メディアグランプリ

タイムカプセル―僕を変えた4か月

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:玉置裕香(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「お前は、将来のことを考えているのか」
仕事を辞める前、僕はお世話になった上司から言われた。僕は返答に困ってしまった。
「……考えていません」
そう、僕は答えるしかなかった。
僕の将来は1年どころか、1か月先も見えなかった。
 
僕は仕事を辞めて、すぐに引っ越しをした。
ここではないどこかへ逃げたかったのだ。僕のことを誰も知らない場所へ。
どうせなら、住みたかった場所へ住んでみよう。
そう思って、僕は福岡に引っ越しを決めた。
幸い、少しだけ蓄えがあった。だが、引っ越し代やしばらく休むことを考えると贅沢はできない。僕は街から少し離れたところへ引っ越した。
 
引っ越してから、友人が連絡をくれた。
「よお、元気にしているか。福岡に住むことにしたんか。いい街だから、思いっきり楽しんだらいい」
「ありがとう。知っている人が誰もいないからね。ちょっと不安だけど、楽しむよ」
「楽しむついでに、数年前に俺が受けていたゼミを受けてみたらどうだ。お前のやりたいことが見つかるかもしれん。TENRO-INという書店なんだが、色んな講座が受けられて面白いぞ」
「へー、調べてみるよ」
友人との電話が終わって、僕はすぐにその書店を調べてみた。
“本の先の体験『Reading Life』を提供する次世代型書店”と書いてあった。
本屋としてだけでなく、カフェも併設。こたつまである。
よく見るといろんな講座が提供されていた。友人が勧めてくれたゼミもあった。
『人生を変えるライティング・ゼミ』
書くことで人生が変わる?? 僕の中で疑問が生まれた。
どんな講座なんだろう。そんな簡単に人生なんて変わるのだろうか。
ゼミの受講生が書いた記事が載っていた。「元彼が好きだったバターチキンカレー」の誕生秘話。
記事の横にはかわいい女の子の写真があった。記事はとても面白かった。しかもこのかわいい子は、ふられた腹いせにつけたこの重いネーミングがバズってテレビ出演したらしい。
「すごいな。文章で人を動かして、人生を変えるなんて……」
 
翌日僕はTENRO-IN書店に居た。僕は気になるライティング・ゼミを受講したいと店のスタッフへ話した。すると、ちょうど明後日から始まるらしい。
運がいい。僕は迷わず申し込んだ。
 
ゼミで登壇される先生は、見た目は僕の好きなシティー・ハンターにでてくる海坊主にそっくりだ。サングラス姿を見たい、緑のつなぎを着て欲しいと何度思っただろう。
自信のある声、話し方、仕事への姿勢。先生は僕のなりたい、“できる男”を体現していた。
先生についていけば、間違いない。そう僕は確信した。
 
ライティング・ゼミは4か月間ある。講座は月1回開催だ。そして毎週月曜日に課題提出がある。
課題のテーマは自由。2000字を最後まで読んでもらえる文章を書く、のが目標だ。
僕はまずテーマ選びに苦戦した。書きたいテーマが見つからない。
仕事を辞めてから、僕は自分自身を見つめることを避けていた。傷つかないように、そっと僕は内に秘めていた思いを閉ざしていた。
でも気づいてしまった。僕は書くことで、言葉にできなかった思いを吐き出さなければいけない。じゃないと、次へ進めないのだと。
 
仕事を辞めてから溜まっていた想いを文字にしていった。言葉にできなかった、辛くきつかった思い出たち。文字に起こすたびに僕は泣いていた。自分の中にこんなにも感情があったなんて知らなかった。
書くことがつらかった。でも書かずにはいられない。
10年分の思い出。
こんなにも人が、仕事が好きだったんだ、と僕を思い起こさせる。
この想いはきっと僕のこれからの人生の礎だ、そう思うと僕は何度も言葉を選びつむいでいった。
 
そしてこれが最後の課題だ。
久しぶりに4か月前の文章を振り返った。拙い文章と僕は笑ってしまう。でもあの時の大切な想い、流した涙をありありと思い出せる。
最後の講義で先生は言っていた。文章は他人のためのものと自分のためのものがあると。
僕は自分自身のために文章を綴っていた。カタルシス効果なのだろう。流した涙は僕の血となり肉となっている。
書いてよかった。
自分と向き合うことができて良かった。
提出に間に合わなかったこともあったが、頑張った自分をほめてあげたい。
 
この講義の途中で、僕は新しい職場に入ることとなった。
まだ2ヶ月しか経過していない。慣れなくて、できなくて、悔しい思いをするけれどもそれは仕方ない。慣れるまでの辛抱だ。
僕は今できること、そして新しい職場で学び、得ていきたいことを書き出していく。
僕だって役に立つことがあるのだと、認めてあげるだけで今はいい。
きっといつか目の前の先輩たちのように、できるようになるはずだ。
 
僕はまだ将来が見えていない。
僕は何かを伝えたい。僕オリジナルな何かを。
この4か月で僕は次の段階に入ったのだと気づく。
好きを、得意なことを伝え、人とつながっていきたい。
そのために今、僕は学んでいるのだと。
 
 
―2年後、僕はタイムカプセルを開ける。
―そのとき、僕が学んだこの4か月の想いはきちんと届いているだろうか。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-06-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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