メディアグランプリ

新しいアイデアは、「カレーうどん」から


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記事:かんたろう(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「あれ? これどこかで見たことがある」
 
私はこの言葉を何度つぶやいたのだろうか。
 
会社で装置開発に関する新しいアイデアを考えている時。
新しい事業に関するディスカッションをしている時。
プライベートのブログで何かを主張する時。
色々な場面でつぶやいている。
 
私は何か新しいことを考える時、「どうせ考えるなら、自分で考えた全く新しいものにしてやるぞ!」という意気込みで考え始める。
すぐに何か思いつくこともあるし、数日かけても出てこないこともある。
何かしらのアイデアを思いつくと、「やった!」と喜ぶとともに、ホッとする。
しかし、少し冷静になってアイデアを見返すと、冒頭の言葉をつぶやいている。
「ああ、また考えられなかったか」と、とても残念な気持ちになる。
 
何か新しいことを考えなければいけない時、他の人と同じではいけないことがある。
サラリーマンである私の場合、仕事でこのような場面に遭遇する。
新しい発明だと思ったらすでに誰かが発明したものだったり、新しい事業だと思ったらすでに他社が実施していたり。
このようなアイデアは採用できないので考え直さないといけない。
しかし、頑張って考えてみるものの、結局、人のアイデアとはちょっとだけ違ったものしか考えられない。
全く新しいものからは程遠い、平凡なアイデアだ。
 
「あーあ、やっぱり全く新しいものを作るのは難しい。というか、そもそも私には新しいアイデアを作るのは無理じゃないか?」
 
入社以来、ずっとこんなことを考えていたのだが、数年前に仕事である出来事があった。
装置開発の仕事に携わって、10年が過ぎた時のことだ。
装置開発中にある問題が発生して、何人かのメンバーで解決策の打ち合わせをしていた。
良いアイデアが出ずに行き詰っていたが、何かの結論を出さなければいけない。
私は参加者の中で一番のベテランだった。
「何かアイデアを出さないと、さすがにカッコ悪い」と思い、必死になって考えた。
 
その時、なぜだかわからないが、幼稚園の頃、友達の家で「チクタクバンバン」というおもちゃで遊んだ時のことを思い出した。
「チクタクバンバン」は、4×4の16マスの枠の上に置かれた15枚の線路のプレートを動かして、目覚まし時計がプレートから落ちないように遊ぶおもちゃである。
しばし、「ああ、あの頃は楽しかったな」と現実逃避する。
他のメンバーに意見を求められ、すぐに現実に戻ってきたが、ふと、「このおもちゃのように、線路のプレートの上を動かすというアイデアが使えるかもしれない」と思い、ホワイトボードにアイデアを書いてみた。
 
「これ、使えると思わない?」
 
そこから、他のメンバーの意見も交えながら、アイデアを固めていく。
今までとは異なるこの新しいアイデアが見事な解決策となり、最終的に製品に搭載された。
 
このことから、「新しいアイデアは、自分で全く新しいものを考え出すだけではなくて、既存のものを組み合わせてもできる」ということに気づいた。
 
言ってみれば、カレーうどんと同じだ。
例えば、皆さんが料理屋の主人だとする。
市販されているレトルトのカレーを温めて、ご飯に盛り付けてカレーライスとして提供する。これは、他の人のものをそのまま流用しているだけだ。
一方、レトルトのカレーを和風だしで割り、市販のうどんと組み合わせて、カレーうどんとして提供する。これはおいしいかどうかは別として、自分で考えた新しい料理だと言える。
つまり、「すでに存在しているもの同士を組み合わせて、全く別の新しいものを作り出す」という考え方だ。
 
このことが分かってから身の回りを眺めると、全く新しい製品やアイデアだと思っていたことが、実は「カレーうどん」パターンで作り出されているものが多くあることに気づく。
 
ゲームの分野では、「RPG」と「パズル」という別のジャンルのゲームを組み合わせた、スマートフォンのアプリで大人気の「パズドラ」。
文学の分野では、「科学」と「推理小説」を組み合わせて、古くからの推理小説には見られない科学技術のトリックを使用した推理小説である、東野圭吾さんの「ガリレオシリーズ」。
 
探せばいくらでも見つかりそうである。
つまり、この考え方は、普通に生活している人にはほとんど関係のない「発明」という分野だけの話ではなく、娯楽や文学といった様々な分野にも応用できるのだ。
 
「すごいことに気が付いた!」と当時は、本気で思った。
 
しかし、すぐに冷静になる。
 
「私が思いつくくらいだから、すでに誰かが思いついているのでは?」
 
ネットで調べてみると、ジェームス・W・ヤングが「アイデアのつくり方」という本で、「アイデアは新しい組み合わせである」と述べていた。
ちなみにこの本の原著の初版は1940年である。
私は本気で知らなかったのだ。
 
この考え方を知るだけで、簡単に新しいアイデアを出せるようになるほど、私の発想力は豊かではない。相変わらず、新しいアイデアが出ずに悩んでいる。
しかし、「新しいアイデアをどうやって考えるのか」がわかっただけでも、ずいぶんと気が楽になった。
 
もし、昔の私と同じようにこの考え方を知らなくて、何か新しいものを考えるのに行き詰っている人がいれば、こう声をかけたい。
 
「完全なオリジナルを考えるのは難しいけれど、既存のものを組み合わせて新しいものを作ってもいいかもしれないよ」
 
 
 
 
***
 
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2022-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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