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感動する姿は人を動かす力がある


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:串間ひとみ(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
11月11日 に、『君の名は。』『天気の子』などでおなじみの新海誠監督の「すずめの戸締まり」が公開された。公開を心待ちにしていたというファンの方も多いのだろう。
 
しかし私自身は映画の予告を様々なところで目にしていたので、その存在には気づいていましたよというレベルで、
 
「どうしても観に行かなければならない」
 
というほどの熱量は全くなかったと言ってもいい。おそらく世の中で映画を見た人が増え、面白かったと評判になれば観に行ったかなという程度。そんな私が11月12日、公開翌日には「すずめの戸締まり」を見るために映画館の座席にいた。
 
それはなぜか?
 
Facebookで天狼院書店店主三浦さんが書いた「新海誠監督の『すずめの戸締まり』を観て、もう二度とこの映画は観れないんじゃないかと思った。」という記事を読んだからだ。
 
その記事の中で三浦さんが、観られない理由を
 
「満身創痍になるくらいに感動し、嗚咽して座席が揺れて隣の人に
『あれ、地震じゃね?』
と訝しげに見られてしまうほどだったからです。」
 
と、書いていた。
 
「どんな状況?」
 
三浦さんの顔はもちろん分かる。だけどその姿が想像できなかったのだ。言葉を選ばずに言わせてもらえば、いい歳の大人の男性が人目もはばからず嗚咽をするほどの感動とはどんなものだろう?
 
急に『すずめの戸締まり』興味がわいてきた。
 
幸い私の住まいは映画館にとても近く、思い立てば10分とかからず席に座れてしまうような場所にある。映画の始まる時間をチェックし、レイトショー2本目を目指してポチポチとネット予約を開始した。さすがに公開2日目、結構席が埋まっている。それにしても三浦さんを嗚咽させた映画だ。ドラマの最終回だけ見ても泣けてしまう、特技感情移入の私がどうなるかは火を見るよりも明らかだ。当然隣に人がいる席などもってのほかだ。映画館のネット予約の画面を見ながら、できるだけセンターで、できるだけ後ろで、そしてできるだけ横に人が座らなそうな席を慎重に選んだ。ハンカチでは足りない可能性を考え、小さめのタオルを鞄に入れ、映画館へ向かった。
 
「日本各地の 廃墟 を舞台として、災いの原因となる“扉”を閉じていく」という、ホームページにですら堂々と書いてある内容すら理解してないまま、映画に行ったのは始めてだった。そのため映画が始まってから
 
「あ、そんな話なの」
 
という驚きの連続。
 
逆に言えば、何かの鍵を閉めるらしい以外の前準備を持たずに見た結果、先が全く読めず、出てくるキャラクターも全く想定しておらず、ある意味とても楽しめた。ネタバレになるので内容の感想は差し控えますが、画がきれいなこと、個人的にキャラクターの声が好みだったことも付け加えておきましょう。
 
そして私の最大の関心事であった大の大人の男性が嗚咽するほどの感動とはどんなものだ? 問題の結末。
 
私自身は結構泣いたのだが、嗚咽するほどではなかった。当然地震も起こしてもいない。とても感動をしたが、それは三浦さんとはたぶん全く違う理由ではないかと思う。見たからこそ分かるが、ある特定の条件の人たちにとっては、三浦さんと同じようなことになるかもしれないということは想像がつく。そして、きっと私が感動した条件を経験した人であれば、私と同じような感動の仕方をするかもしれない。
 
三浦さんの記事を読んで、実際に自分が映画を観に行ったことで気づいたことがある。
 
『君の名は。』も、公開されたばかりの頃には、今回と同じように全く興味がなかった。ところがほぼ連絡をよこさない弟が、「面白かったよ」と言ったことが見に行ったきっかけになった。なにせその時の弟は、『君の名は。』に出てくる組みひもを作ってみたり(弟は私と違ってだいぶ起用である)、モデルになった神社ではないかと言われる神社に子どもたちと行ってみたりと、すでに尋常ならざるドハマりぶりだった。見に行かないという選択肢はないというものだ。そして、三浦さんの嗚咽ぶりが同じく、私をあまり興味のなかった映画に向かわせたのだ。
 
人の感動やドハマりぶりは、そのコンテンツから受けた影響力の大きさを表している。もちろん、同じものを見て、同じように感動したり、ドハマりするかは、その人のそれまでに歩いてきた人生や環境要因によるものだとは思う。しかしその感動やドハマりしている姿は、周りの人に何かしらの熱量となって訴えてくるのだ。それがものすごいものなのではないかと感じさせる熱量。同じコンテンツでも、これまでの人生の中でどんな経験をし、感じ方は様々なのだろうが、そこからの熱量を間接的に感じ、周りの人を動かすのだ。
 
結局私は、「君の名は。」を4回見に行った。正直1回目も面白かったが、あまりよく理解できていなかったように思ったからだ。回数を重ねるごとに、1回目に沸き上がった感動が整理され、回数を重ねごとに、その正体が何だったのかを整理できたように思う。
 
だから今回も、三浦さんからもらった感動の正体をしっかり突き止めるべく、また行くことになるだろう。
 
 
 
 
***
 
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