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帰国生とセイヨウタンポポ

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:細田 茜(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あなたにとって、帰国子女ってどんな存在?」
 
突然英語の先生にこんな質問を投げかけられた。
 
いままで17年間帰国生として生きてきたけれど、改めて聞かれると、すぐには答えが思いつかなかった。
 
私は日本で生まれ、生後4ヶ月の時に親の仕事の関係でアメリカに引っ越した。初めはニューヨークの郊外に住み、その後ボストンの町外れに移った。
 
家族とは基本的に日本語を喋ったが、家から一歩外に出た途端、周りは全て英語だったので、小さい時から私にとって英語と日本語は優勢劣勢なく、どちらも第一言語に感じた。
 
アメリカにいた頃の私たちの生活は、周りからしたら不思議なものだったかもしれない。ニューヨークでもボストンでも、アメリカでは一般的な一軒家に住み、ハロウィンやクリスマスは家中を派手に飾り付けて楽しんだ。そして、現地校にはスクールバスで通い、周りの友達と同じくカラフルで甘いお菓子が大好きだった。
 
それでも、お正月や雛祭りなどの行事の時は日本から持ってきた小物で家を飾ったり、趣味で母と茶道教室に通ったりした。また、家に入る時は必ず玄関で靴を脱ぎ、お弁当にはよくおにぎりやお煎餅を詰めてもらっていた。
 
幼い頃の私は、アメリカに住んでいたとしても、自分は日本語が話せるし、日本の行事や伝統などを知っているから、日本に住んでいる同じ年の子と変わらないと思っていた。
 
しかし、7歳の時に日本に帰国し、普通の公立の小学校に通い始めた時、いかに自分が周りの日本人と違うかに気づいた。他の児童が持っていた常識と、アメリカから来た私の常識は、お互いをびっくりさせるほど違うものだった。
 
初め日本の小学校でのルールやきまりなどを知らなかった私は、知らず知らずにたくさんの間違いをした。そして、周りに驚かれるたびにみんなの常識に疑問を持った。
 
先生たちはみんなの名前を知っているのになぜ名札をつけないといけないの? 給食はどうしてデザートを先に食べちゃいけないの? どうして授業中に水筒の水を飲んじゃいけないの?
 
日本に帰国してすぐの小2の頃、私は給食のデザートが美味しかったのでおかわりをした。そしたら、同じ給食班の男子にびっくりされた。
 
「おかわりの時間の前に勝手におかわりしちゃだめなんだよ」
 
近くに座っていた女子にそんなことを言われた。
 
本来ならデザートなど、数が限られているものはじゃんけんをすることになっているそうだ。だから、私の行動は横取りしたように思われてしまったのだ。
 
アメリカにいた頃は、早い者勝ちか譲り合いでランチルームのデザートを食べていたので、クラスの子にこんな風に言われて、私は大恥をかいた。それとともに、私はアメリカと日本ではこんなにも違うのかと不思議な気持ちがした。
 
そんな気持ちを抱えつつ、私は毎回失敗したことを反省し、周りの人をお手本にしているうちに小学校の低学年が過ぎた。高学年になった頃の私は、日本人が小学生の間に身につけるべき社会のマナーや常識を学び、転入生が、私が帰国生だとわからないほど他の児童と溶け込めるようになった。
 
そして、周りの子達も私のことを、アメリカから来た不思議な子と思っていたかもしれないが、小学校を卒業する頃には、違和感ない存在として受け入れていた(と思う)。
 
そんな帰国生としての自分の人生を思い返していたら、私は、ふとこう思った。
 
「帰国生って、セイヨウタンポポみたいだな」と。
 
セイヨウタンポポは、ヨーロッパから渡ってきた外来種である。いつ日本に来たか正確にはわかっていないが、1900年代に北海道から全国に広がったと言われている。
 
各地でセイヨウタンポポの数が増えていくにつれ、セイヨウタンポポが在来種タンポポを駆逐してしまうのではないかと心配され始めた。
 
しかし、1970年代頃に発表された研究者の長年の観測結果より、セイヨウタンポポは在来種タンポポを駆逐しているのではなく、両者は棲み分けをしていることがわかった。セイヨウタンポポは都会の環境に適応していて、在来種タンポポは里山などの自然が豊富なところで生き続けているのだ。
 
今となっては、多くの人が道端に生えているセイヨウタンポポに見慣れ、誰も両者の違いがわからないほどになっている。
 
むしろ、セイヨウタンポポこそ日本のタンポポだと思っている人が多いかもしれない。
 
このように、帰国生もセイヨウタンポポも、初めは異質なものとして疑問を持たれるような存在から始まるかもしれないが、のちには新しい環境に適応し、溶け込めて、周りからは判別がつきにくい特徴があると言える。
 
私は大人になっても、新しい地へ踏み出し続け、自分のタンポポを咲かせていきたいと思う。
 
 
 
 
***

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2021-02-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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