「睡眠は狩りに行くもの」だと囚われのお姫様が教えてくれた ~「魔王城でおやすみ」を読んで~
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記事:村人F(リーディング倶楽部)
「ああ、癒やされるなぁ」
この作品を読みながらそんなことを言って、僕は酒を飲んでいた。
今年の冬で一番の癒やしかもしれない。
出ているキャラクターみんなかわいいし、ほんわかしている。
この作品に出会えただけでも今年はいい年だったって言える。
「魔王城でおやすみ」という作品を読んで僕はそんなことを思っていた。
「魔王城でおやすみ(作:熊之股鍵次)」は、魔王城に囚われたお姫様がお城の中であれやこれや奮闘するドタバタコメディだ。
お姫様のやりたいことはただ1つ。
牢屋のかったいシーツと枕をなんとかして、快適な睡眠を手に入れたい!
こんなノリで囚われの身でありながら、魔王城を縦横無尽に駆け回り、理想の寝具を求めてドッタバッタするのが本作だ。
この作品のいいところは、出てくるキャラクターがかわいいこと。
デビあくまという、空飛ぶテディベア型のモンスターがいるのだが、その子がとにかくかわいい。そしていっぱい出てくる。めっちゃモフモフしたい。
そして、魔王含む魔族のみんながやさしい。
人間界からさらってきたくせに、1人魔王城に連れ去られてかわいそうだとか、寂しくないように俺たちで励ましてあげようとか言っちゃう。
そういうユルユルな作風が本作の特徴だ。
この作品で癒やされていた僕だが、同時に反省しなきゃいけないことがあるなとも思っていた。
僕の睡眠に対する情熱が薄すぎる。
囚われのお姫様の奮闘記を見てそんなことを反省していた。
だってこのお姫様、睡眠に関しての情熱がガチだから。
まず、普通に牢屋を脱獄しているのがすごい。
デビあくまに、ナデナデしてあげるから鍵ちょうだいって言って持ってこさせるし。
寝具を手に入れるためいろんな魔物をぶっ倒している。
なんなら、死んでもRPGのように生き返る世界観を利用して、棺桶内で眠るためわざとマグマにダイブしたりしている。
こう、睡眠に関する欲求が凄まじいのだ。
しかも実行力もすごい。
そんなお姫様を見ていると、自分が普段いかに適当に眠っていたのかと反省したくなる。
毎日深夜0時まで動画サイトを酒飲みながらチョロチョロ見たり、ベッドに入って電気を消した後もタブレットで動画をもう一度見始めたりする。
寝る前の強い光が安眠を妨げるなんて知らんみたいな感じで、雑な睡眠をずっとしていたように思う。
それでいて次の日の仕事では眠い眠いほざいてウトウトしたりしている。
あのお姫様に比べたら僕の睡眠意識のなんとだらしないことか。
しきりにそんな反省をしていたのである。
でも、僕以外にもそういう反省をしている人は結構いるんじゃないかと思う。
日本は世界的に見てもトップクラスに平均睡眠時間が短い国だし、徹夜自慢も未だにする始末である。
だから実は、日本全国このお姫様に睡眠とは何たるかを教えて貰う必要があるんじゃないか。
そういう問題意識をこの作品から感じ取った。
となると、僕たちがお姫様から学ぶべき睡眠のイロハとは何か。
それは、「睡眠は狩りに行くもの」だということだと思う。
あの作品のお姫様は、睡眠に関することならば何でも積極的に取り組んでいる。
宝物庫に体力気力もろもろを全快させる秘薬があると聞けば、眠る前の睡眠補給に良さそうだとすぐに飲みに行くし、
ベッドの土台に丁度いい木材になるモンスターがいると聞けば、迷いの森だって迷うことなく突っ切ってしまう。
とにかく睡眠に関するあらゆることにアンテナを張り、そして全力で狩りに行っている。
こういう姿勢が現代を生きる僕たちに足りていないことなんじゃないかと思う。
だから僕たちもお姫様のように、よい眠りの環境を手に入れるための努力をしなければいけない。
そんな僕が取り組んだことはベッド環境の充実化だ。
まず枕をオーダーメイドにした。首のフィット感とか色々スタッフさんに見てもらって理想のフィット感がする一品を仕上げた。お値段約3万円。
次にマットレスを買い替えた。
スポーツ選手御用達のいい感じに体圧を分散してくれる代物だ。こちらも大体3万円。
最後は冬のお友達、お布団だ。こちらは新宿の高級百貨店から羽毛布団を仕入れてきた。ボーナスが出た直後に買ったからものすごく奮発した。約8万円。
そんな感じで金にモノを言わせて理想の睡眠環境を作り上げたのだ。
早速寝てみる。
別世界だった。
枕の沈み込みがちょうどよく、首にストレスが全然かからない。
マットレスはいい感じでフィットしてくれる。
何より羽毛布団がめっちゃ軽い。しかもあったかい。毛布が全然いらない。
いいものを揃えるとこんなに睡眠が快適になるんだとびっくりした。
やっぱり睡眠環境は自分から狩りに行くものだったんだ。
この体験を通じて改めて実感していた。
こう考えると現代は実は睡眠環境を作ろうと思えばいくらでも簡単にアップデート出来るものだなと思う。
魔王城に行って強い魔物から素材を集める必要もないし、命をかける必要がない。
ゲームとか我慢してお金をちょっとかけてあげればすぐに手に入る。
なんといい時代だろう。
現代人はもっとこのお姫様を見習って睡眠に本気になるべきだと思う。
睡眠不足スイミン不足いっても、安い布団のままじゃずっと変わらない。
現状を変えるためには、一歩踏み出すことが必要なのだ。
この作品「魔王城でおやすみ」はアニメ化されているのだが、そのOPの曲名が「快眠! 安眠! スヤリスト生活」と言う。
「スヤリスト」っていい響きだと思う。
スヤスヤと眠ることを求めて戦う冒険者。
そんな感じのする言葉だ。
僕もみんなも、このお姫様のようにスヤリストになろうではないか!
現代はお金をかける以外にもいろんな解決策がある。
ストレス社会で眠れない今こそ、貪欲に戦う必要があるのだ。
僕も理想の眠りを求めて、全力でおやすみを言えるよう精進していきたい。
本記事で紹介した作品
・魔王城でおやすみ
作者:熊之股鍵次
出版社:小学館
***
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