メディアグランプリ

子育てのプロに教わった「こじらせない」という呪文


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:パナ子(ライティング実践教室)
 
 
何かのプロだという人にお話を聞く機会がある時、どんな事を教えてくれるのだろうかという期待が半分、仮に話が面白くなかった場合は志村けんが発動して「なんだちみは」となってしまう事もある。
 
次男が通う幼稚園のお誘いで育児に関する講演会に出席した際、「もっと話を聞きたい」と思わせたのは、次の言葉が講師の口から出た時だった。
 
「タラちゃんがぐずってるところって、見たことあります?」
もちろんこれは国民的アニメ、サザエさんの子供タラちゃんのことである。
 
そう、タラちゃんはまだ3歳という若さながらぐずらないし、きちんと言葉での応酬ができる。とんでもなくおりこうさんなのである。
また家事をしてくれるフネさんの存在など、サザエさんが恵まれた環境で自由にのびのびと育児を楽しんでいるのに対して、現実は母親が孤独な環境で1人家事育児を担っているパターンも少なくない。
講師は「みなさんの状況はサザエさんが放映され出した約50年前に比べると過酷なのです」と続けた。
 
今回の講演会は「CAP」というプログラムを中心に子育てのスキルについてであった。
Child Assault Prevention、子供への暴力防止の頭文字を取っている。私も初めて知った言葉だったのだが、このプログラムは子供がいじめ・虐待・性暴力などさまざまな暴力から自分の心と体を守るものである。
 
さまざまな暴力から身を守るためには、自分が「主軸」でいられるという事が一番重要なのだそうだ。自分が主軸でいられると、何か不快感を覚えたり傷つけられそうになった時に、ギョッとして違和感を抱く。このギョッとする感覚が非常に大事だと講師は言う。
 
川魚も間違って海に放たれれば、急いで川に戻ろうとするだろう。人間もそういう感覚を磨かなければならない。
 
違和感を覚えなければ(こんなものなのかな)と相手に従ってしまったり、(自分が悪かったのかな)と自身を責めてしまうこともあるという。
 
この感覚は「自分には選択肢がある」と思える場面の数々で養う事ができる。例えば小さい子供が「イヤ!」という。親は「イヤじゃないでしょ!」と言わずにいったん引く。そうすると子供は自分の「イヤ」には意味があるということを覚えるのだそうだ。またいくつかの選択肢の中から何かを選ばせるのも有効で子供は幸福感を感じやすい。
「朝食は、ごはんにする? パンにする?」
「デザートは梨がいい? ブドウがいい?」
 
こんなささいな事でいいのだが、実際子育てをしていると毎回子供の要望を聞く余裕はなく、つい「あれしなさい!」「これしなさい!」のオンパレードであったことを鬼母は顔を赤らめながら反省した。
 
さらには、「主軸」に必要な情緒の安定に役立つポイントも幾つか教わったのだが、その中でも特にやってみたいと思ったのは「ケンカの仲裁方法」であった。
下の子が上に泣かされる、それを見た母が上を怒る……これが最悪のパターンという事を私は学んだ。正直ドキッとした。何度もやった事があるからだ。
 
講師が言うにはまず誰かが何かを訴えてくるまでは、こちらから無闇に間に入らない。下の子が泣いて訴えてくれば「そうかそうか」と聞くし、上の子が「だって○○が!」と訴えてくれば「なるほどなるほど」と聞く。すると子供たちは自分の意見が聞いてもらえた安心感で心が落ち着きやすいというのだ。
これは是非試したい。鬼母の名誉挽回となるかもしれない。
 
(はぁ~ケンカの仲裁したいなぁ)とよからぬ希望を抱きつつ帰宅すると、光の速さでそのチャンスは訪れた。
兄弟の言い争う声が大きくなるにつれて(よしいいぞ、こい!)と内心は思いつつも素知らぬ顔をしてその時を待った。
「うわぁ~ん!!」と泣いてこちらに抱っこをせがみに来た次男。
(ほいきた!)とばかりに抱き上げる。
「○○ちゃんにたたかれたぁ!」
次男がつたない説明で自分がされた事を私に報告してくるのを「ほうほう」と聞く。すると長男もこっちに近寄ってくるではないか。(チャンス到来!)とばかりに、私は長男の声にも耳を傾ける。
「だって、○○が悪いんだよ。先にちょっかい出してきたから」
その訴えも「はぁ~なるほど。そんな事が」とひたすら聞いた。
 
しーん……。
えっ!? なにもう終わりなの!? 明らかに二人がトーンダウンしたのがわかった。さっきまであんなにヒートアップしていた二人なのに、信じられない。
 
するともう一つ奇跡的なことが起こった。
ケンカのあと少し離れていた二人がじりじりと距離を縮めだしたのだ。
「じゃあさ、これしてあそぼうよ」長男の誘いに「うん」と応じまた二人は仲良く遊び出した。
 
これもまた自分たちで何かを選んだという結果なのだろうが、一番よかった点は母である私が無駄にエネルギーを使わなかったことだ。
 
講師は言った。
「100%の育児なんて出来ないし、目指さなくてもいいです。最大のポイントは『こじらせない』ことなんです」
 
どういった場面でも、親の方は肩の力をなるべく抜いて、子供の気持ちを丸めるお手伝いをする。それがこじらせない秘訣だという。
私は今まで何にでも口を出し、誰得の「お母さん劇場」を開催していたのかもしれない。
「あらまー! すごいじゃない!!」とミュージカル俳優のように褒めてみたり、「くぉらー!! 何しとんじゃい!」と鬼ババアになってみたり。
 
誉める時でも大袈裟にする必要はないし、また一生懸命向き合うあまり怒りの沸点が低くなってしまうことも、子供の気持ちを丸めることには繋がらないということだ。
 
満点を目指さなくてもいいと言われなくても、到底育児の100点は取れそうにないが、それでも子供が「主軸」になれるよう少しずつでもお手伝いができたらいいなと感じている。
 
これからは一休さんが「あわてない、あわてない」と唱えるように、私は「こじらせない、こじらせない」を合言葉に子供を育んでいこうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2023-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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