まるで宝探しをしているようで
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【1月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《土曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:わだ(ライティング・ゼミ 平日コース)
「食べ物の好き嫌いが多いなんて親の育て方が悪いんじゃないのか」
どのような話の流れだったかはもう覚えていないが、飲み会の時に上司にそのように言われた。
そんなことはない。反発したことはたくさんあるが、思い返してみても両親は私に対して愛情たっぷり注いで育ててくれた。何も知らない他人に両親を悪く言われたくない。
上司の言葉を否定して欲しくて、母に電話で上司の言葉を伝えてみた。
母はサバサバっと「まあ、そうなんじゃない?」と上司の言葉を肯定した。
そんなこと言わないで欲しかった。私はむしろ苦手な食べ物を食べるように強要しなかったことに感謝しているのに。
私は食べ物の好き嫌いが多い子どもだった。
野菜はカレーに入っていない物は食べないし、フルーツはほぼ全般、甘い飲料水もダメだった。食べれない物より食べれる物をあげた方が早いくらい好き嫌いが多かった。
親戚の集まりの時は苦手な物でも頑張って食べていたが、特定の食べ物に対して口にすると吐き気がしたり、臭いを嗅ぐだけで気持ち悪くなったりしたので、特定の食べ物がメインの親戚の集まりに出なくていいようにしてもらった。
好き嫌いが多いことに対して祖父母からはよく怒られたりしたが母からは怒られることも、食べることを強要されることもなかった。
母に何か言われるとしたら
「大人になれば食べれるようになるよ」
の一言だった。
当時は母の言葉は全く信じられなかった。
口にするだけで吐き気がするのに、大人になったからって変わるわけがない。
怒られないことへの感謝も忘れて心の中では反発していた。
好き嫌い過多状態は高校卒業まで続いた。
この状態が変化したのは大学に入学した時のことだった。
私が入学したのは2011年の震災が発生した年で、一人暮らしだと何かがあった時に不安だったので大学の寮に入っていた。
寮では朝晩で寮母さんが作ったご飯を出してもらっていた。
きっかけは全く覚えていないが、その時何気なく口にした蓮根のキンピラがとても美味しかったのだ。
実家にいた時はキンピラどころか蓮根すら、おべんとうばこのうたを歌う時くらいにしか口にしたことがない。
間違えて食べてしまった。でも美味しい。その時に思い出したのは母の言葉だった。
「大人になれば食べれるようになるよ」
母の言葉が現実になっている。もしかしたら食べれる物が増えているのではないか?
そう思い、食べ物に対する好奇心とチャレンジ意欲が湧いた。
寮で出してもらえるご飯で今まで食べれなかった物が食べれるようになっているかどうか試してみた。
野菜はトマト以外、フルーツは(高価なものは食べる機会がないので分からないが)苺以外食べれるようになっていた。
一気に食べれる物が増えてしまうと食への好奇心が止まらなくなった。
今まで食感が苦手で食べなかった貝類や、豆類にも挑戦してみた。
不思議なことに美味しいと感じるようになっていた。
どうやってでも食べれなかったトマトと苺に対しても、どうすれば食べれるようになるかを考えて試してみた。
組み合わせ次第では美味しく食べれるようになることも判明した。
子どもの頃は大嫌いだった、好き嫌いを克服することが楽しくなった。
このことを母に報告をするついでに、どうして私の好き嫌いの多さを注意しなかったのかを聞いてみた。
「お母さんも子どもの頃好き嫌いが多かったの。
でも、大人になってお酒を飲むようになったり、あなたを妊娠して赤ちゃんに良い物を
食べるようにしたりしていたら、舌が変わったみたいで好き嫌いがなくなったの。
だからあなたもそうだろうなと思ったのよ」
私が好き嫌いを克服できるようになると信じてくれてありがとう。
もしかしたら母にとっては自分ができないことを、人に強要しないだけだったのかもしれない。
でも、そのおかげで食べることに対してトラウマにならずに済んだ。
食べれる物が増えること、食べれる組み合わせを見つけられることがこんなにも楽しくて、嬉しいことだと知ることができた。
苦手意識を感じてしまう食べ物はまだあるが、次は食べれるようになっているかもしれないと思うと、毎回克服チャレンジできるようになった。
元々が、好き嫌いが多かったので今でも克服と挑戦の毎日だ。
好き嫌いという地図を片手に食べれるようになった物、食べれる組み合わせという宝物を探しているようで楽しみしかない。
私がいつか母親になり、子どもに食べ物の好き嫌いがあったら母と同じ言葉を伝えたい。
そして子どもが大きくなって「食べれるようになったよ」と嬉しそうに報告してきたら、私はニコニコしながら伝えるのだ。
「お母さんもそうだったのよ」と。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/65893
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。