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アイルランドのパブから始まる冒険を、また。


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記事:shiho(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
もう一度行くなら、どの国を選ぶだろうか。
 
新年「今年どう過ごすか」をSNSに投稿する人々の姿に触発され、ふとそんなことを考えた。どこか新しい冒険をしたい気持ちと、もう一度あの特別な場所を訪れたい思いが交錯する。ミャンマーのマンダレー、ネパールのカトマンズ、ベトナムのハノイ、インドのバンガロール、アメリカのサンタモニカ……どれも心に残る場所だ。しかし、今再び訪れるならば、やはりアイルランドのコークだろう。その街は、パブが冒険心を掻き立ててくれる、忘れがたい街だった。
 
 
コークを訪れたのは、確か大学3年生のときだ。卒業するために短期留学に行かねばならず、様々な行き先の選択肢がある中で「どこにしようか」と悩んだ私は、「旅行では行かなそうだから」という単純な理由でアイルランドのコークに行くことにした。
 
アイルランドは、イギリス諸島の西に位置し、アイルランド島の大部分を占める国。その南部にあるコークは、首都ダブリンに次ぐ第二の都市である。首都ダブリンは、歴史ある街並みと国際的な雰囲気が特徴で多くの観光客が訪れる一方、コークはどこかのんびりとしていて、より地元の暮らしが感じられる街だった。小さな川が街の中心を流れ、煉瓦造りの建物が立ち並ぶ風景は、素朴で温かい印象を与える。
 
短期留学中は、授業以外は比較的自由で、勉強をする人もいれば、買い物にいく人もいた。すぐに帰宅する人もいれば、ジムにいく人もいた。そんな中私は、パブに行くことにはまった。
 
コークは第二の都市と言いつつもその規模は控えめで、バスで町全体を移動できるほどだった。煉瓦造りの大学キャンパスを抜けて街を15分ほど歩けば、心地よい灯りをともすパブが軒を連ねる。そのため、大学が終わってからパブに集まる人も少なくなかった。たまたま現地で仲良くなった友人もその一人であり、私もつられてパブデビューをしたのがきっかけだった。
 
パブに入ると、ずらりと並ぶビールのタップが目に飛び込んでくる。アイルランドといえば「ギネスビール」が有名だが、地元で醸造された多彩なビールやウイスキーも負けず劣らず美味しい。英語が得意でない私は、タップを指さして適当に注文し、その日の気分で新しい味に挑戦するのが楽しかった。
 
空いた席に腰を下ろすと、近くの客たちが自然と楽器を弾き始めたり、歌を歌い始めたりする。知らない者同士がすぐに打ち解ける、そんなアットホームな雰囲気がたまらなかった。現地の人たちは気さくで、初対面でもすぐに話し相手になってくれる。英語が拙い私にも気軽に話しかけてくれる。ある日、「この街で他におすすめのパブは?」と尋ねると、近くのパブと教えてくれた。店が違えば、並ぶお酒も集まる人も雰囲気も違う。そうやっておすすめを教えてもらいながら、ついつい他のパブへ冒険したくなり、思えば授業を受けた思い出とパブで心地よい音楽とお酒に浸った思い出ばかりだ。
 
そういえば、パブですっかり冒険心を掻き立てられた私は、週末コークを飛び出したこともあった。アイルランドは雄大な自然にも恵まれており、コークからは様々な長距離バスがあちこちへ連れて行ってくれる。その1つが「モハーの断崖」だ。大西洋にそびえ立つ高さ約200メートルの断崖が、なんと8キロにわたって連なっている。晴れた日には遠くのアラン諸島まで見渡せるが、霧に包まれた日の幻想的な雰囲気もまた格別であり、ハリーポッターの撮影地としても知られるように、まるで物語の中に迷い込んだような気分にさせてくれる場所だった。そして、海面から吹き上げる風と潮の香り、断崖から聞こえる海鳥の鳴き声は、新しい冒険の始まりを告げるようだった。
 
ああ、やはり、アイルランドのコークにまた行きたい。毎年「今年はどこに行こうか」「どこを目標にしようか」と考えるものの、気づけば色々な言い訳をして少し殻に閉じこもっている自分がいる。仕事への影響を考えて近場を選んだり、効率を重視して旅行プランをガチガチに固めたり。それも確かに楽しいものだが、あの頃、パブで冒険心を掻き立てられて未知の場所へ飛び出したような、自由な旅をもう一度楽しんでみたい。その気持ちを思い出すためにも、コークに行きたい。
 
大学を卒業してからもう何年も経つ今なら、きっとあの頃とは違った視点で街や人々を見つめることができるだろう。知らない人たちとの温かい交流、音楽とビールに包まれた夜、そして断崖で風を受けたあの瞬間……それらの体験が、今の自分にどんな刺激や感動を与えてくれるのだろう。それを確かめることもまた、新しい冒険なのだと思う。
 
冒険心を忘れずにいるために、そしてその心をもう一度掻き立てるために、再びあの街を訪れてみたい。そして、コークでまた新たな冒険を始めようと思う。
 
 
 
 
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