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メディアグランプリ

汚れた、美しさ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鳥井 春菜(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
カシャッ
 
思わずiPhoneのカメラを起動させて、写真を撮る。それは全く「バエ」ない光景で、ましてやSNSには絶対あげれられないもの。私がその時撮ったのは、荒れ果てた自室の写真だった――
 
世の中の「美」というのは、大きく二つに分けられるそうだ。「装飾美」と「機能美」。「装飾美」は文字通りデコレーションされた美しさで、「機能美」はシンプルで無駄のない美しさを指す。しかし、ある日曜日の午後、家でゴロゴロと漫画を読みふけっていた私が出会ったのは、“第三の美”だった。
その日は漫画を十冊ほどレンタルして、ベッドに張り付いていた。今週末は思い切り自分を甘やかすんだと決め込んで、平日のドタバタで散らかった部屋もほっぽり出して、読んでは食べて、また読んでは飲んで、と怠惰に過ごしていた。そうするうちに部屋はしっかり荒れていく。途中のトイレ休憩から帰ってきたときに、やっと視線を紙から上げて部屋を見渡した。
「ん?」
その時、私の中に違和感が生じた。もしや、と思って試しにiPhoneのカメラを起動させて、シャッターをきる……
「やっぱり……! なんかこれ、すごいいい感じじゃない!?」
私の目には、散らかりまくった部屋が、不意に魅力的に見えたのだ。カーテンレールに吊るしたままの洗濯物、床にほっぽりだされた本や紙類、テーブルの上の空き瓶に、無造作に置かれたリュック。もちろんそれは「散らかった部屋」に他ならないのだけど、そこには、なんと言えばいいのか、仮に「生活美」とでも言うものがあると思ったのだ。
 
私は人の家へいくのが好きだ。家は人を写す鏡だ。使っている家具や小物から趣味や好みが見えることはもちろん、“その人らしい暮らし”を宿しているところが面白い。
例えば、ある人の家では、洗面所横のスペースでドライヤー置きになっている、空きダンボールを見たことがある。家主はダンボールを有効活用していることに満足しており、そのサイズのフィット感をかなり気に入っていた。私はその時、自分の生活を快適にする工夫を魅力的だと思った。
たとえ同じ家に住んだとしても、その空間は住む人によって全く違うものになるのだと思う。単純に使っているものの見た目だけではなく、持ち物や置き場所やどういう風にモノを管理するかによって、部屋は形を変える。どんな動線を考えてゴミ箱を配置するのか、コンセントは面倒だからつけたままにするのか・見た目が悪いから逐一片付けるのか、食器棚は必要なのか・一人暮らしだから流しの下にしまっておくのか――そうした些末なことが積み重なって、部屋はその人にしっくりくるように変形する。つまりは、人は自分の考え方と暮らし方によって、その空間をデザインしている。
 
そういうわけで、部屋には住んでいる人の“らしさ”が表れると思うのだが、リラックスしきって散らかった部屋、などというものは、本当にまるっと自分自身が表れているのだ。iPhoneで撮影した散らかした部屋の写真のどこを切り取っても、私が流れ出てくる。洋服がはみ出したタンスはある朝慌てて家を出た私だし、床に散らばったもの達は「ああ、もういいや」といういい加減な私だし、テーブルの上の空き瓶とスイーツのカラは「今日は絶対に動きたくない」という怠惰な私だ。私自身の気持ちや性格が汲み取れるし、日常のワンシーンが脳裏に浮かぶ。そんな部屋は雑然としているけれど、ある意味、魅力的だと思った。面白いと思った。
そこにあるのは無造作な生活の動作の中で出来上がった、自然なモノの重なり合いであり、それは人が意識的に並べるよりもよっぽど面白い造形をしているし、しかも生活のストーリーが詰まっているのだ。芸術的であり、文学的でもある。雑然とした部屋の中には、自然な色や形の重なりと、そこに宿った日常劇があった。
 
結局、散らかった部屋を面白いと思うのは、他人の家の工夫を見て面白いと思うのと同じことではないだろうか。そこにはどちらも、意識的であれ無意識であれ、生活者の思想や感情がこもっている。そこが魅力なのだと思う。暮らしの工夫のほうは「機能美」に当たるのかもしれないが、散らかった部屋にあるのは「生活美」とでも呼ぶしかないだろう。
一般的に部屋が散らかっているのは「悪いこと」かもしれないが、芸術にも文学にも、「いい・悪い」は関係ない。そこで大切のは人を惹きつけてやまない魅力であり、なんともアーティスティックな重なり合いを生み出し、ストーリーまで内包している「散らかった部屋」はやっぱり、そこに人の心をつかむ美を持っていると思うのだ。「生活美」には見た目の華やかさはなく、機能的なスマートさもないけれど、目も心も楽しませる魅力がある。もうこれは、汚れているからこその美。「汚れ」にこそ魅力がつまっている美である。
 
だからとって、適度な片付けは暮らしのために大切なのだと思うけど……
しかし、「掃除前の部屋コレクション」なんていうのも面白そうだと思い、私は別アングルで三枚ほどさらに写真をとった。日曜日は時々、そんなどうでもいい発見をくれる。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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