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LINEの返信、その前に

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西元英恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「お母さんを独占できる日があると、落ち着いたりするのかな?」
友人からのメッセージを読みながら私は心のなかでこう叫んでいた。
(わかってる……わかってる……そんなこと言われなくてもわかってるー!)
 
私はもう何も受け付けなくなっていた。理由は明らかだ。育児によるストレスフルな毎日にほとほと嫌気が差していたのだ。だから日頃仲の良い友人のアドバイスに素直に耳を傾ける余裕がなくなっていた。心の扉はがっちり閉まり、鍵がかかった。
 
事の始まりは、息子の問題行動だった。年長クラスになり余計に横のつながりを楽しむようになった長男。それはいいのだが、たまに盛り上がりすぎて周りが見えなくなる。今回も教室内であまりに大きな声ではしゃぐ彼に不快な思いをしているお友達がいるということだった。
11月恒例の個人面談で先生とお話しをさせてもらった時、それが明らかになった。先生が言っていることは容易に想像ができた。
(あのやろう……一回〆ようかな……)
私は面談が行われているテーブルの下でつい拳を握りしめる。心のヤカンはもう煮えたぎっていて今にも吹きこぼれそうだった。
 
というのも、家でも全く同じことが何度もあったからだ。
「○○―! ごはんよー」
「○○―! お風呂に入るよー」
「○○―! 歯磨きするよー」
遊びに夢中になっていて大声で弟とはしゃいでいるとき、彼の耳にその呼び掛けは全然届いていない。
「呼ばれたら、まず、返事をしなさい! !」このセリフを一体何度言っただろうか。
 
帰宅後、改めて息子へ話をする。お友達が嫌な思いをしているよ、楽しすぎると周りが見えなくなるところがあるよ、自分だけが「楽しい」というのはよくないよ……5才には何と言えば一番響くのか、考えながら話す時、大人に話すよりも難しく感じるときがある。そんな時は脳内を超高速で「言い回し」が駆け巡り、血管がパンパンになる。
 
そして「お母さん」の仕事はこれだけじゃ終わらない。相手が誰かも知ってしまった以上、お友達のお母さんに詫びを入れる。それが今回はたまたま幼稚園の外でもよく遊ぶような仲のよいママ友だったのだ。
 
彼女はいつもリーダーシップを取ってくれ、それでいてみんなに配慮が出来る優しい人だ。次男がまだ2才ということもあり、私もいろんな場面で何度助けられたかわからない。今回の件だって「いやいや、うちの息子もいろいろ迷惑かけてると思うし、全然気にしないで!」と笑って許してくれた。その後、話は情緒が安定しにくい長男の話へ。するとママ友からは冒頭のようなアドバイスをもらったのだ。
 
ここで一気に私の感情がジェットコースター並みに乱高下し始めた。
(そうだよね。それは私も理解している。だからこそ、最近は長男と二人きりの時間を取ったりしてるんだ。でも、でも……それだけじゃ上手くいかないんだよーーーーーーー! ! !)
 
まだまだ手がかかる5才の長男とイヤイヤ期の2才の次男を毎日相手して、心が疲弊していたのがよくなかった。普段だったら「そうだよね」で返せるはずなのに、今日の私にはそれができない。だから、今、思いつくままにメッセージを送るのは危険と判断した。私はスマホをパタンと閉じた。
 
その夜はなかなか眠れなかった。日頃の長男の態度と、ママ友のアドバイス、幼稚園で注意を受けてしまったこと……考え出すと(私の育て方が悪いのか……もう、どうしたらいいかわからない)
私の思いは袋小路に迷い込んでしまった。
 
翌朝はもちろん最悪の寝起きだった。ぐっすり眠れていないし、まだママ友には返事もしていない。頭の中はモヤモヤするままだし、何にも解決していないのだ。子供たちを幼稚園に送り出したあと、しばらくボーっとしていたがこれじゃダメだ! 何かいったん無になれるものを探そう! と私は最近サボっていたヨガの予約を入れた。
 
ヨガに行くのが久しぶり過ぎて講師に「どうされてたんですかー! ?」と声を掛けられる。レッスン中、最初は悩み事で頭が全然切り替わらなかったが、汗をかき始めたと同時に少しずつ自分の体へと意識が向かっていった。レッスンが終わるころには身も心もスッキリしていた。
 
このままじゃ、まだ帰れない。私はヨガスタジオを出た足ですぐ近くのカラオケを予約。30分集中コースだ。カラオケに入ると、大音量で好きな歌手の歌を歌いまくった。誰も聞いてないけど、私の魂の叫びを聞けー! 心は大解放だった。平日の昼間に1人でカラオケにいることのうっすらとした背徳感がストレス解消にはもってこいだった。
 
ヨガとカラオケで思い切り汗をかいた私は、軽い足取りで帰宅した。
そして、既読のままにしていたスマホのメッセージをもう一度読む。
(うん! 全然悪く書かれてないじゃん! むしろ一緒に解決しようとしてくれてるじゃん!)
こうして返信にあえて時間を置く作戦&ストレス発散して自分の機嫌を取る作戦は成功した。
その後、いま子育てで悩んでいることや二人きりの時間を取ってみていることなどを素直に伝えた。そうするとママ友からもすぐに返事がきて共感してもらえた。
 
心がどす黒い時に相手にメッセージを送らなくて、本当に良かった。
この日、次男の幼児を済ませる際、ママ友は長男を公園に一緒に連れ出してくれた。なんてことないよ、と涼しい顔で。私は「ありがとう」と甘えた。
 
結局はメッセージを受け取る自分の状態次第なんだと気づかされた一件だった。それにしてもヨガとカラオケの大解放セット、よかったなぁ。今後も心がどす黒くなったら私にはこの最強な大解放セットがついているぜ!
 
 
 
 
***
 
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2021-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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