チーム天狼院

将来の夢はクレヨンでぐちゃぐちゃに描いた虹がいい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木萌里(チーム天狼院)
 
お花屋さんになりたい。
パン屋さんになりたい。
そうじゃなかったら、魔法使いになりたい。
お○魔女どれみのどれみちゃんみたいな魔法使い。
あ、でもお姫様にもなりたいんだった。
どうしよう、いっぱいありすぎて悩むなあぁ。
 
 
まだ満足に文字を書くことすらままならない幼い子どもたちに、「しょうらいのゆめ」なんて書かれた小さなメモ用紙を渡したって、どんな効果があるんだろう。
 
中学生の私も、高校生の私も、大学生で就職活動をしていた私も、「夢」について書いたり語ったりしなければならないときはいつも、幼い頃の夢を思い出していた。
 
「萌ちゃん(私の名前)はいいな、夢がはっきり決まってて」
 
同じ高校で仲良くしていた友達は、可愛いし勉強もできる。
でも、「将来の夢がない」「趣味がない」という嘆きを幾度となく聞いていた。
彼女のように、将来の夢を書け、と言われたら困るという人はたくさんいる。
けれど、幸い私ははっきりと言葉にできる夢というものがあったため、この手の質問にさほど苦労したことはなかった。
もちろん、その夢を叶える、という局面においては非常に苦労しているのだが、その話はひとまず置いておいて。
 
「いやいや。そんなの適当に書いちゃえばいいんだって」
 
そう言いながらも、私は彼女に本当はなんて言えばいいか分からないでいた。
自分は書くことがあるから大丈夫だという余裕から、夢がないという彼女に同情さえしていた。
 
「その、“適当”が思いつかないんだよ〜」
 
まさにその通りだろう。
「軽口叩いてごめん」とか、「大学でやりたいこと見つければいいやん」とか、もはやそんな弁解も口にできない。
だって、将来の夢がない、という人は、この世にたくさんいると思っていたからだ。
 
 
そのある種の信条みたいな考えが若者の真理だと確信したのは、私が天狼院書店でアルバイトを始める前に、とある企業で長期のインターンをしていたときだった。
 
インターンでは、その企業の自社サイトで自分のこれまでの体験やインターンでの学びを記事にしてまだ見ぬ学生に届け、インターンへの応募数を増やすという取り組みがあった。
その記事の中で、よく目にするのだ。
 
「将来の夢がなくても……」
「やりたいことがないという学生へ」
「自分のやりたいことってなんだろう」
 
記事のタイトルにも、記事の内容にも、そんな言葉が並んでいる。
並んでいるということは、実際に多くの若者が、「夢」や「やりたいこと」がなくて悩んでいるということなのだろう。
そういった悩みが特に現れるのは就活中で、私が就活している時も友人の口から、あるいはたくさんの企業の短期インターンで出会った人の口から、何度も聞いた。
まるで「最近肩こりがひどくて……」と肩をさすっている日本中の女性の悩みのように、国民病となって渦巻いている「夢がない」問題。
この問題を意識する度に、私は幼い頃の夢の旅に出かけるのだ。
 
 
幼稚園の頃はお花屋さんになりたかった。
幼稚園の先生が「絵を描きましょうね」と言えば、真っ白い画用紙の上に、必ず一つ以上はお花の絵を描いていた気がする。
 
 
小学校低学年の頃は、秘書になりたいと思っていた。
「なんでそんな小さい子が秘書なんて思いつくんだ」と言われれば、単にオフィス系ドラマかなんかにハマっていた母が「あんた、秘書なんていいんじゃない」と冗談めかして呟いたことが原因だった。
“ひしょ”ってなんなんだろう。
母から教わった漠然としたイメージだけを胸に、小学校で新しいクラスの自己紹介欄に「しょうらいの夢:ひしょ」と書いたら、担任の先生に笑われた。優しく目を細めて。
「鈴木さんならきっとなれるよ」
と言ってくれもした。
 
 
それ以外にも、魔法使いだったりピアニストだったり、司書の先生だったりしたこともあった。
そうして夢の旅に出かけ、現在の「作家」という夢にたどり着いたのは小学校5年生の頃で、頑固な私はそれからずっと将来の夢なるものを変えていない。
 
 
「夢がなくて困っている」という話題の会話が始まったら、友人の間でも、元いたインターン先の先輩、後輩、同期の間でも、私は自ら蚊帳の外に向かう。
時々「どうすればいい?」と相談を持ちかけられたら、なんとなくこう答える。
 
「別に無理して探すことないと思う」と。
 
こう言ったら相談者は絶対に不満顔になる。仕方ない。不毛な相談になって申し訳ない気持ちもあるけれど、実際本当にそうではないかと感じるのだ。
「夢がある」私に言われても説得力がない、と思われるかもしれない。
でも私は、夢なんて堅苦しく考えなくていいと思うのだ。
 
例えば私の今の夢は、物語で人の心を癒したり感動させたりすることだけれど、それ以外にもたくさんある。
 
来年から社会人になるので、一端の大人になって会社では目の前の仕事に真摯に取り組みたい。
会社以外でも、個人的に近所の素敵スポット紹介みたいなメディアをつくってみたい。
最近流行りの珍しい癒し系ペットを飼ってみたい。
いつになるか分からないけれど、結婚してお母さんにもなりたい。
その後は昼間に近所の公園に散歩に出かけて、縁側でひなたぼっこしながらお茶を飲む、可愛らしいおばあちゃんになりたい。
 
 
今もし誰かに「絵を描きましょうね」と言われたら、そんな、もはや夢とすら言えるかどうかも怪しい、けれど確実に叶えたい目標を、どうにかして描いてみるだろう。
幼い頃、クレヨンで「これでもかっ!」とたくさん色を重ねて完成させた虹みたいに。
 
将来の夢なんて、もっとぐちゃぐちゃに描いた欠片でいいんじゃないかと、私はこの先もずっと思っている。
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