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メディアグランプリ

30代独身男の『実家暮らしリハビリ』奮闘記


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:能勢 拓人(ライティング・ゼミ特講)
 
 
頭を抱えたくなるような衝撃を受けた。
結婚できない男とはそういうものなのか。何故この雑誌を手に取ってしまったのだろう……。
まさか、仕組まれたか? 長年通っている美容室で独身であることがばれている。まさか、それを見越してこんなお節介を? いや、そんなことをするタイプではないか。こちらのことなど気にせず、涼しい顔で俺の髪をザクザク切っている。
 
社会人になってから一人暮らしをスタート。
子供の頃からたまに料理はしていたし、新しい家電が我が家に来るたびに率先して機能を確認するタイプだった。だから、掃除、洗濯、炊事などの家事は苦も無くこなせる。
振り返ると、トータル8年は一人暮らしを経験している。テレビや女友達との会話でも「一人暮らしを経験している男と結婚した方がいい」なんて話が当たり前に出てくるから、「こんな旦那を迎えたら嫁は幸せだぞー」「世の女性は見る目がないねぇ」と、鼻歌交じりに一人ぐらしを満喫していた。
 
そんな僕に待望の海外赴任が決まった。
一人暮らしの家を引き払い、実家に戻ったあと、2週間ほどで海外へ出発する予定だった。
それなのに、コロナが僕の渡航を拒んだ。渡航2日前になって渡航先の国が閉鎖して、飛行機も全てキャンセルになってしまったのだ。
そこから望まざる実家暮らしが始まってしまった。日本に居続けることが分かっていれば無理にでも一人暮らしを再開したのだけれど、いつ海外赴任になるか分からない。さすがに実家に留まることになった。
 
これは親(特に母親)の監視下に入ることを意味する。
晩御飯の要・不要の確認。
買い物の度に「何を買ったの? いくらしたの?」の確認。
外出時には「どこに行くの?」、帰宅時に「どこに行ってたの?」の確認。
髪型も、服装も、持ち物も全てチェックが入る。お気に入りのボストンバッグで旅行に出発する直前「そんな重いカバンで旅行? キャリーケースで行けばいいのに」の一言。
 
親も悪気があるわけではなく、久しぶりに帰ってきた息子とコミュニケーションを取りたいのは分かる。ただ、これが毎日続くとさすがにこちらも堪える。
寝泊まりする家があるだけ有難い。そう思おうとはしている。分かってはいるのだが!!!
 
どうしても友人や同僚との会話でも愚痴が多くなってしまった。我が家だけかと思っていると、「分かるわー。なかなか言えないけど、親って何かとタイミング悪いよね。そこでそれ言う!? みたいなこと平気で言うよね」と、ほぼ全員がうなずいてくれる。
我が家だけの問題ではなかったようだ。結婚していようがしていまいが、子供がいようがいまいが、高確率でどの家庭にも親との摩擦は生じているようだ。
「親なんてそんなもんか」と思ってもみるが、どれだけ友人が理解してくれようとも、親との摩擦が解消されるわけではなかった。
 
そしてついに、雑誌の記事で答えを見つけてしまった。その記事は受け入れがたかった。いや、本当は薄々気付いていたのかもしれない。でも、認めたくない。
 
「結婚する時は一人暮らしを経験した事のある男性を選んだ方が良いとよく言う。間違ってはいない。けれど、一人暮らしが長い男性は要注意。こだわりが強く、他人と一緒に住む能力が欠落している可能性が高い」
鈍器で殴られたような気分だ。完全に自分のことではないか……!!!
美容室で散髪中に頭を抱えたくなった。まだ絶賛散髪中だから、頭を抱える訳にはいかなかったけれど、今にも泣きそうだ。
 
トータル8年もの間一人暮らしを経験している。間違いなく『一人暮らしが長い男』に分類されている。要注意人物は母親ではなく俺だったのか。
確かに、『こだわり』の面で思い当たる節は多々ある。コーヒーミルを買ってコーヒー豆をガリガリ挽いちゃう。ドリップする時に注ぎやすいポットを買った。適温でドリップできるように、温度計で測っちゃう。
土鍋でご飯なんかも炊いちゃう。
炊飯器もT-falもいらなくなって処分した。
気の合う職場の先輩(二児の母)と盛り上がってお味噌や洗剤、入浴剤なんかもこだわり始めてしまっていた。
 
「こんなに親って気が利かなかったっけ?」と自分のことを棚に上げて親への不満を沸々と湧かせていた。
けれど、リハビリが必要なのは俺かもしれない……。
 
それからは、毎日の親の監視も自分へのリハビリと思いこむようにした。友人や同僚から「まだ実家? 大変だね」と言われる度に「現在リハビリ中」と答えるようにした。「がんばれ」と苦笑いで答えてくれる。
 
意識を変えると自分の嫌なところも見えてくる。
いつしか親との会話を拒んでしまっていて、その為、親は質問を重ねていたようだ。こちらがして欲しくないこと、こちらから情報提供しないといけないことが分かってきた。
実家暮らしを始めて、10ヶ月程経つが、それなりに心地よい距離が取れるようになってきた。
たまに逃げ出したくはなるけれど、リハビリは継続して行われている。渡航が決まるまでにはリハビリも終わりを迎えてくれるといいのだけれど。
独身、一人暮らし歴が長い男、まだまだリハビリ奮闘中である。
 
 
 
 
***
 
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2021-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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