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自撮り、なにそれ、おいしいの?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:早川実花(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「笑って〜! ほら、もっと笑って〜〜!」
 
写真を撮られる時に撮影者から言われる決まり文句だ。
私自身の、ワタシ的な感覚では満面のスマイルなのに、どうも顔に出ないようなのだ。
 
声を出して笑うことは大好きだ。
笑うと目尻に笑いジワが寄るくらい、カメラがないと顔をくしゃくしゃにして笑うのに、カメラを向けられたらどうもダメ。
いや、本人は笑っているつもりなのだが、人様には笑っていないように見えるらしい。
 
では、なぜ笑っていないように見えるのか。
 
答えは「口角」だった。
口角を上げようとしても、頬に対して真っ直ぐ横が限界。
口角を上げて笑える人がかなり羨ましかった。
私の真顔は少し口角が下がっているくらいなのだ。
 
おまけにカメラを向けられると、この下がり気味の口角がより、上がらない。
緊張してしまい、硬直するので余計に上がらない。
 
そんな私のSNSのアイコンはずっと焼肉の肉と炎だった。
アイコンを自分の写真にするつもりはさらさらなかった。
 
SNSで発信しよう! というきっかけがあり、初めて自分の横顔をアイコンにした。
自撮り、なにそれ、おいしいの? 状態だった私が、初めて自撮りに挑んだ。
まだ真正面から撮る勇気も、真正面をまともに撮れる技術もなかった。
(どこを見ていいのかも分からなかった)
 
その不慣れすぎるアイコンに好意的なコメントをもらったことで、私の自撮り特訓が始まった。
その時の目標は、正面の写真を撮れるようになること。
このミッションをクリアするために、いろんな人の自撮りを研究したり、情報を集めてみたりした。
 
そんな折に、ある方からアドバイスをもらった。
「口を少しだけ開けるといいよ。ほんの少し開けることで口角が上がりやすくなるから!」
すぐさま素直に実践した。
本当だ!!!!!
口角がちょっと上がりやすくなった。
これは……イケる! イケるかもしれない!!
 
これは、練習あるのみかもしれない。
そう考えた私は、髪を切った日を、「自撮り特訓の日」と制定し、必ず自撮りをすることにした。
 
だんだんと恥ずかしさが薄れていった。
ちょっとずつ角度をずらしたり、ポーズを撮ってみたりできるようになってきた。
ミッションだった正面撮りがついになんとか出来た時は一人で感無量だった。
 
そんな私の今現在の朝の日課は、朝一番、歯を磨く前に鏡の前で口角を上げること。
「口角あげよっ(ハートマーク)」と書いたカードを鏡の端っこに貼った。
ここ2ヶ月くらい、自分の顔を見ながら、毎日口角を上げている。
 
そんな口角上げトレーニングには思わぬ副産物もあった。
朝はもちろん、日中や夜、気分が落ち込んでいる時、疲れている時、だるい時などに口角を上げると気持ちが晴れるのだ。
これには驚いたが、よくよく調べてみると口角上げにはそんな効果が認められているらしい。
笑うとエンドルフィンという物質(幸せホルモン)が作られ、コルチゾール(ストレスホルモン)は減る。また、笑うことで出るドーパミンにより免疫力が上がるそうで、それは作り笑いでも同じ効果が認められるという説がある。
幸せだから笑うのはもちろん、笑うから幸せになるということらしい。
 
これを知ってからは、マスク時代を逆手に取り、思い出してはマスクをしたまま口角上げ練習をしている。
これが効果テキメンで、だんだん口角が上がるようになってきたのだ。
ちょっとモゴモゴしているかもしれないが、そんなことは構いもせずにせっせと口角上げトレーニングに勤しむ毎日。
 
免疫力も高められて、自撮りも怖くなくなる。
幸せホルモンで幸福感が増す。
自分に自信がつく。
口角上げトレーニングは旨味たっぷりなのだ。
 
自分で正面の写真を撮れるようになること。
その目標を立て、口角上げトレーニングや自撮り特訓を実行してきた。
その結果、正面の写真はもちろん、ポーズまで撮れるようになった。
しかし、得られた効果はそれだけではなかったし、幸福感や免疫力、自信などそのおまけの効果の方を本当は直感で求めていたのではないかと思うくらいだ。
 
自撮りが得意かと言われたら、もちろん決して得意ではない。
ましてや誰かにシャッターを切ってもらうとなると、ますます緊張するのも変わっていない。
 
それでも私は果敢に写真撮影に挑んでいくつもりだ。
本当は克服したいと思っているのに、そのことから目を背け、逃げ続けるのは嫌だから。
その1ステップとして、自撮りや写真撮影から逃げないことにした。
 
実は、もうすぐ、フォトグラファーの友人にポートレートを撮ってもらう約束をしている。
荒療治かもしれないが、私にとっては、こういうのは誰かを巻き込んでやらざるを得ない状況にしてしまうのが一番なのだ。
 
もう、アングルも、ポーズも、なにを着るかまで打ち合わせ済みなもので、あとは運命の日を迎えるだけだ。
 
そんな私は、満面の笑みを想像しながら、今日もせっせと口角を上げ続ける。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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