くせ毛は私の最強のチャームポイント
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:油井貴代子(ライティング・ゼミ2月コース)
私は自分の髪が大嫌いだ。
死ぬまでに一度でもいいからコマーシャルでやってるようなポーズをしてみたい。ロングヘアーをキラキラキラーンとキューティクルを光らせながら手でなびかせいる、あのポーズだ。
私の髪は真逆のくせ毛。いわゆる天パーってやつだ。
「パーマ代がかからなくて、経済的でうらやましい」
「クルクルしていてかわいいやん」
「私なんて、パーマあててもすぐにストレートに戻るんだから。絶対くせ毛がいいに決まってる!」
いつもそう言われてきた。
「人の気も知らないで好き勝手言わないでよ!」
雨の日の憂鬱さなんて絶対分かりっこない。髪は大きく膨れ上がり、まるでアフロヘアーのボンバーマンだ。一本一本の毛が縮れて、自己主張の激しさったらこの上ない。この時ばかりはいっそのこと坊主頭になろうか、なんて真剣に考えてしまう。
小学生の頃、マッシュルームカットが流行っていた。ビートルズの髪型である。
そして、母は美容院に私を連れていくたびに、この髪型を注文していた。
私はこの髪型が大嫌いだった。
卵のような顔にキノコが被さっていて、同じ髪型をしている友達の二倍か三倍くらい膨らんでいるのだ。鏡を見るたびにため息ばかりついていた。
高学年になってようやくこの髪型から解放されたが、結局どの髪型にしても髪が膨れ上がることにようやく気が付いた。
高校生になり、私は県内でも特に生活指導の厳しいことで有名な学校に通っていた。体罰も当たり前という、今では考えられないような学校だった。生活指導の先生に廊下で捕まり、髪を引っ張られたことが何度もある。
「なんだこの髪は! 水で濡らしてこい! パーマかどうか確認してやる!」
学校の規則にはこう書いてあった。
・パーマ禁止
・くせ毛の場合は、親から証明書を提出すること
もちろん私も親に書いてもらい、学校に提出していた。私のくせ毛の遺伝子の元凶である父は、娘が先生に怒られてはかわいそうだと、携帯用にくせ毛証明カードまで作ってくれていたのだ。それにもかかわらず、私はいつも疑われていた。
それなら校則を破ってやる!
私はアルバイトで貯めたお金で、禁止されていたパーマをあてた。パーマといっても普通のパーマではなく、念願のストレートパーマである。当時のストレートパーマは下敷きのようなプラスチックの板に髪を少しずつ乗せ、薬剤を湿布していく方法だった。鏡に映る下敷きだらけの髪を見ながら「どうかまっすぐになりますように」と心の中で祈った。シャンプーとドライヤーが終わり、鏡に映る私の姿は……今までの私とさほど変わりはしなかった。強いて言えば、ほんの少しふくらみが減ったかな?という程度のものだった。
それでも生活指導の鬼教師の前を通るときに、パーマをかけたことがばれるんじゃないかとひやひやしながら歩いたが、全く気付かれることはなかった。
そして一週間もたたないうちに、私の髪は元通りのうねりが出て、また廊下で怒られる日々が始まった。校則を破ったときは怒られず、守っているにもかかわらず怒られるなんて皮肉なものである。
学生になり、その時流行っていたソバージュヘアーにした。
それまでに何度かストレートパーマに挑戦してみたが、憧れのサラサラヘアーになることは一度もなかった。
では逆にソバージュみたいなパーマをかけたらどうだろう? パーマが上手くくせ毛を隠してくれるかもしれない。そう考えて挑戦してみたが、かえってくせ毛がひどくなっただけだった。もう30年以上前のことなのに、実は今でもパーマの痕跡が残っているのではないか、と思うほどである。
それからはショートにしてみたり、少し長めにしてみたり、いろんな髪型に挑戦して自分に似合うものを求め続けてきた。美容院においてある雑誌を眺め、「この女優さんみたいにお願いします」と注文したこともある。もちろんそれは、一度も成功することはなかった。
失敗を繰り返し、くせ毛に合わない髪型もわかってきた。そして、付き合い方も何となくわかってきた気がする。
どんなにドライヤーで髪をセットして出かけても、一時間もすれば崩れてしまう。それなら髪にかける時間を減らして、もっと楽にしちゃえばいい。私の髪は変幻自在なのだ!
ある時はゆるふわパーマ風。
ある時はソバージュで派手に演出。
髪の長さによっても雰囲気はかなり変わってくる。
からっと晴れた日はカールがゆるくなる。雨の日は髪が大きく膨らみ、クルクルヘアーに変身する。
私自身が、それを楽しむことができるようになってきた。
そして今日、この記事を書こうと考えた時にやっと気が付いたのだ。
私のくせ毛は、私にとって最強のチャームポイントであることを。
今まで本当に大嫌いで、嫌な思い出しかなかったこの髪だけど、チャームポイントととらえるとなんだか楽しくなってきた。この考え方にたどり着くまでに、半世紀も掛かってしまった。
私の髪よ、今までごめんね。これからも自由奔放、変幻自在に私を素敵に飾ってね。そして私自身がくせ毛をもっともっと楽しめるようになれたら良いなと思う。
***
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