夫婦関係がうまくいってないと感じたら建築を思い出してほしい
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:根本 純希(ライティング・ゼミ日曜コース)
「ちょっと聞いてよ! あいつまたやらかしてくれたよ」
「イライラするから、家にいたくない! 遊びにいっていい?」
やらかしたのは友達の旦那だった。どうやら生活が苦しいから始めたかけもちのバイトを
無断で休んでいたらしいのだ。1か月も。
バイト先から友達に連絡が入りこれまで隠れて休んでいたことがばれたのだった。
無断で休む、転職先を決める前に仕事を辞めてくるなど、旦那がやらかしたことはこれまで何度かあって、
また病気が始まった? と思わずにいられなかった。
今日か……今日は4か月前から勉強しているライティング講座の課題をやろうと思っていたのだけどな……。
でもそんなこと言ってらないな……切羽詰まった感じだし……優先順位は友達……だな。
友達はこれまでメールで愚痴を書いてくることはあったが、家まで行くから話を聞いてくれと訴えることはなかった。
これはよっぽどのことだ。今日はゆっくり話を聴こう。
子供2人を連れやってきた友達。まだ下の子は6か月だった。
夜中30分おきの夜泣きで寝不足、家にこもりがちな生活が続いていて、疲れが顔に出ていた。
そんな中追い打ちをかけるかのようにあきらかになった今回の事件
「私はあいつの母親じゃない。一番手のかかる子供みたいなやつなんかいらない」
吐き捨てるように言った言葉と沈黙。だけど小さな子を抱えどうにもできないという苛立ちが交じっていた。
度重なる嘘に旦那を信じる気持ちは無くなっていた。
「余裕がないってきついね」
友達は不安だらけになっていた。生活費はどうなるだろう。自分がフルタイムで働けるようになるには保育所に入れなくては。
待機児童が多いのにすぐに入園できるだろうか。こんな生活いつまで続くのだろう。
不安を集めに集めパンパンになって苦しんでいた。
このままではパンクするかもしれない……僕は少し心配になった。
お母さんの心模様は子供に影響がでる。
どんなに可愛くても余裕が無いばかりに怒ってしまう。余裕があれば優しく伝えられることも感情的になってしまう。
悲しいのは怒られた子供だけではなく、怒ったお母さんも同じだ。かわいい我が子を本当は怒りたくないのに怒ってしまう。そんなことが続けば罪悪感で自分を責めることにもなるだろう。
これは旦那、子供たちのお父さんと少し話した方がいいかもしれないな。
なぜ仕事が続かないのだろう
なぜ嘘をつくのだろう
なぜ本音で話せないのだろう
家族を養うことをどう考えているのだろう
たくさんの疑問が浮ぶが、まずは話を聴いてみよう。
友達を乗せ旦那の待つ家に向かった。
僕は車を走らせながら基礎工事のことを思い出していた。
建築の仕事をしていた父親によく連れて行ってもらった戸建ての建築現場
穴を掘り、底に砂利を敷き詰め、鉄筋を組み、コンクリートを流しこむ。
その他にいくつかの工程を経て頑丈で強固な基礎を造り、その上に建物が建つのだ。
基礎がしっかりしたものでないと、傾いたり、沈んだりして上の建物が揺らいでしまう。
夫婦そして他の人間関係も基礎工事が大事なんだと思った。
安心という砂利を敷き詰め、相手を思いやる気持ちが芯をつくる。
そこに信頼というコンクリートを流し確固たる関係性を築き上げていく。
その頑丈な基礎があれば家族という建物はちょっとのことでは揺らがない。
台風や地震が来ても踏ん張り持ちこたえるだろう。
この家族には基礎に必要な安心・思いやり・信頼が欠けていた。
基礎が弱いから家族という建物はちょっとした風でも飛ばされそうになるのだ。
家を夫婦で例えるなら基礎が夫になるだろう。家を支える役目だ。
そして妻が家。しっかりとした基礎に支えられ家族の帰る場所になる。
隠れている基礎と違い、表に立っている家は、
「きれいな家ですね」「落ち着く家ですね」「人の集まる家ですね」など
人から評価されることがある。
家自体が素晴らしいというのはもちろんあるが、そもそも基礎が揺るぎ無く
支えてくれるから、建っていられるのではないだろうか。
基礎がいいからきれいな家でいられるし、
基礎がしっかりしているから、どっしりと落ち着いた雰囲気の家でいられる。
これは僕の観方と自論だが、妻が輝いていて、活躍している家庭は夫の支えが素晴らしいのだと思う。
家に着くと、申し訳なさそうな顔をした旦那が一人寂しく冷蔵庫から引っ張り出した残り物を食べていた。
僕の家では落ち着かなかったのか機嫌が悪くぐずっていた子供がお父さんをみつけるなり、
できるようになったばかりのハイハイで近づいていく。
抱きあげられるとさっきまでの機嫌の悪さが嘘のようにニコニコしている。
きっとだいじょうぶ。
この子が基礎と家をつなぐだろう。
そう願わずにはいられない。
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