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嘘と言い訳の鎧を脱ぎ捨てた、その先にあったもの


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嘘と言い訳の鎧を脱ぎ捨てた、その先にあったもの
 
記事:垣尾成利(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
嘘の代償は大きかった。
お客様が、返却書類を受け取りに来てくださいという内容の案内が届いたと、わざわざ休みを利用して来店してくださったのだが、単に私のミスでその書類を取り寄せていなかったことがわかった。
正直にお詫びしてすぐに取り寄せれば良かったのだが、慌てた私が言ったことは「まだ書類は届いていません」という嘘だった。
お客様は、「受取に来てくれと連絡をしてきたのに届いていないとは何事だ!! そんな嘘で言い訳をするのか!!」と激怒し、背中を向けて出て行ってしまった。
その後、私に変わって上司が何度も謝罪に出向いたが、最後まで会って頂く事さえできなかった。
私は、大切なお客様の信頼を裏切ってしまったのだ。
 
「嘘も方便」という言葉があるが、ものごとを上手く進めるための小さな嘘や言い訳をしたことのある人は多いと思う。
「あ、忘れてた」、「気付かなかったわ」、「気にはなっていたけれど、忙しくて手が回らなかったんだ」、「聞いてなかったと思うけどなぁ」、「それ、いつ言ってた話?」といったような、本当だか嘘だかわからないような曖昧な返事でも、些細なことなら問題なく済ますことができる時もある。
しかしこの時はそうはいかなかった。
私がしたことは、自分を守るために嘘と言い訳の鎧を身にまとい、適当な言い訳でごまかすことだった。
なぜそんなことをしたのか? 理由は怖かったからだ。
ミスを認めて正直に言うことが怖かった、お客様に怒られるのが怖かったのだ。
恐怖から身を守るために、嘘をつき、言い訳することを選んでしまった。
この嘘のせいで、お客様を傷つけ、信頼を失わせることになり、私は上司から厳しい叱責を受けた。
誰も得をしない、方便にも値しない嘘と言い訳だ。
愚かなことをしたと深く反省した。
 
この時上司に言われたのは、「素直にごめんなさいが言える人になれ」という言葉だった。
 
この言葉は以来ずっと大切にしていて、ミスをしたり失敗をしてしまったときに必ず思いだすようにしている。
一生懸命に仕事をしていても、慎重に対応していても、ミスが起きてしまうことはある。そんなとき、素直にごめんなさいが言えないと、嘘をついて誰かのせいにして言い逃れしようとしたり、適当な言い訳でごまかすことを考えてしまいそうになる。
これくらいの嘘なら良いじゃないか、適当に言い訳してごまかしてしまえば良いじゃないか、私の中の弱さがそう呼び掛けてくる。
そんなとき、この言葉を思い出すのだ。
間違いを素直に認めること、失敗を失敗だと堂々と言えたら、嘘や言い訳の鎧は要らないのだ。
 
つい最近、こんなことがあった。
3年近く毎日更新しているブログをうっかり書き忘れ、毎日更新が途絶えてしまったのだ。
翌朝、急いで記事を書き、前日の日付で掲載しようかと考えた。
でも、これは嘘だ。小さな嘘かもしれないが、今後ずっとこの嘘を隠しながら、毎日更新を続けていると言い続けることは読者を裏切ることになると思い、やめた。
毎日更新を続けていると嘘をつくことに何の意味もないと思えたから、毎日更新が途絶えてしまったことを正直に書いたら、気持ちは晴れやかだった。
 
嘘はいつかバレる。呆気ないくらい簡単にバレる。
それがわかっているから、嘘がバレないようにあれこれと言い訳を準備したり、バレても否定するための言葉を用意したりと、無駄なことに労力を使うようになる。つじつまが合うように幾重にも嘘で塗り固めなくてはならなくなるのだ。
そんなことをするよりも、認めて、素直に謝った方が楽だ。
嘘や言い訳の鎧を身につけて必死に守ろうとする姿は、不安定な地盤の上に建つ手抜き工事で建てた欠陥住宅と同じだ。
どんなに立派に見えても、それは見た目だけ、中身はいい加減な偽物だ。そんな偽物には「安心・安全」という信頼はない。
人間関係も同じだ。自分のことだけを考え、平気で嘘をついたり言い訳ばかりする人に、「安心・安全」を感じることなどない。そのような人物は信頼に値しないのだ。
 
振り返ってみると、嘘と言い訳の鎧で身を守っていた頃の私は、信頼に値する人ではなかったのだろうと自分でもそう思う。
「素直にごめんなさいが言える人になれ」
幼い子に教えるように、諭すように言われたこの言葉のおかげで、間違いを認め、素直にごめんなさいが言えるようになったら、自分が正しいと思うことを強く信じられるようになった。
そして、いつも自然体でいられるようになり、人と向き合うことが怖くなくなっただけでなく、伝えたい気持ちが等身大の自分の言葉で伝えられるようになった。
自分の言葉で伝えられるようになったら、相手の言葉も真っ直ぐに受け止められるようになった。
いかに、嘘と言い訳が自分を弱くしていたかがよくわかった。
正直に言えるようになったことで、躓くことも増えたのだが、それでも日々が穏やかになったと実感できるようになり、生きることが楽になったと感じられるようになったのだ。
 
嘘と言い訳の鎧を脱ぎ捨てた、その先にあったもの。
それは、弱さを認め、受け入れることができる、自分を信じる強さだった。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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