メディアグランプリ

単語よりも文法よりも


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:能勢 拓人(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
特技はフランス語。なんて言えたらかっこいいけど、語学に自信はない。
 
フランス語を始めたきっかけはもの凄く暇だったから。
大学を卒業した春。大阪での1ヶ月研修を終え、岡山に配属を言い渡された。訪れたこともない土地に初めは驚いたが、住んでみると何の不自由もなかった。
それから1年半ほど経ったころには、暇を持て余していた。暇つぶしに何かを始めようと選んだのが、フランス語。
 
何でフランス語? とよく聞かれるが、何かを始めるきっかけなんてかき氷みたいなもの。旅番組でフランスがきれいだったとか、友人との会話の中にフランスが出てきただとか、そんな小さな理由が積み重なり、最後には「嫌になったらやめればいっか」というシロップをかけて出来上がり。
 
インターネットで「岡山」「フランス語」と検索すると、すぐに個人のフランス語教室が見つかった。先生はフランスのニース出身でニコニコした狼みたいな元料理人。食べるのが好きなぼくは、数回のレッスンで仲良くなった。
 
ある日、授業中ずっとフランス料理やお菓子の話で盛り上がった。クロックムシューやクロックマダム、エスカルゴなどポピュラーなものから、カスレやファルシ、ソッカなどの地方料理、チーズにヌテラにマカロン、クロカンブッシュと、話題は尽きない。日本で出てくる高級なのもフランス料理に違いないが、庶民の味ではない。安くておいしい物もたくさんあると教えてくれた。
時間になったので帰ろうとすると先生が怪訝な顔をしている。「もう終わりの時間だよ」と伝えると、時計を二度見して、「ほんと? もう終わり?」と、焦り始めた。今から授業する気だったのかと、苦笑した。
 
教室には語学を習いに行っていたけれど、先生はもっと大切なことを教えてくれた。
まず一つ、語学学習はカモフラージュ。
語学学習と聞くと発音、単語、文法を学び、間違えないように話すことを強いられている気になる。覚えること、やるべきことが多すぎて、時として本来の目的である対話という本質を隠してしまう。
フランス人の先生と接していると、フランス語を学ぶことより、フランス人と話すことが大切ということに気が付く。(語学を勉強しろ! と、先生からのツッコミが聞こえるが、それはさておき)コミュニケートできれば単語量が少なくても、文法が間違っていても構わない。優先すべきはまずは声に出して対話すること。伝わらなければ伝わる方法を自然と考える。言葉は人が生み出したコミュニケーションツールの一つでしかない。
各国に生活している人がいるからこそ、言葉が存在する。先生とぼくの間で新しい言葉が生まれ、それでコミュニケーションが取れれば、それがフランス語なのか日本語なのかの分類に、意味はない。
コミュニケーションという言葉は生活にあふれているが、頭で理解するのと肌で感じるのでは全く違った。
 
そしてもう一つ、人は人。
それまではフランス人に限らず外国人と関わる機会が少なく、無意識下で遠い存在に感じていた。むしろ違う動物かのように感じていたと思う。
文化は違うし、話す言葉も違う。でも、人を思う気持ちや好き嫌いがあること、時間を忘れて夢中になることなど、人であることに変わりはない。
フランス人も同じ人だった。
 
そんな当たり前のことに気が付き、自分の視野がいかに狭いかを思い知らされた。もっとフランス人に触れたい、視野を広げたい、海外へ行きたいと思うようになった。語学が出来なくたっていい。
先生にも背中を押され、2カ月間のフランスプチ留学を決めた。
 
留学先は、パリから電車で1時間ほどのところにあるルーアン。大聖堂や大時計台(札幌よりは感動する)など、観光地と言える場所もあるが、半日あれば町を一通り見て回れる。ルーアンでぼくが語れることといえば、人しかない。というほど、小さな町。最高だ。
 
その町の中にある語学学校に通った。生徒はスペイン、ドイツなどのヨーロッパだけでなく、ブラジル、中国など、様々な国籍の人がいた。
午前の授業はレベル分けされており、ぼくはもちろん初級クラス。
午後はオプション授業のため、人が少ない。すべてのレベルが1つにまとめられた。ついていくだけで必死だったが、フランス人の先生だけでなく、上級クラスの生徒が簡単なフランス語に言い換え、教えてくれる。中には授業が中断すると露骨に嫌な顔をする生徒もいたが、ぼくが正解すると褒めてくれた。
フランス人だけでなく、どの国の人も同じ人だった。
 
フランス語の上達はさておき、フランス人を飛び越え、様々な国の人に出会えた。
みんな同じ人だった。
フランス人に触れ、視野を広げるという目標は国籍を超えて、120パーセント達成!
 
2カ月の留学から帰ってくると、家族や友人に同じ質問をされた。
「フランス語話せるようになった?」
「日常生活ぐらいは話せるの?」
ぼくは得意気にこう答える。
 
「フランス語は全然。でも、フランス人と話せるよ」
 
 
 
 
***
 
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2020-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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