メディアグランプリ

プチギレ仕事術〜「思いやり」を捨てたら楽になった話〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渥美 勉(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
「僕は大阪でWebディレクターをしています」
 
そう自己紹介すると、「Webディレクターってどんな仕事?デザイナーとは違うの?」と聞かれることが多い。このあたりはかなり曖昧で、デザイナーもしつつディレクターをする人もいるが、僕はデザインが全くできない。プログラミングもできない。手を動かして何かをつくることはできない。
 
では何をするのか?
これは、逆説的にお伝えした方が早いと思う。つまり、ホームページを作るときに、デザイナーやエンジニアがしないことを一手に引き受けるのがディレクターだ。その主軸となる仕事は、人間関係の調整役だ。クライアントのビジネスに貢献することを目的として、デザイナーやエンジニアと相談しながらホームページを作っていく。
 
そこで求められるのが「思いやり」だ。クライアントが何を求めているのかを想像し、先手先手で行動する。「思いやり」が何より大事な仕事がWebディレクターだ。
 
そう思っていた。
けれど、ある事件がきっかけに、僕はそれを捨てることにした。
 
それはとある中小企業のホームページリニューアルを担当したときだった。予算が少なく、あまり利益が見込めなかったが、担当者(クライアント側)の熱意もあり、力になりたいと思いお引き受けすることになった。
 
最初は順調だった。定期的に打ち合わせをして認識のすり合わせをし、デザイナーやエンジニアもクライアントの意向に添えるように頑張ってくれた。雲行きが怪しくなってきたのは、たたき台のホームページ(完成前のデモサイト)ができあがってきた頃だった。
 
「イメージと違います」
「この機能を追加してください」
「ここを修正していただけますか」
大量の修正依頼が来るようになった。かなり綿密に打ち合わせですり合わせをしていたはずだったが、実際にできあがってくるとお互いがイメージしていたものにかなりの差があることが浮き彫りになった。
 
「わかりました。修正いたします」
 
こんなことはよくあることだ。クライアントの事情もある。デザイナーやエンジニアに無理を言って修正してもらい、クライアントに確認してもらう。
 
「なんか違うんですよね。ここと、ここを修正してください。あと、この機能を追加してください」
 
「わかりました。修正いたします」
 
こんなことはよくあることだ。最初に確認しなかった僕も悪い。また、デザイナーやエンジニアに無理を言って修正してもらう。
 
「ありがとうございます。あと、ここと、ここを修正してもらえますか」
 
我慢の限界だった。当初約束していた範囲を大きく超えた追加機能や修正に追われる日々。デザイナーやエンジニアへの申し訳なさ。
僕は我慢に我慢を重ねた結果ブチギレてしまい、かなり辛辣なメールをクライアントに送っていた。案の定、案件は炎上した。
 
ブチギレしてスッキリした僕は、妙に冷静になって考えてみた。一体なにがいけなかったのか。
 
それは、僕が勝手にやっていた「思いやり」という名の「逃げ」が原因ではなかったか。相手のためを思って自分が我慢すればいい。そんな「逃げ」がこんな事態を招いたんだ。
 
それからの僕は、我慢に我慢を重ねてブチギレしないように、小出しにプチギレするように心がけた。自分勝手に相手を思いやることを止めた。できないことはできないし、無い袖は振れないとその場その場で明言することにした。その前提の中で、どうやったら良いホームページがつくれるのかを一緒に考える。そのスタンスを理解してもらえない人とは、お互いが不幸になるからお仕事をお断りすると決めた。
 
それが、僕なりの仕事へのプライドになった。とても上から目線に聞こえてしまうかもしれない。けれど、自分だけではなく、デザイナーやエンジニアの頑張りを安売りしたくない。また、自分自身にプレッシャーをかける意味もある。
 
クライアントの顔色を伺って、勝手に「思いやり」を押しつけて、勝手に我慢をしてブチキレるという最悪の「逃げ」をしてしまった僕。これからは、真っ正面から立ち向かっていこうと思う。
 
 
 
 
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2019-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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