おでんは仕事力アップの素
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
藤野終夜(ライティング・ゼミ日曜コース)
「あー。やっと家に帰れる。けど……もうやり残した事はないよな?」
俺の職場である介護施設での夜勤の仕事が終わって、さぁこれから家に帰ろうとした時に、こんな事がいつも頭の中に浮かんでくる。やり残した仕事はないか。入力の入れ忘れはないよな。もしあったら、施設から呼び出しの電話がかかってくる。夜勤明けで疲れて眠いのに呼び出しをくらって、施設にまた行かなきゃならないのは、正直ゴメンだ。夜勤明けは仕事を終えたら、家でゆっくり寝るに限る。だから夜勤明けで家に帰る前には必ずと言っていいほど、最終確認をするのが俺の中で決まり事になっている。施設から呼び出しを受けない為に。家でゆっくり寝る為に。幸い、今のところ施設からの呼び出しの電話はかかって来てないので、一応夜勤の仕事を無事に終えた事になる。やり残した仕事が無い事を確認した俺は自分の車に乗り込んで、溜まった疲労と襲いかかる睡魔と戦いながら、事故を起こさない様に、と何度も自分の頭の中で唱えながら家に帰る事にした。
介護の仕事は今年で勤めて4年目になる。前の仕事である縫製工場を辞めて、勉強して介護初任者研修の資格を取ってから、今の職場で働き出した。最初は初めての介護の仕事で不安や慣れない事も多く、失敗しては上司に怒られて、へこんでばっかりだったけど、日が経つにつれて仕事も覚えてきて、職場の先輩方や利用者の方達ともコミュニケーションを取れるようになった。できる事が何も無いから、という単純な理由で介護初任者研修の資格を取って、今の施設で採用されてから働いているけど、とりあえず今の自分の中では一番長く続いた仕事だと思ってる。そして今でも介護施設で働き続けている。
介護の仕事は重労働の仕事でもあり、精神的にも気を使う仕事でもある。利用者をベッドから起こして車椅子に乗せる時には、利用者と職員の両方に負担がかからない様にしないといけない。でないとお互いがキツイ思いをするだけだし、職員に至っては腰や膝を痛めてしまう事になる。現に腰を痛めて、介護の仕事が出来ない、という理由で辞めていった先輩もいた。そして介護という仕事は忍耐が必要な仕事だと俺は思う。じゃあどんな時に忍耐が必要になるのかと言うと、それは利用者とのコミュニケーションを図る時だ。介護施設で暮らす利用者の多くは、症状は様々だが認知症の方が多い。だから時にはお互いの会話が噛み合わず、コミュニケーションがとれなかったりすると、利用者が怒り出す事もある。この時に決して感情的にならずに、自分の中の感情を上手にコントロールして、介護職員として大人の対応を心がける。その為にも忍耐が必要不可欠になる。他にも色々と気を使う事があるが、それだけ介護という仕事は責任がある仕事なんだと俺は思っている。
じゃあどうして介護という仕事を4年以上も続けられたのかと言うと、それはきっと「おでん」のおかげだと思う。寒い季節には欠かせない温かい鍋料理で、今ではコンビニでも売られているあの「おでん」である。一度は食べた事があるかと思います。熱々のお出汁に入っている卵に大根、こんにゃくに厚揚げ、がんもなど様々な具材があって、人によって好みの具材が分かれるかと思います。じゃあなんでそのおでんを食べた事で介護の仕事が続いたのかと言うと、おでんには仕事力をアップさせる素だからと俺は思う。
例えばよし、じゃあ今日はおでんを作って食べようと思うと、卵や大根といった具材の仕込みをして、鍋に分量分の水とだしの素となる調味料を入れて、具材を入れて火にかけて、沸騰したらアクを取って火を弱火にして、フタをしてコトコト煮続けて、具材に味が染み込んだらようやく出来上がり。さぁ食べよう、いただきます! となると思う。おでんを作るのにここまで手を込んで作るから、完成には長い時間がかかる。でも長い時間をかけた分だけおでんを食べる時には、熱いけど美味しく感じます。
そしておでんを作るのに長い時間がかかる様に、一つの仕事を覚えて自分のものにするのにも同じぐらい長い時間がかかるかと思います。もちろん中には器用な人や、要領の良い人もいるので一概には言えないけど、何も無いゼロの状態からスタートして、仕事を覚えて、何度も失敗して、ようやく一人前になるには長い時間がかかります。その時間の長さはおでんを作るよりも長いかもしれません。それでも、時間をかけた分だけ美味しいおでんが出来るのと同じ様に、時間をかけた分だけ自分の中で少しずつ仕事力をアップさせたら、いつか一人前になれる時が来ると俺は信じてる。
もし仕事に行き詰まった時は、試しにおでんを食べてみてほしい。長い時間をかけて作ったおでんは、あなたの体に染み込んで、あなたの中の仕事力をコッソリとアップさせてくれます。そしたらしめたものだ。明日のあなたは今日よりも仕事がまた一段とはかどるはずだから。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/57289
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。