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学生時代は変人だった私が普通の大人になってしまった


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記事:ハタナカ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
どうしてこんなつまらない大人になっているのだろうという実感に苦しみながら26歳を過ごしている。
仕事を辞めて専門学校に通い始めた年上、研究者になる為大学に残って勉強を続ける同い年、アルバイトでお金を貯めて海外で勉強しに行こうとしている年下……他にもいっぱい挑戦をしている人、あるいは自分が全力で楽しめることに打ち込んでいる人が身近にいる。凄いな、と思う。
今の私は何かに本気でいるわけでもなく、熱心に何かを楽しんでいるわけでもなく、ただ普通に生活している。正直決して不幸な立場にいるわけではない。でも、ただぼーっと、退屈だなあと感じる時間が増えている実感は確実にあって、歳を重ねるごとにそれに対する恐怖心が、今この時を全力で生きている同年代を見ると猛烈に増していく。
周りと比べたって仕方ない。周りの人達だってそれぞれその人なりの悩みを抱えている。自分だって何も頑張っていないわけではない。
……そんなことを頭では分かっていて、だから大体は大丈夫でいられるのに、時折どうしようもなく不安になるのだ。
 
でもこうした実感は今に始まったことではない。私は思春期の頃も、それよりもずっと前からこんなかんじだった。違うところと言えば、当時は真逆の「普通になれない」で悩んでいたが。
学生時代の私は良くも悪くも目立つ人間だった。兄の影響で小学生の頃は男の子っぽい趣味になり、でも学年が上がるにつれ男子と遊びづらくなり、かといって女子の輪にも馴染めず、随分悩んだ。
少年漫画や男の子っぽいゲームが好きだったが、私が始めた習い事であるバスケはいわゆるギャルっぽい女子しかおらず、全く馴染めなかった。一生懸命普通の女子っぽくなろうとしてもやはりどこかずれていて、それしか知らないまま学生時代を過ごしたから、結局大学生まで変わり者という扱いが当たり前だった。
 
それなのに、大学を卒業した途端、ただの当たり障りのない自分になった。そしてそれを苦痛に感じている自分がいる。
どうしてそうなったと感じるのだろうと、自分なりに考えて分かったことがある。
即ち、大人になるとちょっと周囲に馴染めない程度じゃ「変わり者」にはなれないのだ。
これは私の経験則だが「どこからどう見ても普通の人」というのは、むしろほとんどいない気がしている。初対面では無味無臭に感じる人も、少し深く知っていくと大抵どこか極端な思考を持っていたり、自分には理解できない価値観を持っていたりする。でも大体の人は「普通の人」のフリが上手で、「普通の人のフリ」さえ出来れば「普通の人」になれるんじゃないかと、そう思うようになった。嫌でも内面が暴かれてしまう学生時代の狭くて密なコミュニティでは「普通のフリ」だけでは足りないけど、仕事上や関係の浅い者同士の大人は、ひとまずはこれで足りてしまうのだと思う。
私自身は「変わり者」扱いされていた頃からほとんど変わっていないのに、周囲からの扱いが「普通の人」になっていると感じるのは、これが理由なんじゃないかと結構本気で思っている。
 
さて、問題は大人になっても「変わり者」でい続けられる人達の存在である。
「普通の人」のフリがそもそも出来ない極端な言動をするような人はともかく、大人になってから真っ当でいながら「変わり者」になるハードルはとても高い。そのハードルを超えて自分だけのゴールの為に周囲の普通とは違う道を進む人は、少なくとも私には昔から凄く魅力的に見えていた。
そして私も学生時代までは「変わっている」って言われ続けていたから、何となく自分もそうした人と同じになれるんじゃないかと思っていた。でも実際は全然違った。
学生時代の私みたいにちょっと言動が珍しいという理由ではなく、自分の意志で自分の道を選べる人は能動的で、受動的な私とはそもそもの「変わっている」の性質が違っていた。何となく生きているだけではなれない存在だからこそ、今の私は「普通」になっていることが悩みになっている。
 
勿論、自覚はあるからこそあれこれ勉強したり行動したりもしている。このライティングゼミだってそうだ。書くことに興味があったから始めた。実際もっともっと書いてみたいという気持ちも存在している。
それでも、じゃあとんでもなく行動しているかと言われればそうでもなくて、何となくで過ごす日も多くて、そうした時に今を充実させてイキイキしている人達を見かけるとやはり落ち込んでしまう。
 
だけど落ち込んだり悩んだりすることをやめてはいけないとも思っている。今の私にはなりたい自分があって、それになろうと背伸びを頑張っているから苦しんでいるのだと思う。言ってしまえば成長痛だ。それすら感じなくなってしまったら、きっともっと自分がつまらなくなってしまう気がしている。
自分が何かになりたいと思っている限り、この成長痛は付きまとうのだろう。「普通」になれなくて長年苦しんでいたのと同じように、「変わり者」になれなくて苦しんでいる今の自分がいるから。
だから学生時代とは少しだけ形の変わった今の成長痛に真正面で付き合っていくしかないのだろう。日々不安でいっぱいで、正直自信なんてないが。出来ればちゃんとその痛みに見合った成長をしていたらなと思っている。
 
 
 
 
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2023-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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