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【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:河上 弥生(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
こうしたら楽しく生きられるようになりますよ、とアドバイスしてくれる本が、山のように出版されている。電車の広告で代わるがわる目にする。ウェブサイトで、ちょっとでも検索すると、芋づる式に次から次へと書籍が紹介される。これだけ、そういう本が出版されている、ということは、本当に多くの人から求められている、ということなのだろう。
 
私も、離婚をした数年前あたりから、チラチラとそういう本のタイトルを眺めるようになった。
 
離婚してみて、真の生きる不安、というものと真正面に向き合うことになったからだと思う。若いときには、自分一人、食べていける、という無責任さがあったし、結婚していた時には、夫という存在がいて、「守られている」という安心感があった。離婚により、私は、子どもたちとともに先の見えない世界に放り出された気がした。
 
それからの毎晩、眠りに落ちる前の時間は、苦痛な時間となった。まず、自分が過ごしてきた過去がよみがえり、ありとあらゆる面で後悔した。離婚の原因に対して恨みを募らせた。恨むのをやめたあとは、不安で心臓が痛いほどバクバク脈を打つようになり、眠れなくなった。
 
その後は、ひたすら過去から現在の自分を責めて鬱々とし、睡眠不足の毎日が続いた。しかし、どんなに朝の目覚めと体調が悪かろうとも、出勤し、仕事をしなくてはならない。良い睡眠がとれなければ、日中の集中力は低下する。
「まずい……。このままでは仕事ができなくなる」
 
仕事ができなくなれば試合終了だ。私は、ちゃんと仕事をして、子どもたちにご飯をつくって、笑って話をする、そんな毎日を送りたかった。それ以上のことは何も望まない。このままでは、そういう日々さえも送れなくなってしまう、と思った。
 
こんな自分はイヤだ、変わりたい! それが、その時の、切なる私の願いだった。私は、それまで読んだことのない「楽しく生きるための本」に手を伸ばした。
 
何冊も読むうち、気づきがあった。
 
「こんな自分はイヤだ」という思い自体が、どうやらまちがっている……?
ここからまず変えていく必要がありそうだった。
 
そう、「楽しく生きるための本」には、共通するメッセージがあった。
それは、まずは、ありのままの自分を受けいれること。
 
最初は、その文字を読んでも、全く腑に落ちなかった。
自分を受けいれる? 自分がどんな人間かなんてわかっているよ、……これ以上、どうすればいいの。
私は途方に暮れて、本を放り出しそうになった。
しかし、私は、崖っぷちにいた。今、どうにかしなければ、平凡な日々をも失ってしまう。私は、心に響くフレーズがあった数冊の本をしつこく、繰り返し、読んだ。
 
ありのままの自分を受けいれること、は、過去を含め、今の自分を良しとすることのようだ。確かに、私には、それは出来ていない。私は、自分と、子どもたちを今のような状況に置くことになった自分が情けなくて、バカだと思い続け責めていた。確かに、愚かだが、まずは、責めたりしないようにしよう。自分を否定しないこと、は、自分を拒絶しないことだよね。……え? 今まで、私は自分を拒絶していたのか!
 
その時、すっかり忘れていたことを、突然思い出した。かなり前に、大好きだった友人と絶交したのだ。あの時、私は彼女に対して激しく怒り、拒絶して、離れた。
彼女を許せたらよかったのに。
怒りの根っこには、悲しみがあるという。私はあの時、悲しすぎて、彼女を許せなかったのだと思う。
 
今の私も、自分自身に深く失望し、拒絶している。友人に対して取った態度と同じだ。もしかしたら、ここで、自分を許すことが、自分を受けいれることにつながるのだろうか……?
 
そこで初めて、自分を、許そう、と思った。
 
過去から現在にいたるまでの自分を。
 
これまで生きてきた道で、直面したいくつもの分かれ道。どれか一つを選択しなければならない場面が何度もあった。これまでの自分の全ての選択を、許そう。
 
ごめんなさい。今まで、怒っていて、ごめんなさい。
 
私は、あなたを、私を、許します。
 
そう思ったとき、なぜだか泣けてきて、涙がとまらなくなった。
 
その後も、何度も涙を流した。少しずつ、私は穏やかに眠れるようになった。そうはいっても、何年も自己否定の迷路を堂々巡りしていた習慣は、なかなか抜けない。電気を消して、眠りに落ちる前の時間に、「私を否定しようとするネガティブ自分」が忍び寄る。私は、その気配を感じたら、澄んだ美しい青空を強くイメージし、間髪入れず、次のことを念じるようにした。
 
「私は、あなた(私)を、許します。そして、新しい気分になります」
 
ばかばかしいと思われる方もいらっしゃるだろう。しかし、これを続けて、私の中で、なにかが少しずつ溶けていった。就寝前の、不安にさいなまれる時間も、減っている。そして、毎日の時間の過ごし方が変わってきている。
 
今まで、考えなかったことに興味を持ち、知りたい、と思うようになったのだ。あの人に会おう、こんなことをしよう、という具体的な行動プランが湧くようにもなった。「ネガティブ自分」に占拠されていた時間がゼロに近づいているせいで、まっさらな気持ちで受け取る時間が増えたからだと思う。錆びついていたアンテナがぴかぴかになって、新しいものをキャッチし始めた感じがする。
 
毎日をつらく感じる人の中には、私と同じように、後悔や自責の念にとらわれている人がいるかもしれない。
 
もし、あなたがそうなら、かなり抵抗はあり、時間はかかると思うのだが、まずは、あなた自身に、本気で、
 
「あなた(私)を、許します」
 
と、ゆっくりと、言葉をかけてあげて欲しい。その先に、あなたを新しく迎える時間が、待っている。
 
 
 
 
***
 
 
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2019-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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