2022年11月11日、新たなチャンピオンが誕生した
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記事:吉田けい(ライティング実践教室)
2022年11月11日、新たなワールドチャンピオンが誕生した。
野球じゃない。サッカーじゃない、ラグビーじゃない、ボクシングでもスキーでもチェスでもない。ポケモンワールドチャンピオンシップで、カントー地方マサラタウン出身のサトシが、史上最年少にして無敗の王者ダンデを撃破したのだ!
なーんだ、アニメの話かあ、とがっかりしないで欲しい。ポケモンを知らない貴方にこそこの記事を読んで欲しいし、知っている貴方はうんうん頷きながら読んで欲しい。ネタバレが嫌な方は、冒頭でバトル結果を暴露してしまって申し訳ない。かくいう私も、アニメのポケモンは見ていても、ゲームのポケモンはやったことがないし、ポケモンGOも途中で放り出した。ポケモンの個別の名前なんて図鑑を見ても覚えられない。それでも、アニメ放映4週にわたったダンデvsサトシの決勝戦は手に汗握って応援して、最後の神作画と神演出でボロボロ泣いた。これまでにサトシと一緒に戦ってきた歴代のポケモンが気を失いかけたピカチュウを励まして、初代オープニングソングの「めざせポケモンマスター」が流れるなんて、子供ではなくその親世代を狙いにきてるとしか思えない。サトシとポケモン達を迎え撃つダンデ勢も、ポケモンとポケモンバトルをこよなく愛する好青年であり、10歳のサトシにも一人前のポケモントレーナーとして接する誠実さが実に良かった。子供が憧れる大人とはダンデさんのようにあるべきだ。
そう、サトシはまだたったの10歳なのだ!
アニメのポケモンの世界は、サザエさんと同じように時間は過ぎても登場人物は歳を取らない。サトシは25年間ずっと10歳のままだ。でも彼は子供ではなく、一人前の社会人として扱われている描写が多くある。アニメのポケモンの世界では、10歳になると自分の責任でポケモンを飼育し、ポケモントレーナーになることが出来る。ポケモンは力が強い、賢い、空を飛べるなど、優れた特徴を持つ多様な種がいるので、ポケモントレーナーはポケモンと一緒に仕事をして生計を立てているのだ。たった10歳の少年が、ポケモントレーナーを目指して親の庇護を離れて独り立ちする。サトシが最初に出会ったピカチュウは、ポケモンなのにポケモンを収容できるモンスターボールに入ることが嫌いで、序盤のサトシはピカチュウと心を通わせることに苦心するのだ。そこから生まれる友情や絆、たくさんのポケモンを統率するポケモンバトルに見られるリーダーシップ論などは、すでにそんなテーマでたくさん本が出ているので割愛する。
25年間10歳のサトシ。彼の夢は「ポケモンマスター」だが、その通過点にワールドチャンピオンはある。サトシは25年の間に様々なリーグのバトルに挑む。最初の頃は何戦か勝つのがやっとだったが、少しずつ成績を上げていった。ポケモンのアニメが25年間毎週放映されたとして、一日一話としても三年半は経過したことになる。ポケモンの世界が年を取る世界だったら、サトシは10歳のあどけない子供から14歳の凛々しい少年へと成長していたはずだ。ワールドチャンピオンシップで見たサトシは、私がかつて中学生の頃に見ていたサトシよりも一回りも二回りも成長して、たくさんの冒険とポケモンバトルを勝ち抜いてきた経験と自信に満ち溢れていた。アニメの作画にすぎないといえばそうなのだが、ピカチュウに嫌われてオロオロしていたサトシを思い出すと、その成長に胸を打たれずにはいられない。
25年、中学生だった私は就職して結婚して二児の母になった。高校に入る頃にはとっくにポケモンのアニメを見なくなったが、上の息子がポケモンに興味を示すようになってからまた見るようになった。驚くべきことに、声優は交代せずにずっと同じ人が演じ続けていて、ほっとする一方、記憶よりも声に老いを感じるキャラクターもいてショックもあった。そりゃあそうだ、私だって25年前の声と同じかと言われたら全然違うだろう。そもそも作画スタッフだって全て入れ替わっているはずだ。なんなら現場で実際に作業する人たちの中には、子供の頃にポケモンアニメを見ていた世代がいてもおかしくないのだ。いや、そうだとしか思えない。サトシの優勝を単なる優勝ではなく、25年間の旅の終着点の一つとして温かく描くことができたのは、ポケモンを愛する人たちの手によって仕上げられたに違いない。ポケモンを愛する人たちがポケモンのアニメを作ったからこそ、2022年11月11日、サトシ優勝の瞬間を「ニュース速報」として渋谷の大ビジョンで報道したのだ。何かの商品をPRするわけでもない広告の打ち出しに予算を割けるのは、ポケモンを愛し、サトシを応援してきた制作陣が、サトシを祝福する気持ちを最大限に表現したということではないだろうか。ネットニュースではサトシ優勝の速報をみた人たちが、サトシを褒める様子を取り上げていて、私も見たかった! ととても悔しくも嬉しかった。
優勝カップを持って嬉しそうに笑うサトシを見ていると、ポケモンの世界では10歳で独り立ち、ということについて、つい考えさせられる。サトシの友人やライバルとして同年代の子供たちが登場し、みなそれぞれ自分なりの目標を掲げてポケモントレーナーをやっている。時にはポケモンとの向き合い方や進路について思い悩みもする。その様子は、現実の世界で子供たちがこれから直面するであろう、進学や就職で思い悩む姿に似ている。アニメの中で、幼い筈の登場人物は、それぞれ悩みつつも一歩ずつ成長して乗り越え、自分が進むべき道を決めている。その「子供だけど大人」の様子は、大人の目線からは微笑ましく、子供の目線からは頼れる先輩のように見えるのではないだろうか。
私より下の世代と接していると、底抜けの明るさのようなものに羨望の気持ちを感じることがある。世間にはいろいろな選択肢があって、自分自身が好きなものを選び抜いていく、彼らは私たち上の世代よりもそれに長けているように思われる。世代全体の教育の方針もあるかもしれないが、彼らがゲームの世界でポケモントレーナーになり、たくさんの取捨選択をしてきたことも、良い因子として働いているような気がしてならない。
アニメのポケモンでは、ポケモンパンのCMが合間に流れる。第一パンの25年に及ぼうロングセラー商品で、ポケモンシールが入っているため子供に人気だ。CMでは、かつてポケモンが大好きだったお父さんが息子がポケモンシールを見て大喜びする姿に、自分もそうだったよなあ、としみじみ頷いている。かと思いきや、お父さんのパンからは幻のポケモンといわれるミュウのシールが出てきて、子供よりもはしゃいでコミカルに踊り出してしまう。私はこのCMが好きで、お父さんが踊り出すと、息子と娘と一緒に私も踊っている。やっぱり好きだぜポケモンパン。親子で好きだぜポケモンパン。やっぱり、私はポケモンが大好きなのだ。
サトシ、25年間あなたはずっと頑張ってきたね。25年前は私が、今は息子が見ているよ。娘もピカチュウが大好きで、ニコニコしながら応援していたよ。
サトシ、優勝、本当に本当におめでとう!!!!!
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