人を頼ることが苦手な、男の末路(電車編)
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:長谷川 博紀(ライティング・ライブ名古屋会場)
仕事終わりのある日のことでした。
私はいつも通りに、会社の入っているビルを出て最寄り駅に繋がっている地下道を通り、連結している駅の改札口に向かいました。そして、自動改札機にICカードの入っているスマホを取り出しかざそうと思ったとき、あることを思い出しました。
「そういえば、ICカードの残高が250円しかなかったな。これでは、家の最寄り駅までは帰れない」
その瞬間、おカネを下ろそうと近くの銀行まで向かい、ATMの前に立ったとき、あることに気が付きました。
「おいおい、財布がないじゃないか!」
コロナ禍で在宅ワークが続いていたこともあり、私の鞄は仕事用ではなくプライベート用がメイン。そちらが財布の定位置になっていたのです。そのうえ、私はキャッシュレス派で財布を出す機会はほとんどありません。会社には週一ペースでしか出勤していないこともあり、財布を忘れていたことに気づかず、今日一日を過ごしていたのでした。
そっと銀行の外に出て、一人作戦会議。現在の状況を整理すると、
・財布がないため、当然にキャッシュカードも持っていない
・ICカードには250円しか入っていない
・鞄の中には現金化できるようなものは入っていない
これは中々のハードモードだな、と考えていたところ、あることに気づきました。
・スマホのキャッシュレス決裁できるアプリの中に1万円分くらいある!
これだ! これを何とかできないだろうか?
そう考え、駅の自動券売機の方に歩みを進めました。
「コンビニでもキャッシュレス決裁のアイコンをレジ横で見かけたことがある。それに、日本は2025年までにキャッシュレス決済比率40%を目指す国だ。これで電車に乗れる!」
ある種の自己暗示をかけながら自動券売機の前に立ったのですが、あっけなく私の希望は打ち砕かれました。キャッシュレス決裁はおろか、そこには現金のみ受け付けの自動券売機しかなかったのです……。
「いや、分かっていたよ」
そう、心の声が漏れてしまった私は、来た道を戻りながら、次の打ち手を考えることにしました。
・キャッシュレス決裁しか手がなければ、コンビニで何らかの手段で現金化できないか?
・銀行ATMでは何とかならないか?
・自動券売機でダメなら、友人の券売所ではどうだろうか?
色々とアイデアは出てくるものの、確認しては撃沈。ついには、
・ICカードの残高で近くの駅まで向かうのはどうか?
・そこから自宅までは徒歩何分?
・徒歩ではなくタクシーではどうか?その時の運賃はどのくらいかかるか?
・タクシーではなくバスでは?
と特攻する勢いで思考を巡らせていました。
スマホでいろいろと調べていて、気づいたら駅について30分が経過していました。通常であれば、最寄り駅に着いて家路を歩いているだろう時間です。
「あぁ、昼に買ったおにぎりを一つ我慢していれば、このようなことにはならなかっただろうに……」
そんなネガティブな思考にも突入していきそうなときに、そういえば、と思いました。
妻に帰宅連絡をしていない、と。
いつも電車に乗るタイミングで「帰ります」とLINEをしているのですが、今はこのような状況だったので連絡をしていません。いや、正確に言うと絶対馬鹿にされる、と思っていたから現状の報告を避けていたのです。完全に自分の保身です。しかしながら、さすがに遅くなってしまっているので、連絡の一つくらいはしておかないとマズかろうと思い、一番ベターな案である「近くの駅まで向かう」案を報告することと併せて連絡をしたのです。
「もしもし、おつかれ。ちょっと、伝えなければいけないことがあるんですが」
「何?どうしたの?」
「言いにくいことなんだけど……、財布を忘れちゃって。手持ちなくて、ICカードの残高で行けるところまで行こうと思うんだ」
「ふーん、それで?いつ帰ってこれるの?」
「今からだと1時間ちょっとくらい……」
「遅い!改札にいる駅員さんにお金ないこと話した?」
「いや、していない」
「何やってるの!? どういう状況なの?」
(妻に状況説明中)
「分かった。今から言うスマホのアプリ(交通系ICのモバイル版)をダウンロードして。そのうえで、アプリのキャッシュ残高を移す! できる?」
「ちょっと、やってみます……」
妻の言う通りスマホを操作すると、ものの5分と経たずに自動改札機を通過することに成功! 無事、電車に乗ることが出来たのです。
そのことを感謝と共にLINEで報告すると、
「良かった、アナログおじさんが一つ賢くなったね!」
との返事が……。案の定、デジタルに強いお姐さんに馬鹿にされてしまいました苦笑。
その後「5分経たずに解決できるようなことに何で30分もかけていたのか」と電車の中で反省していました。もっと早くに人を頼ることができていれば……。このようなことは、仕事でもあるあるな話です。
・自分でやった方が早い
・頼ろうにも忙しそうだからお願いしづらい
・仕事を任せると丸投げと思われそう
・人に頼ると、できない人と思われそう
色々な理由をつけては、人に任せず自分でやってしまいがちなのは私だけではないはず。
そのような時は改めて目標に立ち返って、それを達成するための最適な手段は何かを考え直した方が良いかもしれません。今回の私も「家に帰る」という目標よりも「どのように帰るか」という手段を優先してしまっていた結果、目標達成が遅くなってしまったわけですから。
***
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