人馴れしていない猫には、忠犬ハチ公作戦!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:スミオク ミホ(ライティング・ゼミ日曜コース)
その子猫は怯えていた。
本棚の隅に挟まって、目をまん丸にしてブルブルと小刻みに震えながら、こちらの様子を伺っていた。
あまりに怯えているので近づけない。今夜はこの部屋に1匹だけにして、そっとしておこう。
すると彼は一晩中、大音量で「ミャー! ミャー!」と鳴き続けたのだった……。
先が思いやられる初日だった。
12年前、猫ブームの走り。猫カフェに出入りしたり(地元にはなかったため旅先で必ず行っていた)、猫雑誌をあれこれ見たり、お利口で大人しくて人間好きの可愛い猫に憧れていた。子どもの頃も猫を飼っていて大好きだったけれど、猫カフェにいるような、きらびやかな猫ではなかった。
でもきらびやかな猫たちはペットショップに売られていて、とても可愛らしいけれど、お値段は可愛くなく、籠の中の鳥のように自由がなくて可哀想に思えた。
そんな中、家の近くで、野良猫親子を保護した人が子猫の譲り先を募集しているのを見かける。結局ペットショップのキラキラ猫よりも、昔飼っていた猫と同じ元野良猫に親近感が湧き、家族に事後承諾で子猫を譲り受けることに決めた。子猫は数匹いたが、人気がなさそうなバットマン風マスク柄の白黒の子を選んだ。
「名前は“コジロウ”にしようかな」
子猫を貰う予定日の前日、私は妹にそう提案した。
「イイね〜最高!」
薄ら歴女だった2人の意見は合致した。
しかしその子猫はがまぁ、よく捕獲できたね、というくらい人に馴れていない!! 譲渡先の家でも必死で捕まえてもらい、キャリーに押し込んで自宅へ連れ帰ってきたものの、初日に怯えて鳴き続けたあと、ロフトの奥に逃げ込んで姿を隠してしまった。やっぱり元野良猫は、猫カフェの猫とは大違いだ……。貰い先を間違えたかな、と早くも後悔した。
けれどロフトからの夜鳴き3日目、ふと、これはお母さんを呼んでいるのだと気がついた。すると急に子猫が愛おしくなって、お母さんの代わりになってあげないと! そんな気持ちが湧き起こった。どうしても、子猫を撫でたい、可愛がりたい、ゴロゴロしてほしい……馴れてほしい……!!
どうしたら振り向いてもらえる? 意中のひとに思いを馳せるような、この気分。彼(子猫)を振り向かせたい一心で、私は必死に作戦を考えた。
名付けて「忠犬ハチ公作戦」。
とてもとても子猫に触りたいけれど、グッと我慢して、子猫の気持ちが変わるのを“待つ”ことにした。
まずは朝晩の美味しいご飯と、清潔なトイレの提供から。ロフトへの梯子を登るたびに、彼はその奥の納戸に姿を隠したけれど、1週間ほど経つと少しずつ距離を縮めてきて、くりくりの瞳で扉の影から掃除などをするこちらを見つめていた。それがとても可笑しくて愛おしかった。
近寄って強引にでも撫でたかったけれど我慢した。
当初ご飯を用意しても私がいなくなるまで食べなかったが、私が顔を見ていても食べられるようになった。そこで、猫のおもちゃを用意した。
これが大ヒット!! ネズミ型のおもちゃや、羽のついたおもちゃ。子猫心を上手くくすぐって、狭いロフトの中をドタバタとはしゃぎ回って遊んでくれた。
近寄って強引にでも撫でたかったけれど、まだ我慢。
同じ空間にいられるようになったことだし、そろそろロフトで寝てみようかな。ロフトは本来、人間が寝るところだよ、ということで遊びにもだいぶ慣れた頃、同じ空間で寝てみることにした。彼が片隅の自分のベッドでどう思っていたか分からない。ただ、明け方になると私の頭付近の小窓に佇んで、外を眺められるようになった。
手を伸ばせば届く距離、強引にでも撫でたかったけれど、我慢!!
食事の提供、トイレ・ロフトの清掃、たっぷりの遊びの時間、そして傍で寝る。かれこれ1ヶ月ほど繰り返しただろうか、その日は突然やってきた。
仕事を終えて帰宅し、いつものようにロフトへただいま〜と登っていった。梯子の上にコジロウの顔が見えた。そこまではこれまで通り。梯子を登り切ってロフトに足を踏み入れようとすると
スリスリ〜
突然コジロウが足にすり寄ってきた……!!
「?!」
なにこれっ、カワイイ〜〜!!!
お世話に徹して待って待って待ち続けた結果、コジロウはようやく心を許してくれたのである。
その後はもう、これまでとは真逆で甘えん坊に変身、いつも膝に乗ってきて、全身撫でられても平気、寝る時もくっついて寝るようになった。私はすっかりお母さんになれた。
コジロウに続き様々な事情で猫が増え、自宅に3匹、近くの実家にも3匹飼っているけれど、
人馴れしていない元野良猫でもみんな1週間くらいで態度が柔和になってくる。
ポイントは「待つ」こと。
おいしいご飯をあげる、トイレを常にキレイにしてあげる、安心して寝られる場所の提供、落ち着いてきたら遊んであげる、でも馴れるまでは必要以上に構わない。
つい、フワフワの毛に触りた〜い、撫でた〜い、となるけれど、なるべく我慢ガマン!
時にはコジロウのように強情でなかなか馴れない猫もいるだろう。けれど、本来ひとの傍で過ごすように進化してきたイエ猫が、過酷な外の環境に置かれて必死に生きてきた結果、ひととの接し方が分からなくなっているだけなのだと思う。
もしそんな猫に出会っても、猫のことを信じて、心を開いてくれるまで待ってあげてほしい。
忠犬ハチ公は二度と飼い主に会うことはなかったけれど、「待つ」ことは動物と飼い主の関係を良好にしてくれる大切なエッセンスだ。
***
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