チーム天狼院

【マーブル模様な生き方をしよう】本屋さんで働くことの怖さを回避する方法≪川代ノート≫


マーブル

スタッフ川代です。

本屋さんで働くのが、昔からの憧れでした。
本が好きな人は、「本好き」と「本屋好き」に分かれる、と言うけれど、私は間違いなく後者。とにかく本屋とか図書館とか、本がたくさんある場所が大好きなのです。タイトルを眺めているだけで、次々と情報が入ってくるのが、面白くて仕方ない。本屋さんに来ている人が、どんな本を選んでいるのか、チラ見したり。本屋に入ると、だいたいいつも一時間は長居してしまいます。本屋にいると、何もしていないのに、頭が良くなったような気がして、自分が豊かになったような気がして、結局悩みに悩んで、一冊の本を選んで店を出る頃には、ウキウキしながら、一段階賢くなった自分を想像して、いそいでページをめくる。

 

そんな本屋さん好きな私が、実際に本屋さんで働いてみると、お客さんとして本屋さんに行くよりももっと、妄想がふくらんでしまうのだ、ということが分かりました。
本屋さんにいると、いろんな面白い本や、面白い人との出会いがあって、毎日刺激的です。どんどん新しい知識や価値観にもまれて、めまぐるしく自分の脳がアップデートされていくのが分かります。そんなことがあるんだあ、その情報は全然知らなかった!と、新しいものを吸収し続ける日々です。
そういう場にいると、「今以上の自分」を妄想しやすくなります。賢い自分、すごい人たちと同等に話す自分、そしてそのすごい人たちから求められている、魅力的で人気のある自分、という妄想。

これが妄想ですめば良いですが、注意しなくてはならないことがひとつだけ。そうしてすごい人たち、面白い人たち、頭の良い人たちに囲まれていると、妄想ではなく、現実として、自分まで「すごい人」になったような錯覚を起こしてしまうことです。

天狼院ではよく、「もはやすごい人が来ても驚かない」というのはあるあるネタになっているのですが、そこで「すごい人と話している自分もすごい人のような気がする」というのもあるあるになってしまってはまずいな、と最近の自分をふり返って思ってしまいました。「自分は妄想をしているだけ」という自覚があれば良いのですが、時々そのことを忘れてしまって、私もすごい人たちの仲間に入れたような思い上がりをしてしまうのです。

 

業界で活躍しているヒットを飛ばしまくっている編集者さん、新しい切り口で面白い小説を書いている作家さん、どんどん社会を切り拓いていこうとしている起業家さん・・・などなど。天狼院ライブや部活ではもちろん、普段訪れるお客様としても、面白い人のお話を聴ける機会はかなり多いのです。そういうことが頻繁に起こると、どんなことが起こるか、というと。
すごい人たちが言っていたことや、新しいアイデアを、まるで自分が思いついたかのように思い込んでしまう、ということ。これは本当に、自分にとっても他人にとっても、いいことがありません。
自分が思いついた事ではないのに、自分のアイデアとして発表してしまう。ときには公にしてしまう。しかも、そのことに本人も気づかない場合があるのです。
様々な人の知識を仕入れやすい環境にいると、すごい人たちのアイデアの詰め合わせやつぎはぎから生まれたものである場合が多く、たくさんのアイデアから一つ引っ張ってきただけであっても、「自分が思いついた事である」という錯覚が生まれやすいのです。

そして、芯が無く、人から認められたいという思いが強ければ強いほど、世間から評価されている、「それらしい」アイデアを次々取り入れて、自分の意見として発信してしまうので、そのような「すごい人と錯覚してしまう」スパイラルに陥りやすいのです。けれどそういうことを続けていると、必ず落ち度が出てくる。所詮は自分の意見ではなく、みんながいいと言っているものを真似するだけなので、自分の意見の中にも矛盾が出てきてしまいます。そうなると誰も信用してくれなくなる。芯がないまま、「すごい人と思われたい」という野心だけで動いていると、そういう最悪の状況に陥ってしまう。

