メディアグランプリ

「魚は自分が水の中にいることに気づかない」 越境の重要性


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐竹宏範(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
魚は自分が水の中にいることに気づかない。
魚は生まれてからずっと水の中で生活している。水の中から出ることなく、一生を水のなかで終える。
水から出たときにはじめて、自分は水のなかにいたということに気づく。
 
人間も同じ環境のなかで生活していると、その環境があたりまえになる。
環境の外から見たときに、はじめてその環境の存在に気づく。
 
例えば、私は3年前に東京から長野県松本市にやってきた。
松本市はアルプスの山々に囲まれて、とても景色がきれいなところだ。
地元のひとに「山がきれいですね」と、興奮気味に伝えると、みんな「あ、そうですね」というちょっと困った反応をする。山の見える生活に慣れてしまうと、そこに山があることは意識しなくなる。
家の前をきれいな川が流れていて、川には白鷺がいる。
「家の前の川に、きれいな大きな白い鳥がいたんです!」
と、これまた興奮気味に伝えると、白鷺だと教えてくれる。
私の反応が面白くなってくるのか
「あの川にはホタルがいるんだよ」
とか
「あの山にはイノシシとかタヌキとかいるよ」
とか
「あそこでクワガタがいっぱいとれるんだ」
とか
私が喜びそうなことを、教えてくれるようになる。
ふだん、あたりまえに存在して意識していなかったことが、外からの目線ではじめてそこにそれがあることに気づいたということだ。
 
外に出ると、意識していなかったことの価値に気づく。
知人に、松本おさんぽ便という事業を立ち上げたひとがいる。
そのひとは、高校までを松本で過ごし、大学から東京に出た。大学卒業後は、別の地域での就職が決まっていたが、コロナの影響で就職予定先の事業が立ち行かなくなってしまい、就職先がなくなってしまった。どうしようもなく、松本の実家に戻ってきた。失意のなかで過ごす日々。やることもないので、ひとまずおさんぽをしてみた。おさんぽをしてみると、街にある様々なものが新鮮に映り、魅力をたくさん発見した。子どものころ松本で暮らしていたときは、松本の街が嫌いで嫌いで仕方なかった。でも、一度外に出て帰って来て、おさんぽをしてみると、こんなに面白いものはないと気付いた。松本おさんぽ便は、彼女が見つけた松本の街の面白いものを詰め合わせたギフトボックスだ。発売と同時に、地域のメディアからたくさん取り上げられ、売り上げは好調だ。
水の外に出たからこそ、水の存在に気づくことができた。
 
外からの視点が、自分が水の中にいることを気づかせてくれる。
私は松本では、地元の中小企業で働いている。中小企業が存続し続けるのには、やはり存続できる理由がある。
詳しく書くことはできないが、その会社では従業員のみんなにはとっても不評の方法で製造をしている。とても大変で、そのせいで製造が遅れたり、作業者には特別な技術が必要になる。私もその業界の経験があるのだが、その方法を見たときには正直驚いた。でも、なるほどと思った。そのような方法は、大企業には絶対にマネできないものなのだ。それが功を奏して、その企業は日本中の名だたる企業をクライアントに抱えている。そして、それは中で働いていると絶対に気づかない。それを従業員に説明すると、みんなびっくりする。それまでは、「なんでこんなことやってるんだ? 頭おかしいんじゃないか?」という文句ばかりを言っていて、離職の原因にもなっていたようなことだ。
魚は自分が水のなかにいることを気づかない。
悪いところが変わることもある。ある企業では、まだ古い体質が残っていて、女性社員はアシスタントのような役割であることが当然のようになっている。それは地域柄もあり、誰もそれを不思議には思っていない。私から見ると、せっかく能力のある女性たちが虐げられているように見えてもったいないように見える。だが、本人たちも、当然のことと思ってまったく気にしていない。私は、私の別の職場での経験を伝えた。特に驚いていたのは、どちらかというと男性社員。あたりまえのようにやっていたことも、実は悪気があるわけではない。そこから、女性社員たちの活躍がはじまった。彼女たちはこんなことを言っていたのが印象的だ。
「私も自分にできることがあると思ってもいいんですね。自分が思ったことは、意見を言っていいというのが、とても新鮮でした」
誰もが自分のあたりまえのなかで生きていて、それはあたりまえなので、自分で気づくことは絶対にできない。
 
外のひとと話すと、自分の環境について気づくことができる。
私は松本地域で働く若手社会人たちが集まる会を主催している。そこで、毎回必ずあるのは、「私だけではなかったんだ」という反応だ。会社のなかで働いている、会社の悪いところにどうしても目が行ってしまう。「この会社最悪だ」と。テーマを決めて、愚痴を言ってもらうと、だいたいみんな同じようなことを言う。「社長は思い付きでものを言う」「上司は理不尽だ」「xx部とxx部はいつも喧嘩ばかりしている」など。そこでみんな気づく。「あー、私だけじゃなかったんだ」と。気づくとまずは安心する。安心すると、「じゃあ、いったいどうしたらいいのか?」と前向きに考えるようになっていく。
 
魚は自分が水の中にいることに気づかない。
外の視点を得ることで、はじめて水の存在に気づく。
良いところ、悪いところが明確になる。
新しい考えが生まれる。
水の外から考える機会が、新しい思考につながる。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-05-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事