メディアグランプリ

1週間迷い続けていたら自分の才能に気づいてしまった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:よしかたよしこ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
私はここ1週間迷っている。道にではない。どうでもいい話だが、どのドライヤーを買おうかということだ。
 
1週間前、愛用していたダイソンのドライヤーが壊れた。まだ3年半しか使っていなかったのに。問い合わせると修理に2万かかるという。それなら買い替えようか。とすると他の製品と比較せねばなるまい。ここで優柔不断の発現である。
 
毎回年始に書く目標のひとつ。優柔不断をやめる。が、治った試しがない。ぐずぐずと物事の決断ができない。毎度のことである。
私はありとあらゆる人に「ドライヤーおすすめある?」と聞きまくった。
答えは千差万別だった。だがダイソンをおすすめする人はいなかった。こりゃいかん。自分の推しが後押しされない上に選択肢が増えすぎた。家電量販店でみんなのおすすめするドライヤーを見てみたが思考停止。優柔不断にとって選択肢が増えるのは迷宮の入り口。ロングヘアを毎晩自然乾燥させながら週末を待つことにした。
 
週末になるとまず私は近所の縁切り神社へ向かった。優柔不断は時に神頼みに走り自ら選択することを放棄する。まずは家電故障にまつわる破壊神との縁を切らねばならぬ。幸い近所に有名な縁切り神社があった。禍々しいお札がびっしりと貼られ祟り神のようになった石碑があり、そこに開いた穴を這いつくばって通り抜けることで悪縁が切れるという。
ちらりと絵馬を見るとドロドロとしたドラマが書き連なっている。こんなくだらない縁切りを願っているのは私だけかもしれない。
 
お参りを終えるとその足で百貨店へ向かった。担当の美容師さんがおすすめしてくれた高級美髪ドライヤーを試すのが目的だ。優柔不断はその道の権威の意見に弱い。やっぱり美容師さんのおすすめが一番でしょ。
早速試させてもらうと、乾いた髪に当てるだけでサラツヤになる。これは良い。だが高い。そして、乾く時間はダイソンの倍かかるという。
ここで、私の天秤が明らかとなった。優柔不断にとっては決断への第一歩だ。
もともと私がダイソンを愛用していたのは圧倒的風量による髪を乾かす時間の短縮だ。この高級美髪ドライヤーはそれを捨てる代わりに美が得られる。選ぶべきは時短か、美髪か。
 
物に全ての要望を求めることはできない。値段、機能、デザイン。優先順位を決め、何かを選んだら何かを諦める。先に捨てる項目を選ぶことも大事かもしれない。値段においては、迷う理由が値段なら買え。買う理由が値段ならやめろ。とも言われる。
私は安すぎる物は最初から除外していた。とはいえこの高級美髪ドライヤーは5万を超えるので少々覚悟が必要である。またすぐ壊れてしまったら。平均寿命を聞いてみた。
「だいたい4年くらいで修理される方が多いです」
なんだって? ドライヤーってそんなにすぐ壊れるものなのか。ダイソンも3年半ではあるがお手入れをだいぶ怠っていた自覚はあった。妥当だったのか。
それなら今の選択肢で一番安いダイソンの修理にしよう。サステナブルも大事だしね! 優柔不断は大義名分にも弱い。
 
そして家に帰りふと問題に気づいた。修理だとこのドライヤーを引き取りに来てもらう必要がある。在宅のタイミングと修理にかかる時間を見積もると、ドライヤーが手元に戻るのはさらに1週間後になる見込みだった。それならやはり買い替えか。また振り出しに戻る。優柔不断はこの繰り返しだ。
 
その時友達から連絡が来た。「その高級美髪ドライヤー、YouTuberがボロクソ言ってたよ」
優柔不断にとって助かるのは選択肢の削減である。自分が除外しようと思っていた物を誰かにボロクソに言ってもらえると、その後押しになってとても助かるのだ。しめしめ。そのYouTubeを見てみよう。
高級美髪ドライヤーは確かにそのYouTuberにボロクソに言われていて気持ちがスッとした。しか私の推しのダイソンもまるで低評価だったのである。
 
優柔不断な人間は、本当にみみっちいのだ。けちで欲張りなのだ。無駄な投資をしたくないし、後で後悔もしたくない。だけどその選択に貴重な時間を投資していることを忘れがちだ。いや、ここまで時間をかけたからこそ絶対最適の結論を導き出したいのかもしれない。私はそこからエンドレスにYouTubeのドライヤーレビューを見続けた。
 
そしてある解を得た。それまで誰にもおすすめされなかった商品だ。故に、家電量販店でも手に取りもしなかった。もう一度見に行かねば。
ついに最終局面だ。優柔不断は自分の選択に自信がない。あとは誰かに背中を押してもらうことが必要だ。ドライヤー売り場を見ていると店員に声をかけられた。「いいの見つかりました?」
ここは慎重に。私の答えはほぼ出ている。そこへ誘導するように悩みを打ち明ける。「これがいいかなって思ってるんですけど……」店員は心得ていた。ちゃんと私の選択を後押ししてくれるような答えをくれた。決まった。
だがしかしここで優柔不断のダメ押しだ。ネットで価格比較。Amazonが最安値。翌日配送ならアリ。ポチリ。
 
長い長い優柔不断の旅が終わった。なんと無駄な時間の浪費だろうか。即決できる人が羨ましいとつくづく思う。しかし慎重でリスク回避能力が高く、様々な可能性に配慮できるのが優柔不断な人間のいいところなのだ。今なら友達の良きドライヤーアドバイザーになれるだろう。短所は長所に。こうなったら優柔不断と共に生きていこう。優柔不断の思考パターンを知り尽くしているからこそ、そんな人の心の中の答えを汲み取りそっと背中を押しますよ。ご相談お待ちしております。

 
 
 
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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