しかし、せっかく面白い人たちとたくさん会って話をきいたり、素敵なアイデアが書かれている本をたくさん読んでいるのに、その知識を何も吸収できないというのも、なんだか勿体ないよなあ、というのも本音です。

ひとつ、人の真似にもならず、人が与えてくれるアイデアを無駄にせずに吸収する方法があるのかも、と最近考え出しました。

素直であり、同時に、素直であることに頑固であること。

これが、私がぼんやりと思いついた、その解決策です。

 

たとえ話にすぎませんが。

ネイルアートをしたことのある女性ならわかると思いますが、マーブル模様のネイルアートというものがあります。
普通は一色で一つの爪に塗るマニキュアを、何色もまぜてマーブル模様を作って、爪をカラフルに不思議な柄にできるネイルアートの方法です。
作り方は簡単。洗面器を用意し、水を張ります。その水面に、好きな色のマニキュアを、次々垂らしていくだけ。少ない色では、シンプルな模様になるし、多くの色を使えば使うほど、複雑にはなるけれど、不思議で吸い込まれそうな模様に仕上がったりする。そのあとは、爪楊枝とかスティックで、軽く水面をなでると、ハートが出来たり、レースみたいになったり、色んな模様が出来る。マニキュアを入れる量、スティックを入れる角度、爪を浸すタイミング、毎回毎回、ネイルアートの模様は異なります。

 

そのネイルアートをしているとき、ああ、こういう生き方ってありなのかも、とふと思ったのです。

 

もともとは透明な水であって、清らかでまっすぐで、偏見の無い心に、一筋色がたらされれば、透明に少しのカラーが混ざったシンプルな生き方になります。もしその色が汚い色や考えであれば、そのままその色にそまってしまう可能性もあるけれども、そのあとで次々と違う色が交わって、様々な考え方がぐるぐるとマーブル模様を描けば、それはそれで新しい、その人の色になる。しかも、自分自身のスティックで、切り口で、新しい模様をきりひらいていくこともできる。
素直でいれば、そういう生き方が出来るのだ、と。

難しいのは、透明の水の部分、つまり素直でいる部分を残しておくことであって、常に偏見が無く、透明な自分自身に対しては、頑固でなければならないこと。いくら人のアイデアをどんどん吸収していこうと思っても、自分の芯の素直な部分が残っていなければ、ただの人の意見のつぎはぎ、パッチワークになってしまうのです。

 

たとえば、小説を書こう、と思ったとして。
それぞれの好きな作家の好きな部分や表現をそのまま持ってきて、くっつけて出来がった小説と、
それぞれの作家の作品を素直に読み、自分の中にいったん吸収し、自分のなかに染みこませたあとに、自分の言葉で小説を生み出すのはまるで違います。
「自分の」小説であるのは、もちろん、後者。

だから、人生や価値観というのは、パッチワークではなく、マーブル模様ではなくてはならない。

 

・・・というのも、すべてぼんやりした感覚でしかなく、定義も理論もはっきりしていないのですが。
常にいろいろな物を吸収している環境で、どうしても流されてしまったり、パッチワーク的な人間になってしまったりすると、自分がみんなと同じ「すごい人」であると、思い込んでしまうような気がして、それが怖くて、どんな生き方が自分は好きか、ということを改めて考えているときに、ふと思いついたのでした。

いつかはもちろん、自分だけの色が発明できるといいのですが、今はまだ、あまちゃんです。吸収期間だと思って、色んな人のアイデアを吸収して、自分だけの模様を創り出したい。素直でさえいれば、そういう生き方が可能なような・・・気がします。

とりあえずは、色んな色が混ざり合って、複雑すぎて、ごちゃまぜで、よく分からない模様でも、「吸収させてもらっている」という自意識があれば、それは自分自身の模様になる。だからどんどん、色んな色を水面にたらして行こう。

 

そう信じて、今日も私は、天狼院に向かうのです。

 

【お問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をして頂くだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。イベントの参加申し込みもこちらが便利です。

天狼院への行き方詳細はこちら


2014-06-30 | Posted in チーム天狼院, 記事

関連記事