メディアグランプリ

健康麻雀、はじめました。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上 春花(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
郵便ポストを開けると入っていたチラシ。
「開講!健康麻雀教室 1レッスン1,400円 初回半額700円」
 
ラジオで聴いたあれか。
「賭けない、飲まない、吸わない」がマナーの健康麻雀。ダーティーなイメージも持たれやすい麻雀だが、本来、頭も手も使う、会話もしながら楽しめるゲームは、認知症予防にも良いらしい。シニア層を中心にはやっているらしいが、私が聴いたラジオでは、私より少し年上のアナウンサーがはまっていると話していた。
 
40年このかた、麻雀と交わらない人生だった。麻雀牌を触ったこともない。
家族で麻雀をする習慣もなかったし、大学のサークルでも男の人たちの遊びだったと思う。部室にあった麻雀牌のケースは開けたことがなかったし、転がっていた「アカギ」を読んだこともなかった。
父親が麻雀関連のことで母親に文句を言われていた。子供だったからはっきりとは分からないが、家計に損失を与えていたのだろう。麻雀へのイメージは、後ろ暗い記憶と結びつき、私はやらないものと思っていた。
だが、そのラジオをきっかけに「麻雀を打てるおばさんやおばあちゃんって、なんかかっこよくない?」と思うようになっていた。そこにきて、渡りに船なこのチラシ。手ごろな値段、通えそうな所在地と時間帯も魅力的だ。俄然、麻雀をする自分が現実味を帯びてきた。
まずは1回行ってみるか。さっそく電話で予約を取った。
 
明るい雰囲気の教室には、入ってすぐに受付があり、野球の審判のような制服をカッコよく着こなした女性が二人、笑顔で迎えてくれた。
「予約をした井上ですが……」
と伝えると、自動雀卓を囲む席に通された。どうやら一番乗りのようだ。
しばらくすると、60代くらいの小柄な女性が来店し、私の隣に座った。テキストを持っているので、何回目かの生徒さんだろうか。
「よろしくお願いします」
軽く挨拶を交わしたら、間もなく開始時間になった。アシスタントという名札を付けた50代くらいの女性と、70代くらいの男性が席に着くと4人揃った。そして、受付の制服の女性は講師の先生だった。元気ハツラツに講義がスタートした。
 
まずは麻雀牌の種類を覚える。
自動雀卓はみんなでジャラジャラと混ぜる動作はなく、真ん中の穴に牌を落とすと、並べられたものがひょいっと自分の前に上がってくる。
触ると何とも言えない重量感。手にしっくりくる。
まじまじと見ると、一つひとつのデザインが何とも可愛い。
ジャラジャラとぶつかり合う音、牌の呼称にだんだんと愛着がわいてきた。
文字の書かれた「字牌」が7種。
トン、ナン、シャー、ペー、ハク、ハツ、チュン。
3種類の1~9の数字が書かれた「数牌」が計27種。
全部で34種。これを揃えながら覚える。
「だれかチュン持っていませんか?」
など、声に出して助けてもらいながら揃えるのも楽しい。
5×5で並べてビンゴ大会をする頃には、一通りの牌の種類は覚えた。
 
そして、実際にゲームをやってみる。
麻雀は同じもの2枚の「雀頭(アタマ)」を1組と、同じか連番3枚の「面子(メンツ)」を4組、計14枚を揃えるゲーム。これも初めて知った。
講義では、まずはアタマ1組とメンツ1組を揃えるところから始まる。4枚から始めるので4枚麻雀だ。
本当は役を付けてあがらないといけないらしいが、そんなのはとてもできない初心者。とにかく、揃えるだけで精いっぱいである。
慣れてきたら、揃えるメンツを1組ずつ増やしていく。
自分が引いた牌であがれたら「ツモ」、他の人が捨てた牌であがれたら「ロン」。先生に「元気にハッキリ言ってくださいね~!」と言われ、「ツモ!」だの「ロン!」だの言うのは、なんか麻雀してるって感じで興奮する。
 
この日は、8枚を揃える7枚麻雀までやったが、アタマ1組、メンツ2組を揃えるだけでも、そのゲーム性の面白さは垣間見えた。
どういう揃え方にするか、牌をひきながら思いを巡らせる。揃う確率を高めるために、どれをとっておいて、どれを捨てるか、自分の運にも賭けながら、ずっと選択し続けるのだ。思い描いていた構想をスパッと捨てて、次のビジョンに切り替える変わり身の早さも必要そうだ。常に最良の未来を導くため、固執しすぎず軽やかに。失敗してもすぐ立て直す方法を考える。これって人生においても大切なことじゃないか……。麻雀ってこんな世界だったのか。さすが中国四千年の歴史……。深淵を覗くも底は見えない。
 
先生は、「麻雀は実力3割、運7割!」と言っていたが、運が要素に入ってくるのがまた面白いのだろう。人知の及ばない展開があるからこそ、極めきれず奥深いということだろうか。先生のアドバイスを受けたって、「ああ~、ごめんね~、捨てなきゃよかったね~!」などということが起こる。
2時間半の講義が終わったころには、知恵熱が出そうなほど。
これを徹夜でやるなんて、鉄人としか思えない。脳みそどうなってるの?
 
人生で初めて麻雀をやった感想はこんな感じだった。
また、一緒にゲームをした方も印象深かった。
麻雀歴ウン十年と言いながら、終始ニコニコと牌を揃えることから一緒に楽しんでくれるのだ。「こんな役、揃えてみたいね~!!」なんて言いながら。
好きなものがある人って、年齢も性別も飛び越えて本当に魅力的だ。
 
かくして、私の麻雀へのイメージはがらりと変わった。
あの牌の感触が忘れられなくて、リサイクルショップで1,000円で買ってきてしまった。息子に教えながら一緒に4枚麻雀を楽しんだ。
まさか、あの部室にあった麻雀牌が、我が家に置かれることになるとは……。
 
きっかけはほんのちょっとの興味だが、一歩踏み出してみると、全然知らない世界が広く深く、当たり前のように存在している。
春はそんな未知のドアを叩いてみるのに、ピッタリの季節だと思うのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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