その本は心の処方箋
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:藤井明子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「こちらのお店ははじめてですか?」
その本との出逢いはこうだ。
数年前にテレビで見つけた天狼院書店。当時長崎に住んでいた私は、池袋にあるというその書店に行くことができないでいた。東京に転居して、1年くらいはその書店のことを忘れていた。コロナの流行にともない、Facebookを開く機会が増え、そこに天狼院書店の文字が現れた。
なんだが見覚えのある名前、そうだ、数年前に見て気になっていたあの本屋さんだ。
ホームページを開くと、第1号店の池袋店だけでなく渋谷、博多、名古屋などにも店舗が増えているようだった。
コロナ流行中の今の楽しみは、もっぱら一人で本屋さんに行くことになっていた。
さっそく、池袋店に行くことにした。
第1号店はジュンク堂の横の道を、奥に入った先の方にあった。
私の調べるのが甘かったせいか、平日10時半に行ってしまい、そとからその店舗を眺めて帰ることになった。
そうだ、池袋にはもう一店舗あると書いてあったと思い出し、Esola池袋店STYLE for Bizに行くことにした。その店舗では、天狼院書店の中でビジネス書だけをあつかっているらしい。
医療職の私ではあるが、東京で仕事するようになり、管理職に就いたことで、ビジネス書を読む機会がとても増えていた。開業して1年がたち、患者さんは増えた矢先にコロナ流行により激減した。スタッフ間の調整がうまくいかず、スタッフの多くが離職し、悩む日が増えた。私自身の問題でスタッフが辞めたのではないかと、自分を責める日もあった。
チームマネジメントに関する本を読んで解決策を探す日々を送っていた。また、自分自身の心の健康を保つために、セルフカウンセリングができるようにと心理学、脳科学の本を読むことが増えていた。
だから、ビジネス書だけをあつかうその店舗も気になったのだ。
始めて訪れるあこがれの天狼院書店だった。
幸い人はだれもおらず、本をゆっくりながめることができた。
「初めてですか?」
書店で店員さんに声をかけてもらったことなどない私は、とてもびっくりしてしまった。
患者さん、職場スタッフ、家族以外と話す機会がめっきり減ってしまったコロナ禍だったから、なおのこと新鮮だった。
普段はどんな本を読んでいるのかを聞かれたが、適切な言葉が見つからず、答えもうやむやになってしまった。
すると、目の前にある本について説明してくれた。
「この本は、ドン・キホーテの店内に流れているあの歌を歌っている人が書いている本です。以前ドン・キホーテで働いていた方で、出版の際には私もご本人とお会いいたしました。エネルギッシュで、とても素敵な方で……」
本屋さんで話しかけられる新鮮さにびっくりしたため、詳細は覚えていないのだが、おすすめしてもらった。
その本は
「楽しくなければ成果はでない」(田中マイミ著)であった。
本屋さんに行けば必ずビジネス書コーナーを眺めていた私だったが、目にしたことのない本だった。ひょっとしたら目の前にあっても目にとめていなかっただけなのかもしれない。
なぜなら、「楽しくなければ成果はでない」という題名に、え、それって今まで読んだ他の本にも似たようなこと書いてあるよ、って思ってしまったから。
でも、私のことをよく知らない初対面の人から勧められたその本が気になった。初対面の人から本を勧められる機会などめったになかった。ひょっとしたらこの本は、この店員さんを介さなければ私が開かなかったかもしれないと思うと、不思議な縁を感じたのだった。
「楽しければ成果はでない」ともう一冊(これも自分では絶対に手を出さなかった本)を買い求めて、早速買って家に帰った。
積読期間1週間くらいを経て、年末年始に読み始めた。
読み始めると、実際会ったことはないのに、講演会を直接聞いているような、実際にお話しをしているような、エネルギッシュな人柄に直接ふれている感覚になった。
エネルギーにあふれている本だった。
スタッフの離職の嵐を迎え、すっかり自信をなくしてしまっていた私が、手探りながら本を読み、もがきながら進もうとしている今は間違いではないよ、と大いに励まされた。
私に必要な言葉の数々にあふれていて、線をひき、読み進んでいた。
ネガティブな出来事はポジティブな気づきを与えてくれるもの(本文より抜粋)
スタッフの離職もとてもつらい出来事ではあったが、私自身がこれからどうしたいか、どうありたいかを考える機会になったと気づいた。
年が明けて仕事が始まり、昨年もがき悩んでいた私ではなく、職場の仲間との時間を楽しみ、職場の仲間の良いとこを探している私がいた。患者さんとの時間をありがたいと思い、患者さんを通して成長させていただける環境にワクワクする私がいる。
人生を楽しむことは、宝探し(本文より抜粋)
これからの人生、どんな宝を見つけられるだろうか。
わたしの周りにいる人たち、これから出会う人たちのことを考えられる余裕をもっていたい。そのためには、まずは、自分自身を大切に、自分のご機嫌をとることから始めてみよう。
思いがけない出会いをしたその本は、心の処方箋となる本だった。
***
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