ちょうどいい。《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:松下広美(プロフェッショナル・ゼミ)
「本気で書きたいこと、書いてくださいね」
その言葉で、私の頭の中はギュッとなった。
頭を、力の強い誰かの手で挟まれて、ギューっと力を入れられたような、そんな感じ。
私に、本気で書きたいことなどあるのだろうか……。
2016年の12月に、ライティング・ゼミの受講を始めた。
最初のうちは、あれも書こう、これも書こうと書き続けた。カメの歩みのようにゆっくりだったけれど、読んでもらえるような文章を書けるようになって、WEB天狼院に掲載されるようにもなった。
ライティング・ゼミ4ヶ月の1期だけでは足りなくて、2期目の受講をしている途中に、ライティング・ゼミの上級クラスであるプロフェッショナル・ゼミ(プロゼミ)のテストを受けてみませんか? と、お誘いを受けた。プロゼミには憧れもあり、直接お誘いをしてくれたのが川代さんだったということもあり、とても嬉しかった。お誘いを受けた数時間後には二つ返事で「やります」と言っていた。
そうしてプロゼミの受講を始めたのが2017年の6月。
毎週2000字を目標に書いていたのが、5000字になった。文字数がただ増えただけではなく、内容も伴わないといけない。最初の頃は、初めて自転車に乗れた子供のようだった。自転車に乗ることが楽しくて、いつまでも乗り続けている子供のように、楽しく書いていた。でも自転車に乗り続けていると、疲れてしまったり事故にあったりもする。毎週の締め切りが苦痛になったり、評価のコメントがトラウマになって、書くことが怖くて投げ出しそうになったこともあった。そんなときは、書けないことをネタに記事を書く。すると、最初は「書けない」と書いているのだけれど、最終的には「書きたい」という気持ちに行き着いてしまう。だからまた、書き続ける。
締め切りの日に記事を書き上げて提出し、ホッと一息ついてビールを飲んでいても、頭の中は「次はなにを書こうか……」と考えている。提出した記事では書き足りなくて、ブログを書いていたりもする。
そういうことを繰り返しているうちに、プロゼミを何期か継続していて、気づけば1年が経とうとしている。
このまま、プロゼミを受け続けていいのだろうか。
ふと、そんな気持ちになった。
プロゼミに新参者でいたときは、緊張感の中で「私がこんなところにいていいのだろうか」と思いながらも、受け入れてくれたことを嬉しく思っていた。継続するうちに、入れ替わりがあり、いつのまにか古株になっていた。少しずつ成長している気はするけれど、爆発的な進化もないまま、いる。
なんか、ぬるま湯の温泉に浸かっているような、そんな気分になった。
そんな気分になっていても、記事を書くときは、本気だ。
面白いってなんだろう。誰がこの記事を読みたいだろう。あのエピソードを入れたら楽しいかな。この部分は漢字がいいのかひらがながいいのか、いやカタカナで書いた方がいいのかも。いろいろ考えながら書いていく。
書き終わっても、結局、私はこんな文章、面白いとは思わない。と、ボツにしたものもある。
最初の一文字が思い浮かばず、1時間くらいパソコンの前に座っていることもあった。書き始めからスムーズに書けることもある。
それでも、四六時中、書くことに専念しているかと言われれば、そうではない。
つい、携帯ゲームをしてしまうこともある。
仕事がバタバタしているからと、言い訳してしまうこともある。
締め切り時間まではまだあるのに、書き上げることができないと諦めてしまうこともある。
そうやって、ふわっとプロゼミを続けていていいのだろうか。
迷っていた。
そんなとき、三浦さんが講義の中で
「本気で書きたいこと、書いてくださいね」
と言っていた。
その言葉は、私の迷いに追い打ちをかけた。
書きたい……書き続けたい、という気持ちはある。チャンスがあれば、書くことを仕事にできたら、なんてことも思っている。
でも、本気で、書きたい! って思うことが、私にあるのだろうか。これが私の軸だと、周りに誇れるものがあるだろうか。
コーヒーカップで、ぐるんぐるん回されて、迷路に放り込まれたような、そんな気分だった。
迷いながらも、次の締め切りが迫る。
三浦さんに、何に適性があるか、と尋ねたときに、「恋愛もの?」と言われ、しかも成就させたらどうか、と言われた。
それを思い出し、「書くしかない」と、書きはじめた。でも、最後まで書き上げることができなかった。それは、クライマックスが決められなかったから。
恋愛経験が乏しいので、成就させようとしても陳腐な結末になってしまう。
これまでだったら、もうだめだと、途中で提出もせずに投げ出してしまうのだけれど、「提出しない」という選択肢を、そのときの私は持っていなかった。書き出しの、いい感じに書けたところまでと、提出をした。
ただ、迷いを払拭できたか、と言われると、そうではなかった。
迷い続けていた。
完全に、迷宮入りをしていた。
「ちょうどいいんですよね」
途中だった記事を提出した翌日、私は天狼院のEsola池袋店にいた。
そこで、スタッフの木村さんと話していたとき、そう言われた。
ライティング・ゼミを始めたのは、『川代ノート』がきっかけだった。
しかし、その先のプロゼミに進みたいと思った理由の一つは、木村さんのような文章が書けたらいいな、と思ったことだった。
まだ私がライティング・ゼミを受けていた頃、木村さんはプロゼミの受講生だった。当時、ストーカーのように木村さんの記事を読んでいた。日常を素敵に描くことができる木村さんの記事を読み、こんな文章を書くことができたら日常がキラキラしたものになるんだろうなと思った。
ただ素直に、憧れていた。
そんな、憧れの木村さんが、私の書く文章に対して
「ちょうどいい」
そう、表現してくれた。
文章のテンションが、高過ぎず低過ぎず「ちょうどいい」と。
地面に染みこむ雨みたいに、じわじわと染みる言葉だった。
届いている人がいる、そう思えた。
本気で書きたいこと、っていうのがなんだろう、と考えるとなかなか浮かばない。もしかして私には「ない」のかもしれない。
だから……だろう。そんな私がプロゼミを続けて、コンテンツを作り続けることをしていていいのだろうかと迷っていたのは。もっと書きたいものがある人に、その席を譲るべきなんじゃないかと思ってもいた。
でも、なぜ書きたいのかと問われたら、伝えたいから、だと答えることができる。言葉で表現することで、私の中を通過したことを少しでも届けたい。
それに、面白い記事を読むと、面白いと思うと同時に嫉妬している自分がいる。私だって書けると、私の半分くらいはそう思っている。
やっぱり、書き続けたい。
なにを迷っていたのだろう。
木村さんのおかげで、迷いが消えた。
目標がまだ先にあることを思い出させてくれた。
もう少し、続けよう。
「ちょうどいい」が、私にとって「ちょうどいい」褒め言葉だった。
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