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秋晴れの朝、この街の魅力を考えてみる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:樋野敬太(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
10月から東京を離れ、九州の田舎町での生活をスタートさせた。
今日はこんなきれいな秋晴れ。夜に飲み会があることもあり、いつもの自転車ではなく、会社で歩いていくことにした。
 
先月までの朝は毎日満員電車。コロナの中でも毎日会社に出勤していた。9時の始業に合わせて6時過ぎに起き、7時頃に家を出発。1時間電車の中でもまれて、8時半ごろに会社に到着。着いた頃には一仕事終えてる感じ。
 
先月までの私の気持ちを想像できる方も多いのではないだろうか。
 
それに比べて、今は毎日15分も自転車をこげば会社に着く。お気に入りのニューノーマルの生活だ。
 
九州南部の朝はこの時期でもいまだに肌寒い程度。厚手のパーカーを羽織れば十分温かい。
 
家を出て、まっすぐな農道を10分ほど歩けば体は温まっている。通学路に出ると朝8時前にもかかわらず、小学生たちが広い歩道を歩いている。
 
「おはようございます!」
 
あいさつ率の高さには毎日驚かされる。本当にみんなあいさつしてくれる。私のような見知らぬ大人にも、子供たちが自然に挨拶をしてくれるのだ。
 
笑顔であいさつされると、こっちも自然とあいさつを返してしまう。低学年だけではない。高学年や中学生まで。車社会のこの町では道端を歩いている大人が少ないこともあり、集中攻撃にあうことができる。おちおち信号無視なんてできたもんじゃない。
 
今日は小学校1年生だろうか。集団でも一番小さい子どもたち2人が、朝から花を摘んで遊んでいた。キラキラした目で花を見て、クンクンにおいをかいでいる。
 
「おはようございます!」
 
どんなにおいがするんだろうな、と思って見ていると、ふと私と目が合った瞬間に挨拶してくれた。挨拶だけで花の匂いが香ってくるような気分になる。秋晴れの朝に、めちゃくちゃフレッシュな「気」をもらった。
 
通学路を抜けると川の土手に出る。
 
底まで見えるほどの清流で、少し上流にはアユを捕まえるためのヤナという仕掛けが作られ、毎年アユ祭りが開催される。そんな場所でも、今年はコロナの影響でアユが余ってしまって苦労しているらしい。
 
土手を歩くと、そこにはゆるやかな時間が流れている。車通りも少なく、おじいちゃん・おばあちゃんが朝の散歩をしている。横には川がゆっくりと流れ、眼前には海が広がり、背中の遥か彼方には九州山地の山々がそびえる。
 
どこまでも見える景色は、9月まで電車から見ていたビルの窓とは違って、表情が毎日違う。どうやら今日のこの街はご機嫌みたいだ。
 
清流の上にかかる橋を渡り、しばらく歩くと会社につく。しめて40分弱の道のりである。
 
秋晴れの朝には素敵な体験ができて、さらにここには書ききれないほど素晴らしいポイントがあるのに、地元に人たちはこういうのだ。
 
「ここのあたりは何もないですよ」
「東京から来られたら、何にもなくて驚かれるんじゃないですか」
 
いやいや、逆ですよ! 逆、逆! いろいろあり過ぎて驚いています。
自然豊かだし、ご飯おいしいし、気のいい人たちがいて、空が広くて絶景もあって……
 
でも東京の人たちにこの街を紹介するとなると、もしかすると「何もないよ」って言ってしまうかもしれない。なんとなくこの街の良いところを紹介しようとすると、名詞の単位が大きくなる。写真にもしづらい。うまく伝える語彙がないから、総合すると「何もないよ」に言ってしまうかもしれない。
 
じゃあ東京には何があるの? テーマパーク、デパート、有名シェフの店、おしゃれなカフェ……
 
どれも名詞の単位が小さくて、特定しやすい。写真にもなりやすくて、分かりやすい。確かに雑誌で見ると、すごいってなりそうだけど、1回行ったらあきちゃうんだよね。
 
この街に魅力、地方の街の魅力って、一回観光に来たぐらいじゃ伝わらない。生活してようやく分かり始めるんだと思う。でも、難しいのは生活に慣れてしまうと感じなくなってしまうこと。これだから地方創成は難しいんだろう。
 
都会暮らしや、人の生きるスピードが速すぎるな、と思う人には、少しゆっくりした環境に身を投じてみるのもいいんじゃないかと思う。スピード感は人それぞれだと思うけど、東京ほど生きるスピードが速い場所は少ない。少し都会から離れた場所が肌になじむ人もいるだろう。コロナ後のニューノーマルの時代、リモートワークが広まっていく中、試せる人の増えているはずだ。そんな人のためにも、今、私が感じている気持ちを少しでも伝えていけたらいいな、と思う。
 
その日の夜、飲み会では地元産のアユの塩焼きが出てきた。尻尾を取って身をほぐして、頭を引き抜くと、骨と内臓をきれいに身から引き抜くことができた。
 
「いただきます!」
 
この街のゆったりとした清流の恵みにあらためて感謝し、きれいに身だけになったアユを口いっぱいにほおばった。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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