メディアグランプリ

人生におけるあらゆることの基本の大切さをボイトレが教えてくれた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【3月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《火曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:日山公平(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「え!? 何言ってるか、聞き取れねーよ」
週末の居酒屋で飲んでいて、今まで何回も友人から言われた言葉。
 
周りのワイワイガヤガヤで、自分の声がかき消されてしまう。
聞き取りにくい声量とともに、僕は早口だった。
昔から、声と話し方に劣等感があった。
自分でわかってはいるが、なかなか直せないクセだった。
 
それほど生活に支障があるわけではないものの、日常のささいなシーンで、自分の声や話し方の不甲斐なさを思い知らされて、落ち込むことがよくあった。
 
「何とかしたい……」
 
自分の声や話し方を改善するために、何がよいかネットで調べてみた。
話し方教室や、スピーチ教室など色々あったが、いまいちしっくりこなかった。
話すことが苦行に感じられて、もっと楽しみながらできないかと思っていた。
 
色々調べてみたところ、自宅から徒歩5分のところにある教室が目にとまった。
それは、ボイストレーニング教室だった。
講師が歌手プロデュースの経験もあり、またアナウンサーへの指導実績もあって、
話し方の改善レッスンもあるようで、僕のニーズを満たしてくれそうだった。
 
「歌いながらできそうだし、楽しめそう」
 
レッスン体験が無料だったので、申し込んだ。
講師がとても気さくな人で、歌の簡単なレッスンをしてくれた。
親切に指導してくれて、適度な厳しさもあり、自分に合いそうだったので、
ここに通うことに決めた。
月2回で、通うにもそれほど負担ではない。
 
最初はワクワクしていた。
自分の声や話し方が改善できたら、どんなに素晴らしいだろうという期待感もあった。
 
そんな中、迎えた第1回目。
きっと楽しくなるように、歌を取り入れたレッスンをしてくれるんだろうと思っていたら……
 
「はい、最初は基本中の基本である、呼吸法からいきましょう」
「え……  俺、ボイトレしにきたんすけど、いきなり呼吸法すか!?」
と、さすがに声に出せないので、心の中で愚痴ってしまった。
 
きっと、歌手プロデュース経験のある講師だから、間違っていないだろうと素直に従った。
声を出すには、腹の底からの、いわゆる「腹式呼吸」が大事なんだそうだ。
 
腹から息を吸い込んで、口をすぼめながら「シュー」と音を立てながら、息を思いっきり吐く。
1秒ごとに、1つの腹から吸って吐くを繰り返すだけでも、腹筋に力が入り、思ったより体力を使う。
普段、我々は無意識に呼吸するときは、胸でしているそうで、それだと響く声は出ないようだ。
いかに、普段腹から呼吸してなかったかを実感した。
 
呼吸法の次は、いよいよ歌を取り入れるかと思ったら……
そうは問屋が卸さなかった。
 
「次は、腹式呼吸しながら、ひらがなの50音を発音していきましょう」
「え……  小学校の国語の授業じゃねーし」
と、心の中で「そんなのやるんかい!」と不満タラタラだったが、仕方なく講師に従うことにした。
 
大きく腹から息を吸って、「アー イー ウー エー オー」と発音する。
すると講師が「あなたの『アー』は、『hがついたハー』か『gがついたガー』も混ざってますね」と指摘されてしまった。
「え〜!!  俺って、そんなに発音が悪かったのかよ」
としょんぼりしてしまった。
 
そんな感じで、あっという間にレッスンの60分間が過ぎた。
2回目以降も、呼吸法と発音練習がメインで、歌を取り入れたレッスンは全くなかった。
あまりに単調で、同じことの繰り返しだったので、正直面白みがなかった。
 
「何で、カネ払ってまで、こんなつまんねーことやってんだ……」
こんな不満を講師にぶつける勇気もなく、ただ講師の方針を信じるしかなかった。
 
そんな繰り返しの日々が3ヶ月過ぎた、ある日のことだった。
 
「あれ!? お前、声変わった?」
週末の居酒屋で、周りがワイワイガヤガヤしている中で、友人から言われた言葉。
 
「ん? 何でそう思った?」
「何か、いつもより響いてたから、何となく思っただけだ。気のせいか」
その友人から、初めて言われた言葉だった。
 
また、ある会社での会議で、あるプロジェクトの報告で約20分間のプレゼンをしていた時。
終了後、ある役員から「プレゼンに自信があるのが感じられて、分かりやすかったよ。ありがとう」と言われた。
その役員は僕に対して、普段あまり高い評価をしていなかっただけに、かなり驚いた。
 
ん!? これって、ボイトレのおかげ?
殆ど、呼吸法と発音練習しかしてねーのに……
 
突然、ハッとした。
その時、何故か思い出したのは、ドラゴンボールのあるシーンだった。
 
悟空が初めて天下一武道会に出場する時、亀仙人の下で修行をすることとなった。
亀仙人は、悟空に実戦で使える技を教えると思いきや、重いものを持たせてひたすら走らせるなどの単純なことしか修行させなかった。
それで、悟空は不満の状態で、天下一武道会に出場するが、試合開始からあっけなく相手を倒せている自分に気づき、基本を徹底的にやったからこそ身につけた強さを実感するのだ。
 
「基本は大切」という言葉だけなら、誰もが知っている。
ただ、それを実践できている人は、思うほど多くない。
 
言葉だけで「基本は大切」と頭ごなしに言われてもピンと来るものではない。
だからこそ、体で覚えてもらうべく、講師は最初からあえて何も言わずに、呼吸法と発音練習をひたすら叩き込んでくれたのだろう。
 
何気なく通い始めたボイストレーニングから、意外な人生のエッセンスを学ぶこととなった。
どんな場にも、何かしら得るものがある。
もしまた何か新しく学びたいことがあれば、ひたすら基本を徹底的に叩き込むことだろう。
 
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2019-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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