。元々品揃えも豊富なのだが、一見何の変哲もないプチトマトがきらきらのダイヤモンドのようなカットのカップに入れられており、「え? これ、なんか特別なプチトマトなの?」とつい足を止めてしまう。
 
先日は野菜売り場でズッキーニやパプリカといった色鮮やかな野菜と一緒に「八百屋さんが作ったおいしいバーニャカウダソース」なるものがお洒落な瓶で販売されており、思わず買ってしまった。ポップの写真の中で野菜にデイップしているソースの様子が美味しそうで食欲をそそったのだ。
 
また、ある時は子連れで訪問しているときに長男が急に大きな声で「ねえ見て! なんかお祭りやってるんだって!」と言った。顔を上げると鮮魚売り場の床・壁・食品が入ったケース……とそこら中一帯に真っ赤な大きな紙に黒の筆書きで力強く「鰻まつり!」「鰻まつり!」「鰻まつり!」とあった。素通りはさせないぞ、とばかりの圧におののきそうになる。法被を着た若い衆が神輿を担いで飛び出してきそうな勢いだ。ちょうど土用丑の日が近づいている時だった。
 
他にも、インテリアにも使えそうな洒落た木箱に入った果物、お菓子売り場に置いてある子供専用のカラフルで小さなレジかご、肉売り場に突然現れる大きな牛のオブジェ、天井には水しぶきをあげるクジラ……と子供も大人も飽きさせない工夫が満載なのだ。
 
更にはもう一つディズニーランドと似ていると思うところがある。
「本命」で働く従業員たちが決して裏舞台を見せないことだ。
ディズニーランドの清掃員がその掃除の様子さえもエンターテインメントにしてしまうように。
いや、そこまで言うとちょっと言い過ぎかもしれないが、まず私語をしているのは見たことがない。言葉使いも非常に丁寧でもてなしの気持ちを感じる。従業員たちは白と黒のギンガムチェックの可愛いシャツをキリっと着こなし、少なくなった商品の補充をテキパキと行い、すれ違う客に「いらっしゃいませ!」と笑顔で一礼して素早く去っていくのだ。
 
ある時、本命のスーパーで教育の現場を目の当たりにしたことがある。その時は野菜売り場で新人と思われる50代くらいの女性に、社員と思われる制服姿の男性が指示を出していた。あまり見る機会の無い教育の現場をついこっそり観察してしまった。
「いいえ、この場合はですね、この方法でお願いします。その方がお客様が見やすいですので」
どうやら女性が何か間違って覚えてしまっていたようだが、男性社員は懇切丁寧に敬語の姿勢を崩さず説明をしていて好感が持てた。
 
感じの良いスーパーには感じの良い客が集まるのか、子連れの私は心温まる体験をしたことがある。まだ1歳にもならない次男を抱っこして連れて行ったときだ。抱っこ紐を使用しての買い物は重く、前が見えづらいという不便さがある。その時も必要なものを買ってさっさと帰ろうという気持ちだった。すると、
「あらぁ、あなたお母さんのお手伝いしているの? おりこうさんねぇ」
上品な感じのご婦人が、ニコニコと微笑みながら子供に向かってそう言った。
(ただ、抱っこされているだけなのに! ?)
一瞬面くらったが、その優しく可愛らしい言葉のチョイスに思わずこちらも頬が緩んだ。
本命のスーパーではとかくこういった場面に多く出くわす。
仲の良さそうな老人のご夫婦がワインとチーズを吟味していたり、ご当地お菓子コーナーで親子が真剣に選んでいたり……穏やかで楽しそうな時間が流れているのだ。
 
加えて本命はキャンペーン類が多く、買い物で使えるポイントが当たるだの、普段食べられない高級食材が当たるだのとしょっちゅうやっていて還元が大好きな主婦の気持ちを鷲掴みにしてくる。しかも売り場がなんだか楽しいのだから、ついつい長居してしまうし買う予定の無かったものまで買ってしまう。困ったものだ。
 
実はこのスーパー、過去に「カンブリア宮殿」や「がっちりマンデー」といったビジネス番組で取り上げられたこともある有名なスーパー『ハローデイ』だ。業界内でもその取り組みが話題となり、日本一視察の多いスーパーとしても知られているのだそうだ。
 
それらの番組内で一番心に残ったのは、お店を盛り上げる取り組みは上司の命令に従って行うのではなく社員やパートといった従業員が出したアイデアを実践しているという所だった。もしかしたら、あのプチトマトのカップもバーニャカウダソースも鰻祭りも可愛いレジかごも……そうかもしれない。
社長は教育の理念を「不得意は誰にでもある。自分の長所を120、130、いや200%にしよう。そしたら君の短所は人間味に変わるから」と言って社員を伸ばしているそうだ。
出演した従業員たちは「この仕事が誇りだ」と言って活き活きと働いていた。
 
これって育児にも同じような事が言える、とハッとした。つい「そんなことしたらダメ」「早くしなさい」とマイナスに目を向ける毎日。誰だって長所を褒められたら嬉しくてやる気がでる。思わずメモしてしまう私。まさかスーパーに育児の極意まで教わるとは……。
 
主婦にとって生鮮食品・日用品の買い物は義務のようなものであり、子連れで行った日には方方に散らばる子供を捕まえながら最後は重い荷物をひいひい言って持ち帰る苦行でもある。しかしながらこのアミューズメント然としたスーパーはそのひととき、見る楽しさ、選ぶ楽しさなどワクワクを提供してくれる。忙しい毎日に束の間のエンターテインメントを感じさせてくれるスーパーは主婦にとってのオアシスだ。
これからも買い物以上の何かを求めて足繁く通うことになりそうだ。
 
 
 
 
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2021-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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