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居候スキルは3高より強し


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Yoshimi (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「今から行ってもいい?」
 
忙しいから無理、とは言えない気迫。15年来の友人ですが、こんな電話は滅多にありません。これは何かあったな、「もちろん」 と答えるとすぐ向かうとのこと。こちらはてんやわんやの夕飯の支度中なのだけど。
 
10年ほど前にフランスの有名ビジネススクールでMBAを取得すると、外資大企業を足がかりにキャリアの道をまっしぐら。独身の美しい彼女は、出張で世界中を飛び回り、デートする相手も事欠かない。こんなキャリアウーマンを、一主婦が羨ましく思わないはずがない。大好きで自慢の、そして手が届かぬ世界の友人。
 
彼女はきっかり15分後に到着すると、料理中の私の横に立って一気に話し始めます。年俸契約だったけれど、上司に契約を更新しないと告げられたとのこと。彼女にとっては、職を失うだけではなく、会社が契約していた都心のマンションを3ヶ月後に出なければいけないということを意味します。なんとか気の利いた言葉で元気づけたいけれど、うんうんと頷くことしか出来ない。
 
彼女も薄々察していたのか、半年前から真剣に職探しをしていました。しかしキャリアが上がるほどポジション争奪戦も激しく、条件を下げても、転職先は見つからずじまい。そんな矢先の、上司からの通告でした。3ヶ月はあっという間に過ぎ、新しい仕事は決まらずアパートの退出日も迫ります。彼女はトランクルームを借りて荷物を移動すると、職探しのため古巣フランスにスーツケース一つで飛び、しばらくの間友達の家を転々とする生活を始めました。
 
友人が1週間も泊まるともなれば、迎える方も大変、なはず。しかし話を聞いていると、楽しく過ごしている様子、それがどんなものか想像がつきます。なぜなら、その昔やはり当時も失業中の彼女が我が家に居候していたことがあるから。まだ子供たちも小さく、夕方ともなれば忙しさ全開の時代でした。
 
居候中の彼女は、夕方になると毎日何かしら美味しそうなつまみやデザートを手に帰宅しました。そして子供のお風呂を手伝ったり、ふと気がつくと宿題を見てくれたり。キッチンで少しおしゃべりをする間にも、気がつくとささっと洗い物をしています。「おいしそうなレシピ見つけたから、今日は私がディナー作ってもいい?」 と夕飯作りを担ったかと思えば、「今夜は夫婦でデートしておいでよ」 と自らベビーシッター役を引き受ける。どれもこれもノーと言えないありがたい申し出ばかり。小さな子供を持つ世のママの忙しい夕刻事情を一瞬で見抜き、とてもさりげなくサポートする、なんとも理想的な居候だこと。その人を知りたければ一緒に旅をしろといいますが、一緒に生活することは、良くも悪くも相手との距離がグッと近づきます。
 
彼女はとびきりの居候上手でした。そう、居候として煙たがられないのもスキルの一つ。彼女がしていたことを一言でいえば、良い人間関係を築くこと。そんな彼女は、究極の褒め上手でもあります。どんな人にも長所短所があるけれど、素敵だなと思う部分を瞬間的に見出して、斜に構えずまっすぐ光を当てる。するとどうしたって愛の溢れる言葉が出てくる。まるで昔からの友人のように、スッと相手と瞬間的につながる、そんな才能の持ち主。
 
例えば、毎日の夕飯作りに内心うんざりしていた私に、「お母さんの手作り料理を食べているから子供が元気なんだね、尊敬するな」 と温かい眼差しを向ける。お世辞ではない愛のこもった一言に、心は勝手に開いてしまう。心が開くときは、家のドアも同時に開くのかもしれない。
 
現在もフランスにて就職活動中の彼女ですが、コロナの影響もあり、職もアパート探しも動きが少ない様子。しかしコロナでパリの自宅を留守にしている友人も多く、是非にと留守番役を頼まれたり、いつも以上に居候生活は困っていないとのこと。「一回お世話になった家から次はいつくるの、なんて声かけてもらったりしてね、当分こんな暮らしが続くかも。心細くならない、といえば嘘になるけどね」 そんな本音をぽろっと聞くと、「狭いけど、我が家にもいつでもおいで」 と次の瞬間には言ってしまう。そしてロックダウン中のパリ生活なんて日本食が恋しいだろうなと、普段は覗きもしない虎屋の羊羹に特上煎茶を買うと、いそいそと国際宅急便を送った。
 
ひと昔前、3高という言葉が一世風靡しました。高学歴、高収入、高身長と3つの高が、良しとされた時代。しかし、今直面しているのはMBAを持っていても仕事が決まらない、年功序列も終身雇用も影を潜め高収入の保証もない、背だけ高くてももちろん食べていけない。3高という言葉が消えかかっているこの時代に、何を目指せば良いのでしょうか。
 
毎回仕事や家を失っても、どうにか上向きにしていく彼女にヒントを感じます。「良い人間関係を持つこと」 これが重要なのではないでしょうか。
 
仕事は、自分の力ではどうにもならないこともあります。学歴や収入アップもそう簡単にできることではないし、背も多分伸びない。けれでも良い人間関係を作ることは、自分の意思でコントロールしていくことができる上に、今この瞬間から目の前にいる相手と始めることができる。良い人間関係を作るためには、相手の長所に光を当て、愛の目線から出る言葉を率直に伝える。これは条件にかかわらず、誰でも取り組めること。
 
学歴や仕事を見直すことも大事だけど、それと同じくらい居候上手を目指すこと、つまり良い人間関係を作っていくこと。これが生きていく上で、欠かせない能力になっていくのかもしれません。良い人間関係は一朝一夕では作れないけれど、長い目で見れば何よりの投資かもしれない。ペンは剣よりも強しといいますが、人間関係は3高よりも強し、そんな時代が到来しているのかも。誰もが平等なスタートラインに立つということかもしれません、なんだかワクワクします。
 
 
 
 
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2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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