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我が家の、受け継ぎごと


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受け継ぎごと。
それは、家族の中で脈々と受け継がれてきた考え方、価値観、大切なもののことだ。
親から子、子から孫へと受け継がれていくものは、些細な癖から考え方や生き方の軸まで、様々な粒度のものがある。
 
初夏に発売された「受け継ぎごと」をテーマにした本を読み、自分の受け継ぎごとはなんだろうと考えた。
 
私の両親は、今は共働きだが、私が中学に上がる頃までは公務員の父と専業主婦の母、という夫婦だった。私には弟が1人おり、4人家族だ。
父の仕事の都合で、海外と日本を数回行き来したこともあり、比較的家族と過ごした時間は長かったように思う。
そこで、私自身が両親から、また祖父母から受け継いだことが何なのかを探してみた。
 
まず最初に思いついたのは、卵焼きの味だ。
我が家の卵焼きは、だし醤油を加えて作る、どちらかと言うとしょっぱい味付けである。
甘い料理全般が苦手な私にとって、甘い卵焼きは最も苦手なものに分類されるほど、私にとって卵焼きはだし醤油味が当たり前なのだ。
そして我が家の卵焼きにはいろんな「お客さん」が混ざる。それはおじゃこだったり、紅生姜だったり、小口切りにした青ネギだったりする。中高生の頃のお弁当に必ず入っていた卵焼き。今日は何が「お客さん」なのか、いつも密かに楽しみにしていた。
一人暮らしの今、ごく稀に私も卵焼きを作るが、お客さんはいなくても必ずだし醤油を加えることは忘れない。
こんな小さな食の好みも、一つの受け継ぎごとに違いない。
 
また、阪神タイガースファンであること。
これは祖父の代から受け継いだこと。
子供の頃、京都に住む祖父母の家に行くと、阪神の試合が放送される日は必ずテレビがついていた。祖父に遊んで欲しいのにデーゲームに祖父が見入っているときは、よくテレビを勝手に消してリモコンを隠してしまっていた(今自分がそれをされる と、叱ってしまうと思うが)。
しかし小学校高学年になって私もすっかり野球にハマってしまうと、帰省のたびに今最近注目している選手は誰か、今日の試合はここがよかった、監督のこの采配が気に入らない、などと好き勝手祖父と評論するのが楽しくなった。
元高校球児の祖父は試合や選手の見方も私より比べ物にならないほど詳しく、今後のチームの展望を聞くのも楽しかった。
普段は京都と東京で遠く離れていても、東京の家で母と弟と阪神を応援し、京都に帰った時に一緒に甲子園で応援ができると、祖父と楽しい時間を過ごせることが嬉しく、共通の趣味のありがたさを感じていた。
 
もう一つ、自分の話には根拠を持たせること。そして納得行くまで話し合うこと。
これは、父から一番強く影響を受けたことだろう。
私の父は、私の一つひとつの判断に「なぜ」を求める人だった。
中高一貫の高校になぜそのまま進学するのか、高校受験をしないのか。なぜ受験科目に世界史を選ぶのか。受験のための塾に行く必要があるのか。
 
当時の私にとって、「当たり前じゃん」と思うことばかり、父は説明を要求した。
その度に私は、内心面倒だなと感じていたものの、改めて自分がどうしてその選択肢を取りたいと思うのか少しは考え、拙い言葉で説明しようとしてきた。
時には上手く説明できず、なぜなぜ攻撃を受けて心底うんざりすることもあったが、きちんと説明した上での私の判断に対し、父も母も基本的に反対することはなかった。
今から思えばそれはとてもありがたいことで、私は自分の人生の一大事は、両親に相談こそすれ、基本的には全て自分で決めることができた。
 
例えば大学2年生の夏、フランスに短期留学に行った際には、なぜ今・なぜそのプログラム・何を得たいのか・費用はいくら必要なのか等をA4用紙にまとめ、父親に対してプレゼンを行った。
また細かい質問をされたり宿題を出されるなど、とりあえず一筋縄では許可してもらえないのでは(費用を出すのは両親だった)と思っていたが、予想に反し父親は私の説明を聞き終わってすぐに短期留学に参加することを了承してくれた。
出発前にこれだけは準備しておきなさい、と日本の文化や今の世の中の動きを自分の言葉で考えられるようにしておくこと、という宿題は出されたものの、私の説明を聞いてすぐにOKを出してくれたのだ。
あの時私は初めて、きちんと自分の考えを相手に伝わるように話せば、理解してもらえるのだ、と実感した。
 
その考えは、会社で働く中でも新人の頃から支えになっている。
思考癖は一朝一夕ではなかなか身につかないものだ。
親からの受け継ぎごととして、身につける とができてよかったと感謝していることの一つである。
 
ここまでの話は、全て「私」の受け継ぎごと。
世の中には、家族の数だけ受け継ぎごとがあるはずだ。
今の自分を形作っているもの、考え、幼い頃から好きな場所・料理、母や祖母から譲られたジュエリーなどなど……。
改めて考えてみれば、自分を取り巻く沢山の受け継ぎごとに気がつくのではないだろうか。
 
普段はなかなか意識することも、話題に登ることもない受け継ぎごと。
それでも、目の前にいる相手のことを、より深く知る一つのきっかけになるのは間違いない。
ぜひ、あなた自身も自分の受け継ぎごとが何かを考えてみて、大切な誰かとシェアしてみて欲しい。
 
より深く確かなお互いの理解へ結びつくだろうから。
 
 
 
 
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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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