恋をきっかけに爆誕したミーハーファンが、プロ野球の試合から人生を哲学してみた。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:横山玖未子(ライティング・ゼミ4月コース)
小さいころ、正直に言うと野球は好きではなかった。
関西出身の私にとって、野球のイメージはもっぱら阪神タイガース。
激しいヤジやピュ~~~~~! と上がる風船に、熱い歓声。
スポーツに縁がない家庭で育った私には、すべてはテレビの中の出来事で、親近感も現実味もなかった。むしろ、好きなテレビ番組が野球の試合延長によってなかなか始まらないことに腹を立てることの方が多かったように思う。
同級生が活躍する甲子園予選など、自分の知人が出る試合に興味はあっても、大人たちが必死になってプロ野球チームを応援し、一喜一憂する理由がまったくわからなかったのだ。
「野球の面白さがわからない」
それでも別によかった。
世の中に娯楽は山ほどあるし、特に不自由もしない。
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本が優勝したときも、なんとなく「イチローってかっこいいね」と話を合わせる、そんな日々を過ごしていた。
しかし、今から2年前、運命の出会いがあった。
……ちょっとかっこよく言ってみたが、結論から言うと好きな人ができた。
そして、その人の影響で、私がズブズブと野球の世界に入りこむことになったのだ。
好きな人ができた私は、とても単純なので絵に描いたようにプロ野球を勉強しだした。
「盗塁って何?」
「フォアボール……?」
ルールも定かでない、そんな状態から、毎日仕事終わりにYouTubeで試合のダイジェストを見て、チームの選手の名前や特徴を覚え、わからない単語はその場で検索する日々が続いた。
我ながら自分の健気さと変わり身の早さに笑ってしまう。
プロ野球偏差値3から、20くらいまでにはなったのではないかと思う。
そしてついに、人生ではじめてプロ野球の試合を見に行けることになった。
毎日YouTubeで試合の様子をチェックし、試合速報を画面越しにハラハラと見守っていたが、ついに生で試合が見れる!
ミーハーファン、ついに球場へ。
コロナ禍により、入場制限もしていたので、チケットもなかなか手に入らず、念願の生試合だった。
ドームの中はファンでごった返しており、お祭りに来たような気分。
通常だと200-300円のソフトドリンクは、選手の柄の入ったスーベニアカップだと800円。「高いなあ」なんて言いながらも、ちゃっかり私も好きな選手ドリンクを購入した。
ドームにはきっと金銭感覚を狂わせる神様がいるのだと思う。
そうこうしているうちに、試合がはじまった。
こんなにハマった!と熱弁しているが、やはりにわかファンの私。恥ずかしながら試合を最初から最後まで見るのは、実はその日が初めてだった。
仕事が忙しかったこともあり、試合結果を見て、どんなプレーがあったかを知る。
今まではそれの繰り返しだった。
スタメンが発表され、ゲームスタート!
それぞれの選手によって違う登場曲に、ヒットやホームランには特別映像が流れる。生の試合は、ファンサービスや演出がたっぷり詰まったステージで、終始私は興奮した。
リアルタイムで試合を見ていると、SNSで速報を追いかけていたときとの違いを感じた。
今まで私は、結果としての「数字」しか追えていなかったのだ。
1回0対0、2回2対0、3回0対2…………9回3対0点。
5点対3点でゲームセット!
結果としては、5対3でわたしが応援していたチームが勝利した。
でも、9回までの表・裏、両チーム・各選手のドラマがあった。
みんな真剣勝負で、投げた、打った、走った。
試合には、流れも左右した。
途中で負けていたとしても、誰かがファインプレーをしたら、不思議とその後勢いづいて逆転するときもある。
それぞれの瞬間に、戦略があり、ドラマがあり、運がある。
最後まで、勝敗はわからない。
そして、もうひとつ気付いたことは、「努力は必ず報われるわけではない」ということ。
野球だけでなくアスリートの選手は、きっと努力を惜しまず練習やトレーニングをしている。
でも、試合では勝敗がついてしまう。誰かが勝てば、もう一方は負けるのだ。
それは、自分の実力不足もあれば、きっと天候や、チームメイトとの連携や、タイミングや、体調などの数えきれない「運」も影響してくるだろう。
幼いころから人生の大半を野球に注ぎ、何万分の1でプロ野球の試合に立っている選手たちが、努力をしていないはずがない。
だけど神様は時に残酷な結果を与えるのであれば、きっと「努力」というものは、成功(勝利)するための土俵に上がることができる最低限のチケットなんだと思う。
努力しないと、土俵には上がれない。そこから先は、運とタイミング次第。
いつチャンスが来てもつかめるように、常に土俵に上がりコンディションを整える。
そんなひとが、成功を掴むことができるのかもしれないなあ。
と、今も大切にしている私の気付きのひとつを、プロ野球はもたらしてくれた。
その後、好きだった人とは片思いのまま終わったが、私は趣味がひとつ増え、世界が広がった。
昔ほど、こまめに試合はチェックできていないけれど、私は今も、ソフトバンクホークスのファンです。
***
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