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笑いのスパルタ教育


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記事:廣田夏(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「何か面白い話して!」
関西生まれ関西育ちの人間なら何度も言われてきた一言である。生粋の関西人である僕もこれまで何度も言われてきたし、僕も言ってきた。
このセリフは関西人にとってボクシングのジャブのようなものだ。ジャブが飛んで来たら何かしら反応しなければならない。
 
普通の反応は「何か面白い話して!」という一言に対して「いや! そんな突然の無茶ぶり、出来へんわ!」とジャブをかわすか「実はこの前こんなことが……」と自分が持っている面白ネタをパンチとして繰り出すかどちらかだ。これまでに一番すごい! と思ったカウンターパンチは
「突然そんな風に話を振られても出来へん。だから逆に面白い話して?」
という一言だ。突然の反撃に相手は言葉が出てこず、見事にノックダウンしていた。
 
なんで関西人は会話の中に笑いを求めるのだろうか? それは関西では幼い頃から会話の中に笑いを求める雰囲気があるからだ。親と子の間で、友人との間で、そして社会人になっても会話の中で笑いが求められる。
つまり幼い頃から常に「笑いのスパルタ教育」が行われているのだ。
では笑いのスパルタ教育とは具体的にどういったモノなのか? 僕がこれまでに遭遇したいくつかの事例を紹介しよう。
 
最初に紹介するのは僕が24歳の時の出来事である。まだ新入社員になったばかりの頃の話だ。僕が新卒で入社した会社は大阪に本社があった。そのため新入社員は日本全国から大阪に集まり1か月の間、新人研修を受けなければならなかった。新人研修の初日、研修後に飲み会があった。
東京から来ていた同期は「俺はお笑いが好きだ! テレビで何時間でもお笑い番組を見ていられるし、お笑いライブもよく観に行く! だから俺は研修の1か月で大阪の笑いをマスターして帰る!」と謎の宣言をした。
僕は心の中で「大阪の笑いをマスターするってなんやねん……」と思いつつも「頑張れよ!」と彼に声をかけた。
 
ところが、その日から一週間後の飲み会で彼と話すと「俺は大阪の笑いをマスターするのは無理だ……」と元気のない言葉が返ってきた。何があったのか詳しく聞いてみると彼は言った。
「休みの日に市バスに乗っていると、4~5歳くらいの子達がお互いにボケたりとツッコんだりして会話していたんだ。あんな小さい子達が既にボケとツッコミをマスターしているなんてびっくりした。とてもじゃないが1か月やそこらで大阪の笑いをマスターできない」
 
なるほど、僕はこの時まで日常の風景過ぎて気が付かなかった。確かに大阪に限らず関西で育った子供たちは幼稚園児にまでには、まるでボクシングのスパーリングのように会話の中でボケたりツッコんだりしている。
幼い声でひたすらボケとツッコミを繰り返す光景は見ていて可愛らしい。だからといって決してボケやツッコミのレベルが低いというわけではない。
休日、関西にある大型ショッピングモールのフードコートなんかに行くと子どもの鋭いツッコミに困っているお父さん、お母さんを見かけることがあるからだ。
 
大人になっても油断できない。先日、大阪で少人数のビジネスセミナーに参加した。
そのセミナーでは入口の前でコロナウイルス対策として、手のアルコール除菌と最近よく見かけるようになったトリガーを引いて測定を行う体温計を使って検温が行われていた。
「体温測りま~す! バンッ!」と言われた瞬間、僕は「ウっ!」と反射的に銃で撃たれた振りをした。
「関西人って皆さん本当に反応してくれるんですね。先に入場している関西人の方も全員似たような反応してくれましたよ!」
と受付の人は満足そうな笑顔を僕に向ける。関西人というだけで関西以外の人からも笑いを求められるようになってしまったのか! と驚きつつも、ふと思い出したのは大学時代の先輩の言葉だった。
学会発表で東京から関西に帰ってきた先輩は
「東京の教授や大学生との会話は平和だった。会話の中で笑いを求められることもないし、オチを求められることもなかった」と感動していた。
社会人になってそれは実感するようになった。仕事で東京への出張することが多くなり、関東の人たちと話す機会が増えたためだ。かつての先輩が教えてくれた通り、話に笑いもオチも求められないため、平和な会話に安心を感じる時がある。
でも、1週間もすると会話に物足りなさを感じてしまう。関西人にとって会話の中に笑いを求めることは毎日歯を磨くことと似ているからだ。しなければ気持ちが悪い。
 
この記事を読んでもどうか関西を怖い所と思わないで欲しい。どの県の人もフレンドリーで親しみやすいと思う。1年も住めば関西人でないあなたでも日々繰り返される笑いのスパルタ教育の中で徐々に関西弁を話すようになり、会話の中で笑いを求めてしまうようになるだろう。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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