メディアグランプリ

今の子どもたちには、選択肢が多すぎると思う


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記事:おまど(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「来年、小学校にあがるから、今年はラン活しないと! って家で話してて……」
「え? もう小学生? 人の子の成長で自分の年を実感するわーーー」
 
ラン活とは、新1年生になるわが子のために、保護者がランドセルを購入するための活動のことを言うらしい。
小学校の6年間を通して使い続けるランドセル。
子どものために、できるだけよいものを! という保護者の思いが、ラン活という言葉を生み出したのではないだろうか。
 
デパートや大きなショッピングモールに行くと、理路整然とランドセルがズラっと並ぶ。
その前で、キラキラした目をしながらランドセルを見る少女と、その姿を微笑ましく見つめるおばあさんとおじいさん。
店員さんの説明を真剣に聞く母らしき人と、身体に対して大きすぎるランドセルを実際に背負う自分を鏡越しに真剣に見つめる少年。
次の春は小学校にあがるんだなぁということが、その光景からひしひしと伝わってくる。
 
私がその姿を見ながら一番感じたことは、ランドセルの色の多さである。
私が小学生の頃は、「男の子は黒、女の子は赤」と当然のように色が決まっていた。
自分自身も、それに対して何も感じなかったし、そういうものなんだと思っていた。
それが今は、ブルー、グリーン、ブラウン、ピンク、パープルなど、絵の具を思い出すような色とりどりのラインナップである。
他にも、くすみカラーなる「○○っぽい色」も人気らしい。
今は、自分の好きな色をオーダーメイドできるメーカーもあるとか。
「白って、200色あるねんで」という言葉のように、ランドセルの色もそれぐらい、いや、もっとあるかもしれない。
登下校の小学生たちの姿を見ると、私の時代の赤や黒は少数派なように感じる。
 
「ランドセルって、安いものじゃないし、子どもの意見と親の意見って本当に食い違うねん」
「ランドセルって、いくらするん?」
「安くても4~5万くらい……」
「え? そんなにするん?」
「高かったら、10万近くするで!」
友だちと話していると、親って大変なんだなぁとつくづく実感する。
 
「娘は、パープルがいい! って聞かへんのやけど、6年間使うものやんか……。 途中でこの色嫌い! とか言って持たへんくなったらどうしようって思ってて……」
「それだけ高かったら、究極の選択やな」
5歳、6歳頃の子どもに、6年間持つランドセルの色を選択させるって、なかなか難しいなとその時に感じた。
しかも今の時代、ランドセルを買うのは、だいたい入学する1年から半年前らしい。
そのときに買ったランドセルを入学式の前日に、「やっぱりこの色、嫌!」など言われたら……と考えると、購入前に家族会議をすることにも納得できる。
 
私は中学校の教員をしている。
今年度は3年生を担任していたので、この1年は進路について生徒、保護者とたくさん話してきた。
「先生、この子、どこの高校行きたいの? って聞いても、わからへんばっかりで……」
「この子に、どんな高校が合っていますか? この子自身も、わからないみたいで……」
「この間、一緒にオープンスクールに行ったのですが、理由も言わずに、ここは嫌! としか言わないんです」
年に3回ある三者懇談では、保護者の方の焦りをたくさん聞いてきた。
生徒にとって、9年間の義務教育を終え、その先の進路を自分で決めていくことになる。
今までは、住んでいる地域によって通うべき小学校、中学校が決められていた。
しかし、中学を卒業すると、急に「自分の好きな進路を選んでいいよ」と言われる現実。
自分のしたいことや将来何になりたいのかがよくわからない生徒にとって、おそらく人生で初めての最大の選択だろう。
やはりここでも感じるのは、選択肢の多さである。
 
確かに、「自分の行きたい学校を選択できるんだよ」という言葉は聞こえはいいが、15年しか生きていない子どもたちにとっては、中学校を卒業してからの3年間を、どこで、どのように生活するのかを決めるのは少し酷なように感じる。
そう考えると、「どの高校に行きたいの?」に対して、「わからへん」という答えは、自然なことだと思う。
保護者の方にとっても、入学金や制服代、諸経費など考えると、途中で「この学校合わへんし、もうやめたい」なんて言われたらと思うと、必死になるのも当然である。
まさに、ラン活と同じだ。
 
今の時代、多様性といわれ、選択の幅がどんどん広がってきていると感じる。
私たちの時代にはなかったものがどんどん増え、大人も、この社会も、日々の選択に追われ、そして迷っているのではないだろうか。
そんな時代に、きっと、私たちの子どもの頃の2倍以上の選択肢から、「自分」を見つけようとしている今の子どもたち。
その子たちが発する「わからない」という言葉に寄りそい、その答えを一緒に探していくことが、私たち大人のするべきことではないだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2024-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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