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手帳売り場で婚活したらハーレムができた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中村はるみ(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

9月、今年も祭りの季節がやってきた。
手帳祭りの開幕である。
毎年恒例のパートナー探しが今年も始まった。
 
9月になると、書店や文具売り場に来年の手帳コーナーができる。
ずらりと並んだ手帳達を見ているだけで心が躍る。
大きさもデザインもさまざまな手帳達は、食べ放題のテーブルに並ぶケーキのようだ。
食いしん坊な私は、とりあえず端から端まで味見するように中身を確認していく。
 
見た目だけでなく、内容も確認する。
マンスリーの枠の大きさ、ウイークリーの時間軸、余白の有無などは重要ポイントだ。
サイズ感はもちろん、重さや製本方法にもこだわる。
まるで一生もののコートを選ぶかのように、慎重に。
 
大好きな手帳を前に、にやけそうな顔をぐっと引き締め、冷静なふりをして見て回る。
ライブ会場で“推し”が動くたびに嬉しい悲鳴を上げる熱烈なファンのように、心の中ではページをめくるたびに興奮のボルテージが上がっていく。
 
紙質も大事だ。
ケーキでいえば味の基本となるスポンジだから気を抜けない。
毎日書く手帳だからこそ、書き心地にもこだわりたい。
書き心地や手触りも重要なポイントである。
 
何度も手帳売り場に通い、「君に決めた!」と思えるまで、あちこちで手帳を見比べる。
ここ数年は手帳ブームとあって、どの売り場も比較的大きなコーナーを作ってくれる。
しかも各売り場には特色があるので、雰囲気の違いを楽しむカフェ巡りのようなワクワク感も味わえる。
 
シンプルなビジネス系手帳が得意な売り場、個性的なワーク付き手帳が多い売り場、著名人や手帳オタクの個人が作った手帳が豊富な売り場など、時間を忘れて歩き回る。
 
その手帳を使っている未来の自分や暮らしを想像する時間が好きだ。
実際、手帳を使い始めてから無駄な時間が減って、自己肯定感が上がり、幸せや充実感を味わう時間が増えた。
新しい手帳で幸せな時間をもっと増やせるはずだ、と期待をふくらませる。
 
 
私は手帳をこの上なく愛している。
 
「俺と手帳と、どっちが大事だ?」と旦那さんに聞かれた時、「手帳!」と即答した。
そんな私を笑って許してくれる旦那さんも、人間というグループの中なら世界で一番愛している。
 
なぜ、そんなにも手帳を愛しているのか?
手帳は私を成長させてくれるものであり、毎日の暮らしになくてはならない人生のパートナーだからだ。
 
まず手帳は有能な執事である。
スケジュール管理だけでなく、予定がない時間をどう過ごすかの相談相手にもなってくれる。
ボーっと過ごすもよし、隙間時間を見つけてカフェで休憩するもよし。
どんな要望にも、最適な時間デザインを提案してくれる。
おかげで「今日も充実した一日だった」と思える日が格段に増えた。
 
そして優秀な秘書でもある。
ダイエットや習慣化など、中長期のチャレンジや計画を常に把握し、進捗状況も一目で教えてくれる。
おかげで予定より早く目標が達成出来たり、的確に計画を修正できたりした。
 
日記やジャーナリングで自分の気持ちを書いている時は、頼りがいのある上司になってくれる。
どんな辛い気持ちも受け止めてくれ、私の気がすむまで何時間でも話を聞いてくれる。
話し続けているだけで癒されたり、解決策が見つかったりしたこともたくさんあった。
 
好きなものや夢を手帳に書き続けていると、自分がどんな事に興味を持っているのか、どんなものに癒されるのかを教えてくれる親友になる。
私のことを誰よりも親身になって考えてくれるし、客観的に見てくれるからアドバイスも適格だ。
 
さらに書きためていくと、自分の価値観や思考パターンといった内面まで、私以上に私のことを理解してくれる優しい彼氏にも進化する。
しかもこの手帳という名の彼氏は、どんなに黒い部分を見ても絶対に私を嫌わない。
安心して自分が自分でいられる時間をくれる。
 
日々成長して、自分の強みや才能を活かし、自分らしく生きたいと考えている私にとって、手帳はただの時間管理ノートではない。
幸せな人生を送るために、自分と毎日の暮らしを充実させる人生の必需品である。
 
手帳選びは、人生のパートナー選びと同じだ。
ならば手帳売り場はパートナーを選ぶ婚活の場である。
使いにくいフォーマットや書きにくい紙の手帳を選ぶと、日々の暮らしでストレスがたまる一方だ。
最悪の場合は離婚して、新しい手帳を買い直す羽目になる。
幸せな未来を夢見ながら、妥協することなく慎重に手帳を選ぶのは当然である。
 
イケメンで家事全般をこなし、優しくて高給取りのスパダリ(スーパーダーリンの略)なんて、人間の世界でもそうそういない。
手帳の世界も同じだ。
 
毎年、本命の一冊を探そうと試みてはいる。
しかし手帳を書く目的がたくさんあるため、一冊で全てを網羅できるフォーマットは存在しない。
 
そのためスケジュール管理はこの手帳で、想いを書くジャーナリングはこっちの手帳で、ダイエットの記録はこの手帳で、と複数の手帳を買うことになる。
 
今年こそは絶対に一冊に絞る!
そう決意して手帳売り場を渡り歩いた。
 
でも、あの見開きウイークリーは捨てがたい。
この欄はダイエット記録にピッタリだ。
こんなフォーマットは初めて見た。
あれも、これも……、結局3冊の手帳を買ってしまった。
 
それぞれに魅力的で、それぞれの書く目的にピッタリ合った内容に思える。
どれも幸せな人生と暮らしには欠かせない手帳達だ。
どれ一つとして欠かせない。
 
プロジェクト管理用や目標達成ワーク付きの、日付を自分で書く手帳も含めたら、6冊の手帳が手元にある。
 
人生のパートナーが6人もいる。
すべて個性的なフォーマットで、得意分野も違うから書く内容も違う。
あぁ、また今年もハーレムを作ってしまった。
 
軽い罪悪感と、それよりもはるかに大きい6人のパートナー達と送る新生活への期待を胸に、ずっしりと重たい袋を抱えながら手帳売り場を後にした。
 
また来年こそは、1冊に絞ると決意して手帳売り場に向かうのだろう。
そう、来年こそは……。

 
 
 
 
***
 
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