なにわ男子の沼に片足つっこんだら
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記事：川端彩香（ライティング・ゼミ10月コース）
最近、私はなにわ男子にお熱だ。
なにわ男子は11月にデビューした、ジャニーズのアイドルグループである。私はそのメンバーの大橋くんの笑顔に一目惚れしたのだ。彼の笑顔のなんと可愛いこと！ 大橋くんだけでなく、全員可愛い。
「こんな弟がほしい……！」と常々思っている。妹が二人いる私の、ないものねだりだ。
大橋くんの笑顔にノックアウトされ、グループ全体のキラキラ具合に魅了された。大橋くんはまだまだ武器を隠し持っていた。ハスキーな声からは想像できない歌唱力。歌がめちゃくちゃ上手い。面白くない自己紹介ギャグを全力でする。もう、すべてが可愛い。可愛い！！！
29歳冬、なにわ男子の沼に片足つっこんでしまった。
11月下旬、なにわ男子とファストファッションブランドのGUがコラボ商品を販売するという情報がTwitterで流れた。なんと、メンバーカラーのパーカーが販売されるとのこと。大橋くんのメンバーカラーは、緑。
緑、欲しい！！！
しかしここで問題が発生する。販売開始が金曜日だったのだ。社会人の私はもちろん勤務時間中である。こっそり抜け出してバレない時間で会社に戻って来られる距離に、GUはない。勤務時間中に私用でスマホをじっくり触ることもできない。
その週末、私は実家に帰る予定だった。実家は程よく田舎で、GUもある。
「実家帰ったときでいっか。田舎やし、ジャニオタが並ぶこともないやろ」
そう思い、金曜に有給を取ることもなく誰かにパシリを頼むこともなく、しっかり働いて金曜を終えた。
土曜日の午前から帰省し、日曜に祖母の家に私の母、妹たち、叔母、従妹が集まっていた。私がなにわ男子にハマっていることを話すと、みんなでどのメンバーが好みかの討論会が始まった。私は大橋君を推しに推しまくった。
討論会が落ち着いたところで「GUでコラボ商品が出とってさー、販売が金曜からやってんけど、今からGUに買いに行きたいなー。誰か一緒に行く？」と言った私に向かって全員が声を揃えて言った。
「いや、あるわけないやろ」
実際、初日に全商品が完売してしまったようだ。「ジャニーズなめんなよ」と、ジャニオタでもなんでもない妹に怒られた。私はジャニオタの熱をなめていたようだ。
「てか、言うてくれたら買いに行ったのに」
妹が続けて言った。それに続き叔母も「ほんまや、GU近いから行ったったのに」と言う。母まで同じことを言うではないか。「言うてくれたらよかったのに」と。
別にジャニーズにハマってしまったのが恥ずかしいわけではない。中学生の頃は、男性アイドルや俳優が好きだと公言することに恥ずかしさを感じ、抵抗があった。しかし今はもういい大人だ。好きなものは好きだと素直に言える。
じゃあなんで言わなかったのか？ 特に言う必要がないと思ったからだ。私がなにわ男子にハマっていることも、コラボ商品が欲しいことも、彼女たちにわざわざ連絡して伝えることではないと思っていた。
「あー、そっか。頼んだらよかったんかー」とボソッと言った私に、「もっと人に頼ったらいいのに」と言ったのは、これまた妹だ。
私はどうやら、人に頼るのが苦手らしい。仕事でも「人に任せるより自分でやった方が早いから」というよりは、「これは頼んでもいいことなのか？ 頼みたいけど忙しそうやし、自分で出来んこともないし、自分でやってしまお」と思い、だいたい人に頼むことは少ない。頼んでいいラインと、それは自分でなんとかしろよと思われるラインが、それなりに生きているのに、未だによくわかっていない。
そういえば元彼にも「もっと頼ってくれていいんやで」とか「甘えてよ」とか言われたっけなぁ。言われたけど、どう頼っていいか、どう甘えていいかがわからなくて、わからないまま別れを迎えていた。
そして職場の先輩にも「もっと頼りなさい」と言われたなぁ、と思い出す。頼っているつもりだけれど、他人から見ると、私は頼らなさすぎるみたいだ。
他人を信じていないわけではない。これは人に頼んでもいいことなのか？ 相談してもいいものなのか？ 迷惑に思われないかな？ 自分だけでなんとかできないのか？ 頭の中でぐるぐると考えてしまう癖が私にはある。でも、必要以上に考えすぎているのかもしれないと、妹の言葉で思わされた。
確かに私も、友人や同僚が悩みを打ち明けてくれたとき、「もっと早く言ってくれたらよかったのに」思うことがあるし、言ってしまうこともある。そして同時に、寂しさを感じるのだ。なんで相談してくれなかったんだろう？ 私じゃ頼りなかった？ 言いにくい雰囲気醸し出してた？ と。
他の人と自分が違うと、なぜ今まで思っていたのだろう。きっと、妹も、母も、叔母も、従妹も、なんで頼ってくれなかったの？ と少し寂しく感じてしまったのだと思う。元彼も、職場の先輩も一緒だ。それ故の「言ってくれたら……」や「もっと頼ってよ」だったのだろうと、今さらながら思うのだ。
私は人に頼るのが苦手だ。
だけど、もう少し、人に頼ることを覚えた方が良さそうだ。次、なにわ男子のグッズが出たときは、親族と友人総出で応戦を頼むことにしよう。
緑色のパーカーは、何枚集まるだろうか。
その頃には、両足どころか、肩くらいまでどっぷりと沼にハマってしまっているかもしれない。
＊＊＊
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