メディアグランプリ

春、手紙の季節


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記事:磯貝 歩(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
最後に手紙を書いたのはいつか、思い出せるだろうか。LINEのメッセージで簡単にやりとりができるようになった今、わざわざ便箋に文字を手書きする機会はほとんどなくなってしまったように思う。けれど思い返してみると、貰った手紙を読んで心が温まらなかった経験はないに等しい。ならば手紙から遠ざかっている今こそ、手紙を贈ることに再び注目すべきなのではないかと思う。
 
約10年前、わたしが中高生の頃、手紙を書くことはブームだったといっても過言ではない。部活動でしか関わりのなかった友人とのコミュニケーションツールとして手紙を送り合っていたし、授業中眠気覚ましに前後の席のクラスメイトと手紙でやりとりをしていた。その頃の手紙は想いを伝えるためというよりかは、雑談の延長線上だったと思う。
 
高校を卒業し大学生になると、手紙を書くことは一切なくなった。というのも、離れた友人との会話はもっぱらスマホで行っていた。ネット環境があれば簡単に相手と繋がることができ、とにかく楽なのだ。
 
そんなわたしが久しぶりに手紙を書いたのは、大学3年の春のことだった。当時アメリカへ留学していたわたしは、大学3年の春に帰国するにあたり、お世話になったホームステイ先へ手紙を書いた。手紙を書くことも久しぶりで、且つ英語で書くなんてきちんと気持ちが伝わるか不安だった。文章も上手くまとまっていなかったと思う。けれど、たくさんの感情を文字に起こし、それを読んだファミリーが笑顔で抱きしめてくれたことがとても嬉しかったのを覚えている。
 
それからというものの、わたしは定期的に手紙を書くようになった。それはたまたまかもしれないけれど、春が多かった。大学4年の春には、辞めていくアルバイト先の先輩に手紙を書いた。次の年の春には、社会人になるにあたり、お世話になった人たちへ手紙を書き、わたしも手紙を受け取った。手紙は、贈る相手との記憶を思い返す良い機会になり、その想いを文字に起こすことで、贈られた側の気持ちをほぐしじんわりと温めることができる。
 
2020年の春、わたしが社会人になってちょうど1年が経とうとしていた頃、世界では新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた。サービス業のわたしにとっては変化が著しく、急遽約3カ月間のお休みが与えられた。ひとり暮らしをしているわたしにとってそれは辛く、何をしようか考えるだけで毎日が過ぎていった。せっかくの休みを無駄にするわけにもいかず、ウクレレを始め、お菓子やパン作りに挑戦した。本を読み、映画を観る毎日は楽しかった。けれど、友人とランチに行って直接話したいと思えば思うほど、わたしの心は悶々としていった。
 
そんな頃、長い時間ひとりでいたせいか、急に面白いことを思い付いた。わたしが今友人にしてもらって嬉しいことはなんだろうと考えた時、贈り物だと気づいた。その人のことを想って選んだ贈り物は、何であっても嬉しいと知っている。わたしは即行動に移した。近くのスーパーでお菓子を購入し、雑貨屋さんでレターセットを手に入れた。帰宅して紙袋に購入品を詰めると、一緒に送る手紙を書いた。手紙には、最近していることや次に会う時は何をするか、そしてそれまでは大変な状況を一緒に我慢しようと書いたと思う。大切な友人のことを考えると、次々に書きたいことが浮かんできた。
 
郵便局に贈り物を預けた翌日、早速送り先の友人からメッセージが届いた。郵便物の写真と共に、嬉しそうな声をBGMに開封動画を撮って送ってくれた。たくさんお金を掛けたわけじゃないのに、あんなに喜んでもらえるとこっちまで嬉しい。
 
数日後、お返しが郵送されてきた。もちろん手紙も入っていた。気持ちの込められた手紙は読んでいて心がじんわりして、とても温かくなった。手紙は元々ただの紙なのに、物凄いパワーを込めることができる。それは誰しもが貰って喜ぶ、とても便利なツールである。
 
この春、わたしはこれまでに3度手紙を書いた。いずれもお世話になった上司や先輩の退職に際してだ。3人共が本当にお世話になった方だったからこそ、便箋選びから丁寧に行った。言われて嬉しかった言葉、尊敬していた部分など、今まで直接言えていなかった言葉を並べた。何度書いても手紙の文章を上手くまとめることはできないけれど、それでも気持ちを正直に書くことはできたと思う。
 
そしてこの春、もう1人退職する上司がいる。入社当時から同じ部署でたくさんサポートしてもらった彼女にも、感謝の気持ちと今後のエールを綴るつもりだ。大好きだからこそ、丁寧に、時間を掛けて。
 
手紙なんて、書かなくても生きていける。それでもわたしが手紙を書くのは、それが相手のことを考える有効な時間になるからだ。その人にしてもらったことを忘れないよう、感謝しながら思い出を振り返ることができる。プレゼントに添える小さなカードからでもいい。相手のためにペンで文字を書くことで、たくさんの気持ちを整理して、次に進んでいけたらいいなと思う。
 
 
 
 
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2022-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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