甲子園球場の裏側
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:田中晶太郎(ライティングゼミ・日曜コース)
「今年こそ甲子園球場に行くぞ」
高校野球を見始めて、30数年経つが、テレビで観るのが専門。前回、球場に行ったのは、30年前。今年は、地元の市立呉高校さんが、2年ぶり2度目の出場。初出場の時に行きたかったが、仕事の都合で行くことができなかった。めったにないイベント。「行っておけばよかった」と、2年間後悔していた。
今回も、仕事の日ではあったが、会社の人に必死に頼み込み、最初は「ダメ」って言われたが、「もう切符を買った。絶対に行きます」と、辞める覚悟で強く伝えると、しぶしぶ、有休にしてくれた。心の中で「やったぁー」と同時に、会社の方にも感謝である。
試合の日程は、大会初日の第1試合、開会式から観ることができる。朝4時に起き、広島駅から新幹線、電車を乗り継ぎ、8時前に球場に着いた。
行きは、野球の試合を観られるのが楽しみで、「良い試合になればいいな。できれば勝たないかな」と野球の事ばかり考えていた。この後の光景を観るまでは、「開会式は観なくてもよいのでは。それまで外で遊んでいようかな」くらいの軽い気持ちだった。
球場に着くと、「これが甲子園かぁー」と思いはしたが、冷静であった。近くを歩いている人を見ると、「もうすぐ始まる。本当に楽しみにしていたんだなぁー」と熱気が感じられる。
時間的には、まだ早い。スタンドに入ってみようかなと思い、切符を買い、入り口に行ってみると、「再入場はできません」と声が聞えてきた。1度入ると出られないのであれば、先に球場の外を1周してみようと思い、歩くことに。
最初に見たのは、ボーイスカウトの人たちが、最後の行進の練習をしていた。指導者が、姿勢、手足の位置、全員のバランスを厳しい目でチェックしている。テレビで観る「ビシッ」とした姿は、準備あってこそ。
次にタバコを吸える場所に行くと、新聞の記事が目に入ってきた。「甲子園で人生を変えろ」と大きく書いてある。言葉の通り、「人生が変わる体験、感じる何かがあるかも」と、甲子園に行ってみようと思ってもいたので、根拠は無いが、「今後、本当にそうなるかも」と良い予感がする。今までの生き方が「中途半端だ」と、自分に言われているようだ。
タバコを吸える場所の向かい側に、外野スタンドの入り口があった。そうか、外野は「タダ」で入れるのか。入ってみると、スタンドが大きくて圧倒される。お客さんの入りは、まだ7割くらい。それでも、2万5000人くらいは入っていそう。グラウンドも、きれいに手入れされており、開会式の道具がセッティングされている。まもなく始まりの予感。
スタンドから出て、レフト側に歩いていくと、囲いの中から歌声が聞えてくる。その歌は「今ありて」という歌。式の最後に、女子高生が歌うのだが、曲、歌詞、共に感動する内容になっている。テレビで聴いても感動する。春の訪れや、若者の現在から未来へ、を描いている。こちらも最終調整をしているが、中では厳しいチェックが入っているのが想像できる。歌声はすばらしい。「がんばれ女子高生」
甲子園1周で出会った人たちは、まもなく入試を受ける受験生みたいだ。合格する為には、かなりの量の勉強をしなければいけない。受験は1発勝負。失敗も許されない。この日の為に、すべてをかけている。ただ、この人たちなら大丈夫。伝わってくる熱が違う。相当練習をこなしているはず。普通にやれば、合格間違いなしのレベル。
真剣に、手抜きなし。テレビではわからないが、すべての人が力を合わせて、式の成功に向けて頑張っている。裏方でも、相当な練習量をこなして、いつものテレビの姿ができるのだ。
式の時間がせまり、スタンドへ入り、始まるのを待つ。野球を観に来たが、今は裏で頑張っている人を応援している。
式が始まり、いつもの主役は選手だが、今回の自分だけの主役は、先ほど出会った人たち。さっそく、ボーイスカウトの人たちが行進している。堂々とした行進で、息がピッタリ合っている。行進が終わっての立ち姿も「かっこいい」と自然と拍手をする。
式も進み、今度は、歌を歌う女子高生の皆様の応援。この歌を聴いて、「泣きそうになったことはあるが、泣いたことはない」が、球場で聴くと、泣いてしまった。朝からの感情が抑えきれなくなった。素晴らしい歌声を響かせていた。練習の成果が伝わってきた。
野球を観る前から、「甲子園に来てよかった」と感激できる。
「甲子園で人生を変えろ」というメッセージも、選手だけに言われている言葉かと思っていたが、参加している全員に言われているものだった。
この気持ちを忘れずに、明日から行動して行こう。良い方へ人生を変えて行けそうな気がしてきた。
野球が好きな人で、何かを頑張りたい方、人生に迷いのある方。甲子園は、迷いを消してくれる場所かもしれない。1度訪れてみていかがでしょうか?
若い人たちの頑張りに、元気をもらえます。
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