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メディアグランプリ

高齢母ちゃんはフーテンの寅さんだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:木村 薫(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「かなり遅くにできたんですね」
とある勉強会のペアワークで、私と息子の年齢を告げた相手の男性に言われた言葉だ。
 
私は、現在小学2年生の息子を42歳で出産した。世間では、35歳以上の初産は「高齢出産」と言われている。私は押しも押されぬ高齢妊婦だった。出産するまでは、フルタイム勤務をしていた。電車通勤では、席を譲られることもなかったので立ちっぱなしだった。出産自体も自然分娩で、特に問題はなかった。なので、出産するまでは「高齢出産は意外に、楽勝」と思っていた。
 
しかし、現実はそう甘くなかった。出産だけを考えていて、その後の長期に及ぶ子育てをよく考えていなかったのだ。巷では、「高齢ママ」というお洒落な言葉も聞くが、自分では「高齢母ちゃん」という言葉が一番しっくりくる。
 
時々、フーテンの寅さんのように叫びたくなる。「高齢母ちゃんはつらいよ!」
 
何がつらいかというと、まず高齢母ちゃんは嘘つきにならないといけないのである。息子が幼稚園の年長組の時、私によく「何歳?」と聞いてきた。母親が高齢ということで、友達にからかわれるのではないかとの老婆心から、とっさに「35歳!」と言ってしまった。もちろん真っ赤な嘘だ。でも25歳と言うよりは、罪が軽いだろうと自分では思っている。それ以来しばらくの間、私は35歳のままだった。しかし、さすがにずっと同じ年齢ではマズイと思い、私は今年36歳になった。これをいつまで続けるのかと思うと、ため息が出る。
 
高齢母ちゃんは、体力的にとてもキツイ。息子が幼稚園の時、よく闘いごっこを挑んできた。高齢母ちゃんは、1分ももたない。そしてすぐに、体力を使わない遊びをするように仕向けるのだ。頭では、「男の子なんだから、もっと体を動かして遊ばせたい」と思ってはいるものの、体がついてこないのだ。
 
また、高齢母ちゃんは疎外感を感じることがよくある。息子が小1の時に、学校のお祭りの役員をしたことがあった。お祭りが終り、その役員の人たちとの飲み会が開かれた。集まったのは、1年生から6年生までの子どものお母さん達20人くらい。最初は和やかに食べたり飲んだりしていたが、どこからか一人一人が年齢を言うという流れになった。さすがに6年生の子どものお母さんは私より年上だろうと思った。しかし、期待は見事に外れた。私は逃げ出したくなった。とうとう、私の番になった。ここは開き直っていこうと思い、明るく「50歳です」と言った。その後の一瞬凍り付いたその場の空気を、私は忘れない。結局、年齢言っちゃいますゲームは、私の所でうやむやに終わってしまった。
 
それでは自分と同年齢の人たちと気楽に付き合えばいいだろうと思うかもしれないが、それも難しい。Facebookで繋がっている私の中学・高校の同級生達は、よく集まって飲み会をしている。それもそのはず、50代の彼らの子ども達はもう高校生か大学生で手がかからず、気軽に飲みに行けるのである。そんな彼らの楽しそうな飲み会の投稿写真を、私はいつもうらやましく見ている。高齢母ちゃんは、自分の同級生の輪にも入れないのである。
 
そして一番つらいのは、おばあちゃんに間違われることだ。私が妊婦の時、高齢妊婦対象のワークショップに参加したことがあった。そこで出会った参加者達とは意気投合し、連絡先を交換し合った。皆無事に出産し、その後もグループメールでお互いの子育ての奮闘ぶりなどを連絡し合っていた。そのグループメールにある日、悲報が届いた。「ついに、おばあちゃんに間違われました……」私も、息子が幼稚園生の時に、同級生の友達に「○○君のおばあちゃん?」と言われ、顔がひきつったことがあった。
 
子育てに行き詰って悩んでいた時、占いも兼ねたようなカウンセリングを受けたことがある。そのカウンセラーに、こう言われた。「あなたが、高齢でお子さんを産んだのには意味があるんです。それはお子さんが高校生ぐらいになって、自分と向き合う時期に、あなたがもう一つの目になって、社会をより深く見せてあげられるんですよ」さらに付け加えて、「お子さんが18歳になったら、あなたの魂の役割は終わりです。あとは好きなことを思う存分してください」
 
私が息子にこの広い社会をどれだけ見せてあげられるかは、正直分からない。けれど、それが私の役割なら、少しでも自分のアンテナを広く張って、色々な体験をさせたり、様々な人に会わせたいなと思う。考えてみると、親の年齢に関係なく、子育てにはつらい事や悩みはつきものだ。だから、子育てが終わった時に、「大変だったけど、楽しかった!」と言えるように、今は目の前の子育てに全力を尽くそうと思う。その後に、自分の好きなことが存分にできるように。
 
 
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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