ハムより薄い女の友情って言いだした人天才!
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記事:小川りか(ライティング・ゼミ4月コース)
「ハムより薄い女の友情」という言葉に聞き覚えのある人も多いだろう。
この言葉で私が思い出すのは、高校時代のことだ。歳がばれてしまうが、敢えて時代背景を語りたいので、言っておこう。1985年前後のことだった。
当時、仲良くしていた友人が二人いて、3人でよく遊んだり、家に泊まりに行ったりもしていた。そんな中で、3人で出かける約束していても、唯一彼氏のいるMは、当然のようにドタキャンをしてくることが何度かあった。
「あ、ちょっと別の用事入ったし、ごめん。ふたりで行っといて~」
という具合だ。そのたびに、呆れつつもう一人の友人Yと、
「はいはい。どーせ彼氏には敵いませんよ~だ。所詮、女の友情なんてハムより薄いですからね」と、目を合わせて苦笑したものだ。
この女の友情が「ハムより薄い」理由やその対処法など、ネット上でもいまだ多く語られている。つまりは、ここに女同士のつながりや絆を友情ととらえるときに起こる何かしらの違和感があるのではないかと感じるのだ。
それが、なぜか今になって、このタイミングで思い出されたことに意味がある気がしてならないのだ。
さて、この女の友情って、そもそも彼氏ができ、結婚となったとき、ライフステージが変わったり、環境が変化したりで、共感を共有しにくくなると保持しにくい。ということは、いろんな諸説にも解説されている。
女の立場から、それは間違っていないことは無論、言うまでもない。間違ってはないのだが、ちょっと私には違和感があるのだ。それは、友情という概念なのかもしれない。この目に見えない友情というつながりや絆のようなものを、子ども時代のオトモダチ的な感覚でとらえる違和感とでもいおうか……。
女性のほうが環境に柔軟に対応できる生物で、多くの方が経験しているような結婚や出産、子育て、仕事といったことに向き合う頻度が高くなるのは、自然なことといえる。そのステージごとに、人間関係を調整したり、増やしたり減らしたりして、自分の最適解を見つけることは、案外男性より得意ではないかと思うのだ。つまりは、ライフステージに合わせた最適解のために、友情を足かせのように捉えず、適宜調整しやすいマインドにするための考え方なのかもしれない。ヒトとして、敢えて容易にひっくりかえせる関係性でゆるっとつなげておくのが、前提だとしたらどうだろうか? 薄情という意味の薄っぺらいことにばかり、フォーカスしすぎではないのかと、ちょっとうがった見方をしてしまうのは、私の悪い癖かもしれない。でも、新しい見解をどうしても提案したくなっているのだ。
そもそも、この言葉はいつどこで使われ始めたのだろう? 私のリサーチでは限界があり、現段階では1975年頃のテレビドラマ「傷だらけの天使」の中のセリフという説がある。しかし、聞きなじんでいるのは、2011年頃のテレビドラマ「私が恋愛できない理由」の中でのセリフであり、そこから浸透したと見られている。どちらにしろ、時代背景がカギではないかと感じている。
何故なら、2011年のドラマが発祥では、1985年にそれを会話で使っていた私たちの話がちょっと不思議なことになる。また、この1980年代後半から皆さんご存じの日本経済のバブル期がくる。このバブル期の象徴は、「短い」「軽い」「薄い」といった重厚さと反対のものがもてはやされた時期でもあったように思う。流行のあれこれに「短い」「軽い」「薄い」が付加価値的に付いているとすれば、そういうキーワードのものが流行とともに拡散するのは、なんとなく理解できる。
さらに言えば、1981年に「超薄切りハム」が販売スタートになったのは、技術の進歩もあるが、流行の中で必然性をもって出てきたように今となっては思うのだ。薄い友情がさらに薄くなったといいたいわけでは決してないので、念のため……。
そんなバブル期のイケイケどんどんという時代背景を以てして、敢えて何故ハムだったのか? 私はどうしてもそこが気になるのだ。
薄っぺらいことを表現するだけなら、紙切れや薄布でも良かったはずだ。そこを、ハムを例えで使う意味とは?
もう少し、ハムについてみてみよう。ハムって、肉をつぶして風味をつけ燻製してと、かなりの手間暇をかけた食品なのだ。厚切りだろうが薄切りだろうが、ハムとしての商品価値が出るまでの工程は、等しく手間暇かかっている。
さらに、生ものでもあり、加工品だけれど傷みやすい。さらに言うと、その手間暇の熟成により、うまみも増しているはずなのだ。そして、この加工品は、厚みや形も変形でき、調理法も様々に対応できる優れものでもある。
そう考えて、はっとした!
無機質の紙や布では、表現ができなかったと考えれば、ハムと言った理由は、ひとえに ①生もの ②手間暇かけている ③(調理法も)変幻自在 そして、④食品ということが理由ではないか?
もう少し丁寧に話すならばこうだ。
女性のライフステージに合わせた最適解の人間関係のために、友情と思しき関係をうまく調整していくことを表現したとすれば、ハムであることが絶妙なのだ。そこに至るまでの関係は、関係を紡ぐ手間暇ももちろんかけてきた。それに、人間関係はやはり生きてる限りナマモノだと私は思っていて、そういう意味での生もの観も当てはまる。さらには、薄くても重ねることで味わいもうまみも増すし、食べ方もいろいろ変えられるってことは、薄いかもしれないけど、お互いの状態に合わせて、その友情すら形を変えてつながれる可能性を指しているのではないか?
薄いことにばかりフォーカスして、ハムを見てこなかった視点かもしれない。私の勝手な解釈ではあるが、そう思うとなんだか新しい女の友情のあり方を見つけたみたいでちょっぴり清々しい気もする。
そして、ハムという食品を例えに使った最終型は、腐る前に食べてしまえば、おしまい! で、誠に潔いのだ。
多くの女性たちが、妬みや裏切りなどというネガティブな関係性に悩んでいるもの事実だろうが、ちょっとその「薄さ」より「ハム」であることに、目を向けてみてはいかがだろうか?
初めに、ハムより薄い女の友情って言いだした人、ある意味天才!
それに気づいたのは、親友Mが居たからに他ならない。感謝!
***
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