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英語を話すこと 金持ちになること


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記事:ポリグロット(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「何言ってんのか、さっぱり分からん」クラスメイトの誰かが言った。
中3で引っ越してきた茨城の片田舎でのことである。僕たちは英語の定期試験を受けていた。問題を早めに解き終わったので、僕は解答用紙の隅に、何の気なしに月と雲の簡単なイラストを描いて暇つぶしをしていた。中学校の定期試験など、早めに解き終わって暇している学生と、早々に諦めて暇している学生ばかり。試験時間の後半はみんな暇。試験時間いっぱいまで解答用紙と格闘する者などいなかった。
 
「上手だね」試験監督中の英語教師が話しかけてきた。その一言は、僕の落書きを褒めるというより、むしろ既に僕が問題を解き終わっていることの確認作業のように思えた。
案の定、教師は僕の横に留まり、そして英語で話しかけてきた。ちなみに教師は日本人である。話の内容は簡単な質問程度で、中学3年間の英文法と英単語を理解していれば容易に理解できるものであった。“日本人同士でなぜか英会話”という状況が面白くて、僕も中学3年分の文法と単語たちを総動員して英語で応えてみることにした。
これが、恐らく生まれて初めて英語を試験運用してみた瞬間であった。それを聞いていた周りの反応が、冒頭に書いた一言であった。
 
それから多くの時を経て、現在私は英語を使って仕事をしている。仕事やプライベートで知り合う人達の中には、私が英語を使えると知ると決まって定型の質問をする人がいる。
「どうしたら英語が話せるようになるんですか」 多分1年に1度は聞かれる。
そんなとき私は、決まって中学3年の定期試験の話を引用する。そして、
「中学校3年間の英語ができれば、話せるようになりますよ」と伝えている。しかし、これを聞いた相手の多くは、なんだか拍子抜けした表情を見せる。
『そんなに簡単なことなら、自分でも既に英語の使い手になっているはずだ』という疑いの表れなのかも知れない。
 
このような猜疑心を抱かれる前に、そもそもどの程度のレベルに達したら“英語が話せる”と言えるのかを明確にする必要がある。アメリカ人やイギリス人などのネイティブのように英語を話すことが、“英語が話せる”ことなのか。巷で売っているネタ本の英会話表現を100個とか200個暗記して、それを披露することが“英語が話せる”ことなのか。
ネイティブのようにペラペラと英語を話すことを、“英語が話せる”ことと思っている人が実は結構多いのではないか。しかし、私も決してネイティブのように話せているわけではない。むしろ、今でも必要に応じて英文法と英単語を編み上げていく工程を踏んで話すこともある。海外在住歴のない私にとって、英語を話すことは機械的な作業に他ならない。
水面下で必死にバタ足で漕いでいる姿は見えない。だから、英語を運用している表面だけを見れば、ネイティブのようにペラペラと喋っているように映るのかもしれない。
 
かつてオーストラリアにホームステイをしたときのことである。早口でゴニョゴニョ喋る現地訛りの英語を、私は全く理解できなかった。ところが、ステイ先には3歳ぐらいの男の子がいて、周囲のオーストラリア人の大人たちのゴニョゴニョ話に相槌を打ったり、合いの手を入れたりしていた。
『えっ! マジっ? 英検一級持ってるのに……何コレ?』私は衝撃を受けた。
“英語が話せる”ことを、ネイティブ同等としてしまうことが、いかに難しいかが分かっていただけたのではないか。
 
そこで、「日常生活や仕事で使うときに伝わるくらいになったら、“英語が話せる”ってことでいいんじゃない?」というのが比較的現実的な路線なのではないか。それが、ネタ本の基本表現を100個暗記することが“英語が話せる”ことかというと、これもまた違う。覚えた表現を披露する機会に巡り合わなければ、話せていることにならない。
 
“英語が話せる”ことの適度なレベル感。それは、ネイティブとネタ本披露の間にあると思っている。
「どうしたら英語が話せるようになるんですか?」
という質問に対して、今後はこう応えようと思っている。
「それは、お金持ちになるようなものだよ」と。
ここで「なんだ。やっぱり金かよ?」とがっかりしないで欲しい。
「教育は金だ。英語を習得するのにだって金がかかる」と言うつもりは毛頭ない。
「英語が話せるようになるのは、金持ちになるようなものだ」とは言ったが、
「英語が話せるようになるには、お金持ちになることだ」とは言っていない。
言い換えると、「英語が話せるようになっていくことは、お金持ちになっていくことと似ている」ということだ。
 
そこでまず、“お金持ち”になることについて話をする。
「人は、いつ“お金持ち”になるのだろうか?」諸説あると思うが、批判を恐れず私見を述べれば、“これ以上お金を稼がなくても、これまで貯めたお金を減らすことなく生活していける状態になること”だと思う。たとえば、これからずっと働かずに、150歳になるまで貯金を切り崩して生活していける人がいたとする。この人は、お金持ちではない。これまで貯めたお金が今後減り続けていくからだ。毎年預金額を増やしているサラリーマンも違う。働いているからだ。お金が“自律して”自らお金を稼ぎ続け、元々のお金を減らさずに生活していける状態、つまり今あるお金を投資してその利息だけで元のお金が永久に自己増幅し続ける状態が、お金持ち”ということになる。
 
英語にも同じことが言える。つまり、これまで積み重ねてきた英文法や単語の知識といった財産だけで、これから遭遇する英語でのコミュニケーションの殆どの場面で、自律的に何とかその場をしのげる状態こそが、“英語が話せる”ことである。このとき、新しい文法や単語を加えるのはルール違反。あくまで、これまでの知識などのリソースを新しいコミュニケーションの場に再投資するだけで、英語で話をするだけの最小限の蓄えを確保した状態である。
 
冒頭で述べた中学3年の英会話初デビューの話と絡めれば、今後勉強する情報の追加投資なしに、既存の知識だけで自律して英語を話すことができるだけの最低限の“英語を話す”力とは、中学3年間の英文法と英単語の蓄積、ということになる。
 
今後また
「どうしたら英語が話せるようになるんですか?」
ときかれたら、こう応えようと思う。
「それは、お金持ちになるようなものだよ。再投資したら自律的に、勝手に運用できて、そのために十分な文法と単語の資産を持っていること。その中身は、中学校3年間の英語だよ」と。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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