臆病なことは大切なこと
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:松熊利明(ライティング・ゼミ平日コース)
「気になるから、もう一度確認するか」
自宅から外出する時の出来事だ。
玄関の鍵を掛けたかどうかが気になったのだ。
毎日繰り返される行動は、ふとして無意識に行なっている事が多い。
玄関の鍵閉めもその一つだ。
いつものように鍵を締めたつもりだが、記憶には残っていない。
地下の駐車場まで降りたので、もう玄関まで引き返したくはないが・・・・・・
考えれば考えるほど、不安になってくる。
これまで一度も鍵を掛け忘れた事はないのに、不思議である。
しばらく自分の中で葛藤したが、諦めて引き返してみると、
”やはり”玄関の鍵は何事もなかったかの様に当たり前にかかっている。
安心はするが、気になって引き返した自分に対しては自己嫌悪に陥る。
「なぜ、こんなに気になってしまうんだ。絶対、締めてるはずなのに」
とうとう最近では、”こればかりは性格なのでしょうがない”と諦める事にした。
そうしないと自分が苦しくなるからだ。自分の心を自分で防御したのだ。
この様な「気にしすぎ」の性格は、生まれた時から変わらない。
幼い頃はその性格が災いし、周りを気にし過ぎるあまり、
他人に積極的に話しかける事ができず、引っ込み思案になる事がよくあった。
柔らかく言うと「心配性」、強く言うと「臆病」な子供だったのだ。
必然的に学校では、大人しくて目立たない生徒となり、
先生受け(だけ)は良かったが、クラス内での友達はやはり少なかった。
小学校の学期末に配られる通信簿では、「先生からの連絡事項」の欄に
”問題行動はないが、少し積極性が足りない。今後は頑張りましょう!!”と、
いつも書かれていた。
その様な性格を変えたいと、高校生のときには思い切って演劇部に
助っ人として入ってみたりもしたが、なかなか性格改善とまでは行かずに今に至っている。
なので、今も基本的な性格は変わっていない。
ただ、自分の性格に対する考え方は変わってきたのだ。
今は、この性格が嫌いではなくなってきた。
そのキッカケは、些細な事だった。
ある時の事。
職場のトイレで液体石鹸の液が切れかけている事に気がついた。
液は少し残っていて、すぐに無くなる程ではなかったが、早めに新しい液を継ぎ足した。
それだけなら、液が切れるタイミングに偶然当たっただけとも言えるが、
その後も同じ様な事が続いているのだ。
また、私は朝の出勤時、必ず天気予報を見るようにしている。
そのため、朝に晴れていても午後が雨の予報になっている時は、
傘を持っていくようにしているのだ。
その結果、帰宅時に周りの人の多くが傘を持たずに濡れている中、
私は傘をさして快適に帰っていることも多いのだ。
ちょっとした事ではあるが、そんな時、
”他人(ひと)が気づいていない事に気づいた感”があって、
なんだか気分が良いのだ。
元はと言えば「臆病」な性格から始まった出来事だ。
今まで悲観的なイメージしか持っていなかったこの言葉が、
自分の中でキラキラと輝き出す。
『臆・病・』。それも、わるくない!!
『お・く・びょ・う・』。そのひびきも、わるくはない!!
今回の事がキッカケで、今までの自分の常識を少し考え直すことにした。
どんな性格にも”良い面”と”悪い面”があるのだと思う。
良い性格は「積極的」「社交的」「明るい」、悪い性格は「消極的」
「内向的」「暗い」というくくりは、もう古いのかも知れない。
犯罪の証拠として使われるものに「防犯カメラ」がある。
一見、防犯カメラが犯人を突き止めたかの様に感じてしまうが、
カメラ自身は延々と動画を取り続けている(情報が溢れている)だけのしろものだ。
最終的には、人間がその動画の中から必要な情報をピックアップして初めて意味をなす。
今の世の中、情報が溢れている。
パソコンやスマホを使えば、簡単に情報が手に入る時代だ。
だけど、それは情報を手に入れる為の手段があるだけで、
必要な情報は、やはり自分で取りに行かないと手に入らないのだ。
生きていくのに重要なのは、常に周りにアンテナを張っておく事。
そして、大事な情報を見落とさずにピックアップする事だ。
周りにこれだけ情報が溢れていると、
自分は何でも知っているかの様な錯覚に陥る瞬間がある。
そんなときこそ、冷静になって自分につぶやいてみたい。
『必要な情報を得るために、臆病になってみたら?』
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