「復縁を目指した元彼女の行く末」
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記事:てぃーこ(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
「いろいろ考えたけれど、別れた方が良いと思う」
突然だった。いや、本当は数週間前から薄々勘付いていた。だんだんと彼の仕事が忙しくなり、それと比例するように返事も遅くなった。何もしなければ良かったのに、私から爆弾を投げた。そう、終わりを急いだのは私だ。
とても優しい彼だった。いつも愛情をたっぷり注いでくれた。大好きだった。
あぁ、終わった。私の弱々しい気持ちは、ガラガラと崩れた。目の前は真っ暗だった。2人で一緒に歩いて来た道が途切れた。花火大会に行きたかった。あの居酒屋さんにも、もう一度行きたかった。記念日だって目の前じゃないか。でも、もう彼はいない。私には何もない……
彼を失ったら、私はどうしたら良いのだろう。
その時、31歳になっていた。年齢的にも最後の恋だと思っていた。もう私は、恋は出来ないのでは……不安と悲しみと絶望の中にいた。
思い出したら、なんと恥ずかしいことだろう。まさに、穴があったら入りたいとはこの事だ。悲劇のヒロインと化した私は、舞台女優のように悲しみを最大限に演じていた。今考えたら、彼の方がきつかっただろう。
1ヵ月は何も考えられなかった。でも、ひたすら落ち込んだ後、復縁を目指すことにした。
反対に、他の男の人とも何度か会ってみた。次に進んだ方が、良いのかもしれないと思ったからだ。
でも、やっぱり彼が良かった。申し訳ないけど、比べてしまうのだ。
藁にも縋る思いで、インターネットで「復縁」を検索して、いくつか記事を読んだ。
なるほど、復縁するにはまず「自分を満たすこと」か。
それから、私は一人旅に行くことにした。美味しい食事や、美しい景色に癒された。自立した女性になりたかった。
さらに、料理教室にも通った。苦手だった玉ねぎのみじん切りが出来るようになった。年上女性が多く、勉強になった。
でも、何か足りない。
この気持ちは、公園で小さな子どもが吹いているシャボン玉のようだった。勢い良く飛び出て華やかだけれど、風と共に次々と消えて行く。楽しかった気持ちは儚く散って、私の中にはどこか満たされない寂しさが残っていた。
続けて、本を読んだ。モヤモヤしていると、自分を卑下するだけだったからだ。
主に、自己啓発本を読んだ。今まで手を出したことがない部類だった。さらには、女性向けエッセイや、引き寄せ本。読むのはとても楽しかった。
そこで、ふと気づくことになる。
これまで、「自分を満たす」為に動いて来た。
……はずだった。
ところが、私がやっている事は彼との未来のためではないだろうか。どこが自分を満たしているのか。そもそも、自分を満たすって何?
私は、私を見ていなかった。
どうやら、私はずっとカメラのファインダー越しに世界を見ていたようだ。
時間が掛かってしまったなぁ。やっと、私にベクトルが向いたのだ。
「全てが終わった」と思ったあの日。同時に、私の人生は新しく始まっていた。
彼との別れは辛かった。けれども、その別れは自分を変えたいと思わせてくれた。そう、成長するきっかけを、彼は与えてくれたんだ。
人生は一度きり。私は、私の為に生きよう。
それからは、気持ちが落ち着いていた。もちろん、落ち込む事もあった。彼を思って泣いたこともある。それでも、私は大丈夫だと信じられた。
枯れても腐っても良いじゃないか。私は造花じゃない。また、種を撒いて水をやって、太陽のもと何度でも咲こう。
彼中心だった考え方を変えてくれたのは、「恋トレ」という本との出会いだった。
筋トレするにはトレーナーがいた方が良いように、私にとって心を鍛えるにはこの本が必要だった。
自己評価が低く、自己否定を繰り返してきた私に、そのままで良いんだと女性目線で優しく語ってくれる。
今、私は自分の軸を持って立っている。
また、元ヨガのインストラクターをされていた彼女の、身体を使うワークが面白い。
朝スッキリ起きられる? 昼ごはん何食べたか覚えている? 夜、ぐっすり眠れている?
ドキっとしたなら、見直すチャンス。
人は忘れて行く生き物だ。だからこそ、生きやすさを教えてくれたこの本を、ずっと手元に残しておきたい。何度も何度も読み返そう。
これを読んでいるあなたにも、本棚に眠る大切な本があるだろう。
是非もう一度読み返して欲しい。
きっと、前に感動した時とは、違う気付きが見つかるはずだ。成長したあなたにとって、懐かしさもあり、新鮮さにも出会える。
元恋人って、そんな本に似ている気がする。
著者:かんころ
出版社:KADOKAWA
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