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メディアグランプリ

父母を否定すると自分のことも愛せない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:池田和秀(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私はかつて、とても自己肯定感の低い人間だった。
 
自分に自信がないので、何事も自分で決めることができない。
例えば、洋服を買う時も、店頭で品定めをするのだが迷いに迷ってしまい、結局買うことができずに帰ってきたり、レストランに入っても、メニューを前にいつまでも決められず、決めた後もやっぱり別のもののほうがよかったかな、と後悔したり、といった具合だった。
 
すべてにおいて選択をした後もうじうじと悩む日々だったので、心が晴れることが少なかった。
一緒に暮らす妻は、ため息ばかりついている私を「湿った岩みたいな人だ」と感じ、「こんな人と一生添い遂げていくのか」と心の中で思っていたらしい。
 
心がそんな状態だと、当然体調にも影響が出るわけで、常に体に不調を抱えている姿が私の日常だった。
 
自分に自信がないため人間関係を上手く築くことも苦手で、まわりの目が気になるので自分の心に高い壁をつくって生きていた。
 
そんな私が、今では「あなたってこんなに晴れやかな人だったのね」と妻から言われるようになっている。「前のあなたはどこへ行ったの?」とまで言われるほどだ。
 
心の中で葛藤を抱え込むことも少なくなり、身体の重苦しさからも解放された。
風邪もあまりひかなくなった。心の状態が良くなって、免疫力がアップしているのだと思う。
人嫌いも解消され、まわりの人と抵抗なく接することができている。
 
なぜ、私がこんなにも大変身したのか?
 
大変身のカギは、両親との関係だった。
 
以前の私は、心の中で両親と「縁切り状態」になっていた。
長年にわたり、父母に対する拒否感を心の中に抱え込んでいたのだ。
 
年に1回、お正月に実家に帰ることはしていたが、話をするのは弟とだけで、父母とは共にテーブルに座ってはいても、不機嫌な顔で終始し、自分から言葉を交わそうとしていなかった。両親に会いたいという気持ちは全くなく、義理を果たしに行く感覚だった。
 
そんな具合だから、母はお菓子やお手製の佃煮などが詰まった荷物を日常的に送ってくれるのだが、実家にお礼の電話をかけることもしていなかった。
 
そして、そんな自分を問題だと思っていなかった。
「動物は大きくなれば親離れ子離れするのだから、人間だけがいつまでも親子をやっているのはおかしい。大人になれば一生関係を断って当然。それが自然の理にかなったこと」
と本気で考えていた。
 
なぜそこまで私が思うようになったのか。
この頃の私の中の父親像は、「厳しく冷たい人」だった。親なのに自分に手を差し伸べることのない、自分を突き放す人、と捉えていた。
特に中学生の頃に弟と比較されて「弟は優しい。けどお前は冷たいやつや」と父から言われた言葉が自分の中では決定的で、「それが子どもに対して言う言葉か、お前なんて親じゃない」と思っていた。
 
一方で母は私にとっては過干渉な存在で、手取り足取り先回りして世話をやかれることが疎ましく、そこから逃げ出したいという思いを強く持っていた。
 
この強い思い込みが、すべてひっくり返る日が、6年前にやってきた。
 
それはYSメソッドという心理療法のメソッドと出逢い、父母との関係を掘り下げていく中でのことだった。
この頃の私は、妻との葛藤に起因する強烈な悩みを抱えていた。心が八方ふさがりの状態で人生が立ち往生し、解決策を見出せるならばとYSメソッドの講座を受講したのだ。
 
実は、私には右手に生まれつきの障害がある。これが気づきのカギだった。
 
このメソッドでは、自分の過去を振り返りながら、まわりの人たちとの関係を捉え直していく。
私は両親との過去の出来事を掘り起こしていった。
そうして父母が幼少の頃から自分にしてくれたことをひたすら見つめていくと、父母の振る舞いの奥にある父母の思いが見えてきた。
 
私が「それでも親か」と思っていた父の厳しさは、たとえ障害があっても、社会に出たときに一人で生きていけるようにとの父の深い思いがあるゆえのものだった。
決定的だと思っていた父の冷たい一言も、父に反発する自分の心が引き出した言葉だった。
自分は父の態度の表面だけを捉えて、勘違いをしていたのだった。まさに逆恨だった。
 
そして、母は、小さい頃から体が弱く、病気ばかりしていた私を心配するがゆえに、世話をやいてくれていたのだった。子どもの頃の母との日々を掘り起こしていったとき、そのことがはっきりとわかった。
私の命を守ろうとしてきてくれた母の愛を感じることができたとき、私が母に感じていた疎ましさは完全に消えてしまった。
 
このときを境に、父母とは普通の親子になることができた。
お正月に帰省すれば、普通に話しながらおせち料理を囲むし、折々に自分から実家に電話をするようになった。
 
考えてみれば、自分の半分はお父さん、半分はお母さんで出来ているのだから、その父母の存在を否定していて、自分のことを好きになれるはずがないのだ。
 
父母に対する否定的な思いから解放され、父母の存在を根本から肯定できるようになったことで、私は、自分自身の存在を根っこから肯定できるようになったのだと思う。
 
いま私は、このYSメソッドを提供する心療内科のクリニックでカウンセラーをしているが、心の病を抱えた方には、父母に対するわだかまりを抱えた方が多い。
私の勤めるクリニックでは、初診でいらした方すべてに、父・母・自分の点数を10点満点でつけていただく。
このとき、この3つに10点満点が付く方は、まずおられない。
 
けれども、クリニックで治療プログラムに取り組む中で点数は上がっていき、やがては10点満点がつけられるようになっていく。それとともに、心の病も解消していく。
自己肯定感にあふれた心には、心の病もやってこないのだ。
 
根っこからの自己肯定に満たされるためには、父母への肯定感が決定的なカギだと、自分自身の体験とカウンセラーとしての毎日の中で、私は深く確信している。
 
 
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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