ゴッドハンドの秘密はまさかの…《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:島田弘(プロフェッショナル・ゼミ)
「それでは21時から1名でご予約を承りました」
とても可愛らしい声だった。
私の記憶では、受付の段階で可愛らしい声の女性が対応してくれたのは
これで2度目だ。
私にはやめられないものがあり、定期的に女性たちからサービスを受けている。
できれば月に2回くらい通いたいのだが、実際は3ヶ月に2回くらいのペースでサービスを受けている。
だからいつも待ち遠しい。
気に入った女性がいると、その女性を次も指名するようにしているが、
おそらくハードな肉体労働と職場環境のためか、
やめていってしまうようで、同じ女性にサービスを受けたことがあるのは3回までだ。
先日、ここ3年ほど利用していたお店に電話をすると、
なんと閉店していたのだ。
前回行った時に、ひょっとしたら張り紙などでアナウンスがされていたのかもしれない。
ただ、私はそれを見ていない。知らなかった。
別のお店を探さなきゃ。
ネットで検索をすると、車で30分ほどのところに
私が求めているサービスを提供しているお店があった。
近くをよく通っていたのだが、そんなところにお店があるなんて知らなかった。
早速予約の電話をかけた。
すると、とても可愛らしい声の女性が対応してくれた。
私の頭の中では一瞬、
「えっ、この女性がまさかサービスをしてくれるのだろうか?」
なんて考えてしまった。
ともかく21時から予約を取ることができて一安心。
準備があるので、20時30分にはお店に到着していなければならない。
余裕を持って出発したのだが、なぜか渋滞していて到着がギリギリになってしまった。
急いで受付に行った。
「21時から予約をしました島田です」
「お待ちしておりました」
間違いない、先ほどの電話の女性の声だ!
見た感じ、好みのタイプだったのでドキドキしてきてしまった。
「これはひょっとすると、ひょっとするんじゃないか?
もしこの女性がサービスをしてくれるのだとしたら、
間違いないこれまでのNo. 1だ」
ただ、これまでの経験から言うと、キレイな女性ほど、
そのサービスが私には合わない傾向がある。
ちょっと心配だ。
準備をしながら21時になるのを待つことに。
あまり人には言ったことがないのだが、
大学2年生の頃から、私の楽しみの1つなのだ。
私の目的はただ1つ、女性からサービスを受けることだけ。
ここには男性しかいない。しかも全員が裸だ。
女性はあと数分で私が入る部屋の中にだけ存在している。
カーテンがあるために、外からは中がほとんど見えない。
見えているのは、ベッドの脚と女性の脚だけだ。
1分前、カーテンの前に立つとカーテンの向こうから
「どうぞ~」と言うやる気のなさそうな低い声が。
「??? まさか男???」
カーテンの向こうには、受付をしてくれた女性とは別の女性が
作り笑顔で迎えてくれた。
「はい、じゃあ仰向けになってください」
言われるがままに仰向けに。
顔に冷たいタオルを置かれサービスが始まった。
まずは右足からだ。
最初の接触。
これだけで私にはわかってしまった。
この女性、間違いない。
テクニシャンである。
私がこれまでに200回近くサービスを受けてきて、
このファーストコンタクトだけでTOP3に入るテクニシャンだとわかった。
力加減が絶妙なのだ。まさにゴッドハンド。
女性がこれほどの力を入れると、
下手な人だと、無理をして力を入れているのが「震え」などによって
私に伝わって来てしまうのだ。
この震えは、サービスを受ける側を不安にさせる要因になる。
だから、気持ち良さを満喫できないのだ。
それがないのである。
バツグンの安定感。
安心して任せられる。
唯一の不安といえば、この力加減を30分維持できるのかな?
ということ。
「はい、ではうつ伏せに」
と促され、自分のお腹の上を確認すると、
今までに見たことがない量のグレーの物体があった。
「これ俺の体から出たの?」
と信じたくない現実。
うつ伏せでの施術がスタートした。
絶妙な力加減は持続している。
私の心配は無用だった。
サービスが全て終わるまで、一切の手抜きを感じない
私の基準からすれば完璧な施術だった。
「このお仕事は何年くらいされているんですか?」
「25年です」
おそらく、日本中探してもこの仕事を25年もやっている人は
ほとんど存在していないと思う。
私は「継続できている理由」を知りたくて知りたくてたまらなくなった。
「25年も続けられるなんてすごいですね。そんなに長くこのお仕事を続けることができているのはどうしてですか?」
思い切って聞いてみた。
すると、
「お兄さん、変なことを聞く人だね。25年もやってて初めて聞かれたわよ。
お客さんの体がツルツルになるのが好きなんだよねぇ。
お兄さんみたいに、こんなに出ると私まで気持ちよくなるのよ」
そういって、目の前にお皿が出された。
「いつの間に?」
私が知らない間に、私の体から出た「アカ」を集めていてくれていたらしい。
「私、どうすればもっとアカをキレイにとってあげられるのかを考えるのが好きで、いつも考えてはそれを試してきました。わかったことがいくつかあって、全力でやってもダメ。でも力が必要でしょ。私が怪力になれば、軽くやったとしてもアカスリには痛すぎるくらいの力を出せるのよ。だから何回も痛くないかを確認するのよ」
「怪力になるって何をしているんですか?」
「筋トレよ。お兄さん筋トレの経験がありそうよね。
アカスリには押す力もいるし、引く力もいるのよ。
踏ん張りのきく体も必要なので、ベンチプレス、
スクワット、デッドリフトっていうのをやってるのよ」
「実は私、筋トレを教える仕事をしているんです。
それぞれどのくらいの重さをあげているんですか?」
と聞くと、信じられない答えが帰ってきた。
「ベンチが60キロ、スクワットが100キロ、デッドは床から110キロよ」
「ジムで有名ですよね?」
「いえ、自宅でやっているんです」
「自宅に自分専用のジムをお持ちなんですか?」
「そうよ。アカスリが上手くなりたくてね。ホームジムを作っちゃったの」
筋トレ談義で、予定より5分もオーバーしての終了となった。
「また来ます」と伝えて、私はアカスリ場を出た。
おばちゃんにとっては、アカスリは何かの競技と同じなのかもしれない。
自己ベストを出すために、アスリートがトレーニングをするように、
おばちゃんは日々、ホームジムでトレーニングをしている。
「このおばちゃん、間違いなく変態だわ」
プロってどこか変態的なところがあるものだと私は思っている。
あー、今までで1番気持ちよかった。
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