メディアグランプリ

手に入らないと分かると、余計に欲しくなる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久田 一彰(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「本日は売り切れました。来月の25日に入荷致します」
 
なんてことだ! せっかく朝から楽しみにしていたのに、売り切れてしまっている。
 
仕事を定時で終わらせ、17:30に足早に駅のその店に行ったのに。
本当なら、福岡の太宰府天満宮にある参道のお店に行かないと手に入らないのだが、小倉駅のそのお店は、冷凍の梅ヶ枝餅を奇跡的に取り扱っていた。
 
しかし、その冷凍庫内に商品はなく、看板だけが私に向かって売り切れのメッセージを送っているのだ。
 
この1ヶ月の楽しみが途絶えた瞬間で、私は大きなため息をついた。
帰りの電車の中で、高校の同級生Iさんの言葉を思い出した。
 
「梅ヶ枝餅によもぎがあるって知っとう?」突然Iさんはそんなことを言ってきた。
 
「梅ヶ枝餅はもちろん知っているよ。太宰府天満宮で売っているやつでしょ? 学問の神様、菅原道真が祀ってあって、受験の時にお参りしたよ。その時食べたし」
 
と言ったものの、あの時食べたのは白い普通の梅ヶ枝餅だった。
緑じゃなかったと記憶している。
 
「よもぎとか、そんなんあると?」と聞き返した。
 
「1ヶ月に一日だけ食べられるみたいよ。 確か毎月25日にしか食べられんみたい」
 
毎月25日にしか食べられない梅ヶ枝餅ってどんな味だろう?
食べてみたくなって検索することにした。
 
パソコンを開いてGoogleの検索窓に「梅ヶ枝餅 よもぎ」と打ち込むと、写真と共にいろいろなよもぎ色の梅ヶ枝餅が出てきた。
 
「なになに、太宰府天満宮参道の梅ヶ枝餅 月に一度しか販売されない限定味とは?
菅原道真が大宰府へ権帥として左遷された時に、安楽寺の門前で老婆が餅を売っていた。その老婆が元気を出して欲しいと道真に餅を供し、その餅が道真の好物になった。後に道真の死後、老婆が餅に梅の枝を添えて墓前に供えたのが始まりとされている。ヨモギ入りの販売開始は2008年。道真公の月命日にあたる25日のみの取り扱い。太宰府梅ヶ枝餅協同組合によると、以前にもヨモギ入りの梅ヶ枝餅をつくっていましたが、ヨモギの調達が難しくなり、それまで20年以上も途絶えていたそうです、か」
 
そして、説明の他には、よもぎの梅ヶ枝餅の写真がズラリと並んでいる。
私の撮ったよもぎ餅を見て! と言わんばかりの写真だ。
 
まるで梅ヶ枝餅のファッションショーではないか。
 
お皿に乗せているもの。
お店の前でロゴと一緒に写っているもの。
割って中のあんこを見せているもの。
 
どれもこれも、私のNO.1をアピールしており、その写真を見れば見るほど、今日買えなかったことが悔やまれる。
 
宝くじの1等で最後の数字が1つずれていたくらい悔しい!
 
しかし、チャンスはまだある。
来月の25日には手に入れようと、リベンジを誓った。
 
そして、1ヶ月後の25日。
待ちに待ったよもぎの梅ヶ枝餅が売り出される日だ。
 
今日こそ手に入れる。
通勤電車に揺られながら、ゲットするまでのシミュレーションをする。
 
階段に一番近いドアに陣取った。
ドアが開いたら、周りに気取られないよう足早で階段を上がればいいのだ。
 
その時は来た!
 
一番に電車を降りて階段へ向かう。
しかし、お店の前に来た時に、ふと不安がよぎる。
 
「待てよ、冷凍だと朝に買っても帰るまでもたないぞ。保存がきかないとダメにしちゃうかも。」
 
そう思ったら今買うのがためらわれた。
 
一応まだあるかだけは確認しておこう。
 
冷凍庫のケース満杯に、よもぎの梅ヶ枝餅がストックされている。
5個入りも10入りもある。
 
よかったまだ沢山ある。
これなら、帰りに寄っても大丈夫そうだな、と思って会社へ出社する。
 
しかし、お昼休みに大変なことを思い出した。
 
今は春休みでスーツケースを持った人たちが駅付近を、ウロウロしていたじゃないか!
 
このままだと夕方まで残っているだろうか?
そう思うと仕事が手につかず、ソワソワしている。
 
何度時計を見ても、まだ15分くらいしか時間が経っていない。
 
ドラゴンボールに出てくる、「精神と時の部屋」に入れられたかの様に、時間の進み方が周りと違う。
 
早く定時になってくれ! と祈るように仕事をする。
おかげで仕事の内容はあんまり覚えていなかった。
 
それでも待ちに待った定時がやってきた。
 
気分は障害物競走に出る選手の様だ。
 
17:30になりパソコンの電源を切る。
「おつかれっした」
と言って会社を出る。
前を歩いている人たちを抜き去る。
エスカレーターを待つ時間も惜しい。
階段をどんどん上がる。
改札をハードルのように飛ぶ。
店の前に滑り込む。
 
「よもぎの梅ヶ枝餅、まだありますか?」と店員に尋ねる。
 
「あ〜、ありますよ。あと2箱ですけど」
「1箱下さい」
と冷静を装ってお金を払う。
 
「やった! ついに幻のよもぎ餅をゲットしたぞ!」
 
興奮する衝動を抑えて、帰りの電車に乗る。
 
家に帰って早速食べる。
 
電子レンジで両面20秒ずつ解凍し、トースターで1分チン!とするとカリッと仕上がる。
熱々のお餅を、お気に入りのお皿に乗せる。
 
よもぎの梅ヶ枝餅とパッケージをスマホで撮って、ゲットしました!とSNSへ報告。
 
満足しながら、念願の一口目。
 
熱々のこしあんをフーフーさましながら、一気に食べる。
とろっとしたあんこと伸びる生地がとても楽しかった。
この1ヶ月待った味にとても満足した。
 
次は来月の25日か。
早く来ないかな、と先月と違う気持ちで次を待つ。
 
ごちそうさまでした!
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事